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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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証拠隠滅と剣と魔法の世界

 それから、ユリはヴェルディーゼの指導のもと、手加減の練習を開始した。

 その内容は、脆い人型の結界をヴェルディーゼが出すので、それを壊さず傷だけを付ける、というものである。

 他にも、半分壊す、などの指示が出されることもある。

 それをできるようになるまで繰り返し、ヴェルディーゼが仕事でいない間はリーシュデルトが特訓に付き合ってくれたりなどして、ユリは完璧に手加減を身に付けた。

 ちなみに、特訓中の仕事にはユリが付いていけるものもあったが、ヴェルディーゼが舐められただけで殺してしまうくらいには精神が不安定だ、ということでユリが自ら辞退した。

 そうして、手加減を身に付けた今、仕事にも付いていける――と、ユリとしても言いたいところだったのだが。


「ダメでじだ!!」

「……殺っちゃった……ねー……」

「うわぁあああんっ、引かないで! 困った顔しないでください主様! 困った顔も素敵です!」

「ありがとう。……にしても……手加減できるようになっても、怒ったらダメか」

「もう一人の私が殺っちまえと訴えてくるんです。そんなものはいませんが。……だ、だってこの人、主様を殺そうとしてたんですよ? 実力不足も甚だしいですけど、でも確かに殺意を向けてきたんですよ? 許せない……っ!」

「許せない、なんて言われてもね。殺す必要は無かったんだよ。僕の眷属であるユリが、その実力を示す。完膚無きまでにぶちのめす。それだけで、〝これ〟の心は折れたんだから」

「ごめんなさい、主様……完膚無きまでにぶちのめしすぎてしまいました……」


 ヴェルディーゼがそっと足元に視線を移すと、ユリが釣られるようにそちらを見た。

 無残な死体がそこに転がっている。

 その頭は胴体を離れて転がっており、綺麗な断面すら見えた。


「……ひぇ。こ、これ、私が……」

「うーん……流石だね、綺麗にスパッといってる」

「真顔で褒められましてもぉ……うぅ、ごめんなさい、主様に殺意を向けた人。どうしても許せなかったんです。反省してください。そうすればきっと来世は殺しません」

「謝ってる側の発言かな、それ。……まぁ、いいけど。ユリに危害加えられてたら僕も殺してただろうし。反省しても許せない自信があるし。さてユリ、あんまり眺めてても気分悪いし、戻ろうか。処理は僕がしておくからね」

「……聞く機会が無かったんですけど……処理って、何してるんです……?」

「ああ……消し去ってる。死体とか、血痕とか。残しておくとこれの親しかった人に狙われるかもしれないし」

「証拠隠滅だったんですね!?」

「大丈夫大丈夫、交流区の管理者は知ってる。というか慣れてる」

「えぇ……」


 ユリが頬を引き攣らせてヴェルディーゼを見て、死体に視線を向けた。

 まぁ、確かにこんな無残な死体が見つかれば、恨まれるのもおかしくないだろうと、ユリも一応の納得はする。

 ヴェルディーゼが帰るために手を差し出してきたので、ユリがその手に自分の手を重ねると、景色が一瞬で変わった。

 見慣れたヴェルディーゼの部屋である。


「……うぅ。またダメでした……まだ、付いていけない……」

「そのことなんだけど……ユリ、次の世界、一緒に行かない?」

「……え? でも、私……主様のことを侮辱されたりしたら、怒っちゃいます。主様のことを知らない人たちばかりの世界に行くんですから、主様は舐められやすいはずで……」

「絶対に、一瞬たりとも離れない。そうすれば、僕がユリのことを止められる。……ユリは、僕が止めればそれに逆らったりはしないでしょ?」


 ヴェルディーゼがそう言って微笑むと、ユリは俯いてから小さくこくりと頷いた。

 そして、ヴェルディーゼの手を握ると、ユリは不安そうに身体を揺らす。

 ヴェルディーゼがそんなユリの行動にきょとんとしていると、ユリはそっとヴェルディーゼを見上げて尋ねた。


「……主様。嘘とか、隠し事とかは……」

「……。……隠し事はしてる。でも、必要なことだと思うから……申し訳ないけど」

「ん……わかりました。それは白状してくれたので、いいです。……凄く不安だけど……行きます。どんな世界ですか?」


 覚悟を決めてユリが言うと、ヴェルディーゼがほっとしたような表情を見せた。

 それにユリが首を傾げていると、ヴェルディーゼがユリの質問にどう答えるべきかと考える。


「……そう、だなぁ。ごく普通のファンタジーな世界、って言ったらわかるかな?」

「魔法とかがあるような……剣と魔法の世界、って感じ……ですか?」

「大体そんな感じ。加えてスキルっていうのがあって、個人個人に神から与えられる特殊能力みたいなものかな。星一つから星五つまでのレアリティがあるんだって」

「ほえぇ、レアリティ……ソシャゲのガチャみたいですね!」

「星五つは百年に一人の逸材とかなんとか」

「……本当にガチャみたいですね」


 苦笑いしながらユリが言い、息を吐き出した。

 そして、膝を抱えるとそこに顎を乗せてヴェルディーゼを眺め、尋ねる。


「何か私を連れていきたい理由があるんですよね?」

「……隠し事はしてるって言ったよ」

「……ああー……はい、わかりました。そういうことですね」


 ユリがヴェルディーゼの言葉に今は言いたくないのだと理解し、すぐに引き下がった。

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