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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
ようこそ、神の世界へ

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武器の確認

 翌日。

 部屋の中で、ユリがそわそわと身体を揺らす。

 ユリは未だにヴェルディーゼの部屋で過ごしており、いつもは落ち着けるこの部屋も今だけは落ち着かなくて堪らなかった。

 何せ、ヴェルディーゼの雰囲気があまりにも違いすぎる。

 誘拐のトラウマがあるとはいえ、部屋に戻ってしまいたいくらいである。


「駄目だよ、戻ったら」

「……必要な時だけ読心してる、みたいなこと言ってませんでしたっけ?」

「気を遣ってたからね。でも、ユリにも遠慮がなくなってきたしいいんじゃないかなって」

「……変なこと考えてる時に読まれたら恥ずかしいのでやめてください……」

「〝主様とアルマジロって微妙に似てるなぁ〟とか? 聞いててよくわからなかったけど」

「ちょっ!? あ、あのいや……あはは……」


 ユリが笑って誤魔化そうとしていると、ヴェルディーゼがじっとユリを見つめてきた。

 じっと、じっと、じぃいいいい……っとヴェルディーゼがユリのことを見つめ続ける。

 やがてユリが折れ、顔を真っ赤にしながら答えた。


「本当にほんのちょっとだけ似てるなぁって思っただけなんですよ、もう本当に少しだけ。一ミリだけ!」

「……で、どこが似てるの?」

「……ま、先ず二文字目までが同じで……〝じ〟って文字が入ってて……文字数が同じです」

「……それだけ?」

「それだけです。……なんですか悪いですか、ふとした時にものすっごいどうでもいい閃きが浮かぶことってあるでしょう。それが恥ずかしいって言ってるだけですよなんですか!!」

「……どうでもいい自覚はあるんだ。まぁいいや、身体の調子はどう? 昨日は限界まで走らせたし、魔法も初めて使ったしで疲れてたでしょ」

「そういえば、不思議と筋肉痛が無いですね。……魔法……というか、魔力の方は、よくわかりませんけど……脱力する感じはないですよ」


 ユリがぷらぷらと手足を揺らしながらそう言うと、ヴェルディーゼが満足げに微笑んだ。

 そして、サッとユリの肩を掴んで外に転移させる。


「えっ」

「さぁ、とりあえず武器は何か調べようか」

「……昨日の今日で!?」

「筋肉痛も無いんでしょ? じゃあ大丈夫。僕から見ても異変は無いしね。さぁやろう」

「あのー……主様? まさかとは思うんですけど、私が嫌がるのを見て楽しんでません?」

「……さぁやろう!」

「主様のテンションがおかしいし否定せずに誤魔化したぁあっ、絶対楽しんでますよね!?」

「先ずは剣に槍、弓……んー、盾って武器の判定だっけ? まぁ武器として使えるから武器でいいか、えーと、あとは大剣にレイピア……大弓も。双剣に短剣に……」

「うわぁあああ武器が並んでく凄ーい……!!」

「危ないから触らないでね」


 様子のおかしいヴェルディーゼのことも忘れ、ユリが目を輝かせ始めた。

 ヴェルディーゼがどこからか武器を取り出し、ふよふよと武器を浮かせている。

 少し握ってみたい衝動に駆られたユリだが、ヴェルディーゼに注意を受けたばかり。

 唸り声をあげながら何とか堪えた。

 そうしている間にもヴェルディーゼは武器を浮かばせ続け、少し待つとヴェルディーゼが作業を終えてユリを振り返った。


「はい、終わったよ。何から触ってみたい? ああ、また握らないでね」

「うーん……全部触りたいし……左から行きます!」

「わかった。じゃあ少し移動して……この辺かな。いいよ、ちょっと握ってみて。振る必要は無いからね」

「はい! でも、握っただけで何がわかっああぁあああああ!?」


 ユリがごく普通の長剣を握った瞬間、長剣が勢いよく吹き飛んだ。

 予測できていたのか、ヴェルディーゼがぱしっと剣をキャッチする。

 その直後、ヴェルディーゼの背後の地面にクレーターが出来上がった。


「え……吹き飛んだ……え……?」

「ああ、衝撃全部殺すの忘れてた……」

「えっ……あの、クレーター……えっ……」

「どうしたの? 僕はなんともないよ?」

「……色々何が起きたんです……?」

「んー……ユリは、特殊体質で特定の武器を除く全ての武器を扱えない。それは振れないとかそういう次元じゃなくて、触れたら吹き飛ぶ。拒否反応みたいなものだね」

「……なんで先に言ってくれなかったんです……?」

「反応が面白っ……あー、忘れてたんだよ」

「本当に誤魔化す気ありますか?」


 ジト目でユリが言うと、ヴェルディーゼが無言で目を逸らした。

 少なくとも、全力で隠す気はなさそうである。

 というよりも、バレた時の反応すら楽しんでいる節がある。


「さぁ、たくさんあるんだからどんどん行こうね」

「このタイミングで語尾にハートマーク付きそうな言い方されると怖いんですけど。いややりますけど……怖……」

「だって下手したら数時間掛かるよ。どれなのか検討も付かないし」

「あ、そういう……はい、やりまーす。次ー……ッう、勢いやば……」

「全部受け止めるからどんどんやっていいよ。心配しないで」

「は、はい……」


 ユリが頷きながら数々の武器を握っていく。

 しばらくするとユリがそんな作業に慣れ、ヴェルディーゼと会話をし始めた。


「主様って魔法以外も使うんですか?」

「使うよ。なんでも使えるけど……よく使うのは剣だね。だから、剣だと教えるのが楽だったんだけど。まぁ、仕方無いね」

「ば、万能……」

「あははっ。……っと、一通り終わったね」

「あっれぇ……? ……え、全部吹き飛びましたけど」

「オーソドックスな奴じゃないのかぁ……面倒だな」

「ひっくい声出さないでください、怖いです」

「……言ってることと本心が真逆……」

「あああ心読みやがりましたね!? やめてくださいよ、もうっ!」

「〝怖い〟って言いながら〝でもそれがいい〟って考えてること、よくあるみたいだから」

「……怖いのも事実ではありますからね?」


 ユリがそう言うとヴェルディーゼが肩を竦めてそれを流し、何やらぶつぶつと言いながらまた武器を取り出し始めた。

 

「え? え?」

「あーっと……棒と、金棒……棍棒も創るか。トンファーと鞭と……モーニングスター、ヌンチャク……ブーメランと……手裏剣も創っておこう。メリケンサック、鉤爪……毒の線もあるか。……瓶に入れた状態で創って……あと鉄扇。あと糸と……槌と……大鎌辺りかな……」

「えぇ……武器いっぱい……比較的珍しいかもしれない部類のが出てきた……」

「さぁ、全部試すよ」


 ユリが頬を引き攣らせつつ、しかし浪漫武器が満載だったので内心わくわくとしながら色んな武器を握って回り始めた。

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