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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
ようこそ、神の世界へ

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扱える武器

 それからしばらくして、ユリが残った武器達を眺めていた。

 一個ずつ地道に確認作業を行い、ついに残った武器は3つ。

 毒、鉄扇、大鎌の3つである。

 比較的オーソドックスな武器はユリは順番に確認作業を行っていたが、今度は適当に選んでおり、残ったものはこの3つとなっていた。

 無論、これが全ての武器というわけでもないので全てに触れても全て吹き飛ぶ可能性もあるわけだが、そうなった場合は今日は諦めるとヴェルディーゼがはっきりと言っていた。

 故に、今日のところは最後の武器種はこの3つであり、ここになければ少しの間お預けとなってしまうのである。

 流石にヴェルディーゼとしても残っている武器種を洗っていく必要があるので、少し時間が欲しいとのことだった。

 だからこそヴェルディーゼはこれで終わってほしいのだろう、ユリに圧を掛けていた。


「……いや圧掛けられても困るんですけど!?」

「だって……他の武器調べるの面倒だし……」

「そりゃそうかもしれませんけど! 私も知らないんですから、圧掛けるなら武器に掛けてください!」

「うーん……じゃあ大鎌にしよう」

「うわ本当に圧掛けてる。まぁいいです、じゃあー……次は毒にします! そいっ、瓶持てば吹き飛ぶぁっ!? 爆発した! というかそもそも消えてる!? 毒もガラスの欠片も無い!!!」

「あはは」

「……わざとですか!?」


 バッとユリが振り向けば、ヴェルディーゼが首を横に振った。

 そして、毒瓶があった場所に視線を向けながら言う。


「度重なる周囲からの衝撃で罅が入ってたから。吹き飛んだ瞬間に消した」

「……消したん……ですか? ……消すって何……?」

「消したよ。危ないからね、ふふ」

「気のせいですかねぇ、なんだか目からハイライトが抜けてるような……」

「ユリに危害を加えるモノはいらない」

「……えっと、取り替えれば良かったのでは?」

「えー、やだよ。それじゃユリの驚く反応が見られないでしょ」

「ああ……やっぱりわざと替えなかったんですね……」


 はは、とユリが笑いながら鉄扇を手に取った。

 見た目は至って普通の扇だが、ヴェルディーゼ曰く普通に危険物らしい。


「綺麗ですねぇ……危険物とは聞いてますけど、武器とは思えないで――あれ、吹き飛ばない?」

「武器だよ、人殺せるし。重いでしょ」

「まぁ、そうですね……こんだけ重いんですし、やっぱり武器としふきゅっ!?」

「武器って認識しないと吹き飛ばないからね。……でも、違うんだ……はぁ。……たまたま最後の最後になっただけだといいんだけど。……鉄扇、衣装もいい感じにしたら絶対似合うのに……」

「え? 癖なんですか? 普通の扇持ちます?」

「別にそういうわけじゃないけど。ほら、ユリって学校だと結構静かで、ミステリアスな雰囲気だったでしょ。だから、あんな雰囲気だったら似合うだろうなって。今の元気な感じも可愛いんだけどね」

「どうして学校の様子を知っているのかとかさらっと飛び出した可愛い発言はともかく、もうこれ掴みますよ? 武器決定が延期されるかどうかは全て君に掛かっている! 大鎌って個人的に凄く好きだから使ってみたい……!!」


 ユリが深呼吸をして大鎌を掴んだ。

 すると妙に手に馴染むので、ユリが目を丸くして大鎌を見つめる。


「……え、本当に? 鉄扇の武器だと認識してないからパターンじゃなくて?」

「そうみたいだね。流石にこれを武器じゃないは……無理があるでしょ」

「ふ……ふははははははは!! 勝った! 勝ったー! ふひゃははははは! 好みの武器を使えるとか! ああ本当勝ち! マジ勝ち! ひゃっほーい! いぇええええい!」

「……えぇ……」

「引かないでください、一時的にテンションが上がっただけです。もう落ち着きました。あー嬉し……けど、冷静になると……これを扱わなくちゃいけないんですよね? きつそう……」


 ユリが大鎌を眺めながら深刻な面持ちで呟いた。

 大きな鎌、という名前の通り大鎌はとても巨大で、ユリの背丈ほどはある。

 今も大鎌を握って支えることこそできているものの、その重量で既に手首は疲労し始めていた。

 振るなど以ての外である。


「……魔法だけじゃ駄目ですか……?」

「難易度はそれなりに高いけど、魔法を完全に封じる結界とかあるしねぇ。僕は仕事と位の関係で色んなところから狙われるから、魔法一辺倒じゃ危ないかな。身体が重くなるくらいはするだろうし、余計にね。ほら」

「ほら、って……うぅわぁあああ、なんかくらくらするぅ」


 ふらりと姿勢を崩し、地面へと倒れていくユリを受け止めながらヴェルディーゼが笑った。

 そして、その場に椅子を設置してそこに腰掛け、ユリを膝の上に乗せつつ言う。


「身体を鍛えていないと、こうやって立てなくなる。それでまた攫われるのは嫌だよね」

「はぁいぃ……うー……」

「これは身体能力で抵抗できるからね。大鎌を扱うのは追々でもいいけど、鍛えないと駄目だよ」

「はぁい……あの、まだくらくらするんですけどぉ……」

「うん、解除してないからね」

「うぅー……気持ち悪くなったりはしないんですけど……くらくらして、目の前が……どうして、解除してくれないんですかぁ……」

「……あんなに元気だったのに、僕の魔法1つでこんなに弱って……ふふっ……」

「……不穏だあ……」


 ヴェルディーゼが頬を紅潮させながら言うと、ユリがぼんやりとそう感想を零した。

 そして、不快感こそ無いが魔法の影響で視界が歪み身体も上手く動かないので、ユリは諦めてヴェルディーゼの意識が現実に戻ってくるのをじっと待つことにした。

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