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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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完全復活と相談

「はァーっはっはっはァ! 私! 完・全・復・活!」

「うるさい……」

「うびゃあ!?」


 翌朝。

 夜、とても精神が不安定だったはずのユリは、早朝から高笑いをかましていた。

 起きたばかりのヴェルディーゼは不機嫌そうに身体を起こすと、テントの中で大声を上げているユリを引っ張って床に倒す。

 一応、悠莉と龍也はもう既に起きていて、ヴェルディーゼ以外には許可を得てうるさくはしたのだが、ヴェルディーゼはお気に召さなかったらしい。

 許可を得に行くこともなく唐突に高笑いをしたので当然なのだが。


「わぁーんっ、私のこの高揚した気持ちを口に出して発散して何が悪いんですかぁーっ」

「うるさい」

「そりゃそうですけども! 背中痛いんですけど! ゴンッて言ったんですけどー! 全然私が悪いですけどあんな強引な倒し方する必要ありました!? うるさくしたのはごめんなさい!! 堪えられませんでした!!」

「……んー。……ふふっ」

「あれ? 何笑って……待ってください待って、ゆうちゃんとリューくんの前! 顔が近いです離れてください! 人前は無理ほんとに無理ですみぎゃーッ!! ……ぁ?」


 ヴェルディーゼが覆い被さって顔を近付けてくるので、ユリがジタバタと暴れながら叫んだ。

 しかし予想とは違った感触が唇に当たり、ユリは目を丸くしてヴェルディーゼを見る。

 悪戯っぽく微笑んで、ヴェルディーゼがユリの唇に指を当てていた。

 しぃ、と吐息のような声がその口から呟かれて、ユリがぽんっと顔を真っ赤に染め上げる。


「……なっ、……う、あ」

「本当にからかい甲斐があるよね。思った通りの反応して……」

「……顔がいいぃ……」

「はいはい。ほら、おいで」


 おいで、とヴェルディーゼが優しい声で言うと、ユリがぱあっと表情を輝かせて飛び込んだ。

 するとヴェルディーゼはそっとユリの頭を固定すると、手櫛でユリの髪を整える。

 ふにゃん、とユリの表情が幸せそうに綻んで、ゆるゆるとその身体から力が抜けていった。


「……ふへ……ふへへぇ……あるじさま〜……」

「二度寝しないでね」

「うーん……」

「寝たら外に放り投げる」

「酷いですよぉ。んもぅ、主様ったら〜。起きます、起きまーす。……撫でられると起きれませ〜ん……」

「……ふぅ。満足した……先に起きるから、ユリは少しくつろいでていいよ。ちょっと身体伸ばしたりして、服も着替えたらおいで」

「はぁーい!」


 元気よく返事をするユリを最後に撫でて、ヴェルディーゼがテントの外に出た。

 少し身体を伸ばして、ヴェルディーゼが悠莉と龍也を見る。


「おはよう。早いね」 

「うん、おはよう。……早く行かないと、誰かが犠牲になるかもって考えると……気が逸って、いつも早く起きちゃうんだ」

「……おはよう。あー……」

「うん、おはよう。……そういうのは、仕方が無いだろうね。というか、あって当然のものかな。それなら、ユリが戻ってくるまでにできる準備とかしようか。……朝食……食材集めとかかな」

「なら、魚でも捕るか? 昨日の夜は肉だったし……準備中に水辺も見つけたから。暗くてよく見えなかったけど、魚もいたはずだ」

「じゃあそうしようか。えっと……一人残った方がいいな。ユリがびっくりするだろうし」


 ヴェルディーゼがそう言って、改めて龍也と悠莉を見た。

 悠莉が少し何か言いたげな顔をしているが、躊躇っているらしく何も言わない。


「……あー……悠莉? 魚触るの苦手?」

「……う、うん」

「じゃあ、ここでユリが起きるの待ってて。捕ってくる」

「俺も行くけど……悠莉姉ちゃん、網だけ出してくれ。そこに入れて戻ってくるから」

「うん。よろしくね、龍くん。魚もだけど、ヴェルディーゼさんのことも。大丈夫だとは思うんだけど……」

「先に言っておくとやったことないよ。ちょっと触ったことはあるけど」

「……何かあったら呼んでね? 私、駆け付けるから……!」


 一抹の不安を抱えながら悠莉がそう言い、二人を見送った。

 そして、少し移動し、水辺にて。

 ヴェルディーゼが水場――川を覗き込んで、魚を観察していた。


「おお……泳いでる……これ、隙突いて掴めばいいの?」

「ああ。捕まえられたら、とりあえずこの網にいれてくれ。量を見て、良いところで切り上げる」

「わかった。じゃあ……とりあえずやってみようかな。……あ、逃げた。結構早いんだねぇ」


 ヴェルディーゼがそう言って目を細めた。

 魚を釣ったり、捕まえたりすること自体は初めてではないが、それらは全て魔法を用いてやっていたことだ。

 魔法を使わずにそんなことをするのは初めてで、ヴェルディーゼは興味深いなんてことを思いながら魚を目で追う。

 そして、悠々と自分のすぐ近くを泳いできた魚を素早く捕獲した。

 ピチピチと暴れる魚を、ヴェルディーゼがひょいと網に入れる。


「……こんな感じか。握り潰さないように気を付けないと……あ、大きいのいる」

「な……なぁ」

「ん?」


 龍也から声を掛けられて、ヴェルディーゼが魚を捕獲しながら振り返った。

 龍也は網に入っている魚を確認しながら、言いづらそうに言葉を続ける。


「その……ちょっとだけ、相談があるんだ。聞いてもらっても、いいか……?」

「いいけど。何、二人……いや、悠莉には聞かれたくないこと?」


 ヴェルディーゼが尋ねると、龍也はこくりと頷いて口を開いた。

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