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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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目標

 柔らかい地面に足を付け、ユリが周囲を眺める。

 少し離れたところには村があり、他には何も無い。

 草原が広がるばかりだが、とても綺麗な景色だった。


「――ロタール・ヴァイルス。それがこの世界の名前……でしたよね? それで、目標が……」

「〝魔王〟の討伐。創世神を喰らい、その魔王は不完全ながらも神に近付いた。不可能ではないだろうけど……この世界の住民じゃ、ちょっと荷が重い。異世界から勇者も召喚されてるけど……力不足感が否めないね」

「だから、主様が出向いた……と。そういうわけですね。……創世神がいない世界、初めてかも……?」

「神になってからなら、そうだね。一応、ユリが元いた地球にも、創世神はいないんだけど。……管理者ならいるけどね」


 ヴェルディーゼがそう言って肩を竦め、ユリと手を繋いだ。

 そして、パチンと指を鳴らす。

 すると、ふわりとユリに可愛らしい白いローブが着せられ、ユリが目を丸くした。


「な、なんですか、主様……? すっごく可愛いですけど……」


 ユリが戸惑いながらローブに触れ、首を傾げる。

 薄桃色のリボンで前が留められており、元々着ていた服が完全に見えないようになっていた。


「やっぱり可愛い――じゃなくて、あー……そう、変装。変装だよ」

「……めちゃくちゃ私情っぽい気がするんですけど。着せたかっただけなのでは……? なんか本音漏れてましたよね」

「変装だよ」

「……何のための……?」

「えーと……服装が、時代に合ってないから……」

「えーとって言ったらダメなんですよ。バレバレになるから。あと今更過ぎますし。クーレちゃんの時と同じくらいの時代じゃないんですか? たぶん。それで何も言われなかったってことは何かしてたってことですよね」


 ユリがヴェルディーゼをジト目で見ながら言うと、ヴェルディーゼがすっと目を逸らした。

 やはり着せたかっただけらしい。

 嘘を吐いたりせず素直に言えばいいのに、とユリがヴェルディーゼの頬を両手で包む。


「……嘘は、吐かないでくださいね?」


 そして、ゆっくりと微笑むと、ヴェルディーゼが頬を引き攣らせた。

 ヴェルディーゼが一歩足を引こうとするので、ユリも一歩ヴェルディーゼの方に脚を寄せてニコニコと至近距離で微笑む。


「……ご、ごめん、着てくれないかと思って」

「主様のお願いならなんでも着ますが??」

「……え、あ、うん……」

「まぁ、この下に何も着ちゃダメだったら考える……というか、一発アウトですけど。外だし」

「僕そんなことさせる変態じゃないよ」

「え?」

「え……?」


 ヴェルディーゼがユリの思わず零れたかのような声にショックを受けた顔をすると、ユリがくすりと微笑んだ。

 そして、ヴェルディーゼの手をぎゅっと握りながら言う。


「冗談です。ちゃんとわかってますよ。……さて……目的は魔王の討伐、なんですよね? なら、魔王城とか……とにかく、魔王がいる場所に行きたいんですかね」

「最終的にはそうなんだけど……ちょっと情報が足りてないんだよね。創世神が死んでるから、報告も何も無くて……だから、とりあえずは街に行って情報収集かな。街じゃ魔王の情報は少ないかもしれないけど……勇者の情報なら、たぶん得られる」

「勇者……異世界から召喚されたって人ですよね。会いたいんですか?」

「この世界の住民にとって、僕達は旅人でしかないからね。重要な情報なんて簡単には得られない。だけど勇者はこの世界にとっては重要人物で、色んな情報を持ってるだろうから……実力は心許ないけど、情報源としては心強い味方になり得る。……少しずつとはいえ、魔王がこの世界ごと喰らってるせいで手荒なことできないし」


 ヴェルディーゼがそう呟いて溜息を吐いた。

 何やら不穏な言葉にユリが目を丸くし、不安そうな顔をしながらヴェルディーゼの袖を引く。


「主様、主様。魔王がこの世界ごと喰らってる……って」

「ああ……厳密には、この世界の力、エネルギーをね。魔王はこの世界はどうでもいいらしい。この世界を利用して、完全な神に至ろうとしてるみたいだね。確かに魔王は神を喰らったけど、完全には至れなかったから」

「それで、神になろうと……? ……いい迷惑です。あと主様に突っかかってきそうで嫌です。阻止しないとですねっ!」

「……理由はともかく、そうだね。そのせいで世界が不安定で、僕も安易に手を加えたり、ちょっと世界に衝撃を与えたりすると壊れそうだから……地道に情報集めからやらないと。ほら、ユリ。はぐれないように手を繋いで。とりあえず、あそこの村に行こう」


 ヴェルディーゼの言葉にユリが頷き、二人で街を目指して歩き始めた。

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