表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

181/257

地下室にて

 自分が起こしてしまった惨劇、血みどろの殺人現場のような有り様の中で、ユリがどうしようかと考える。

 とりあえず、生死を確認するべきかとユリがちょいっと鎌で男を突付く。

 しっかり刃の部分でやっているので、肌が更に切れていた。

 が、そんなことは意に介さずユリは確認を続ける。


「……ぴ、ぴくりともしない。死んでる……? ……つい、カッとなって……殺すつもりは……。……ちょっとだけ、死ねばいいのにとか思っちゃったけど。だ、だめだめ、そんな物騒なの……でも、それで、主様の役に立てるのなら――」

「へぇ、殊勝な心掛けだね」


 後ろから掛けられた声にユリがびくりと肩を跳ねさせ、そっと振り向いた。

 綺麗な微笑を浮かべて、ヴェルディーゼがその紅い瞳でジッとユリを見つめている。

 口元では笑って、目は真剣そのもの。

 目の笑っていない笑顔を浮かべているヴェルディーゼに、ユリは一歩後ずさる。


「どうしたの? ユリ。僕から距離を取るなんて珍しい。怯えてる?」

「……ぁ、いや、あの」


 酷く喉が乾いている気がして、ユリが喉元に手を当てた。

 上手く声が出なくて、ユリは泣きそうな顔でヴェルディーゼを見上げた。


「……はぁ」


 と、そんな吐息とともに、ふっと空気が軽くなってユリが目を瞬かせた。

 喉が通るようになって、ユリは戸惑いながらヴェルディーゼを見る。


「色々言いたいことはあるけど……先ずは、そうだね。無事で良かった。何かあれば、リィに守ってもらうようには頼んでたけど……」

「リィ様……? それって、いつから……」

「最初からずっと。襲われる可能性があるのはわかってたし……ユリの様子がおかしいから、念のためにね。大丈夫? 怖くなかった?」

「……怖かったです。主様が」


 ユリが少し拗ねたような顔をして言うと、ヴェルディーゼが苦笑いした。

 そして、少ししゃがんでユリと目線を合わせながらその頭を撫でる。

 ユリはすっと目を逸らして、しかし抵抗はせずにそれを受け入れていた。


「威圧はしてたからね。ユリの異変が見れるかもと思って泳がせたのは僕だけど……まさか、駆けつけたらこんなことになってるとは思わなかったから。怖がって誰かを傷付けるなんて全くできなかったのに。流石に叱らないとなぁ、ってね」

「……」

「……だんまり? それとも、ユリ自身もわかってないから何も言えない?」

「……いえ……主様が、怖くて……言葉が上手く、出てこなくて」

「ちょっと怖がらせすぎたね、ごめん。声も出なくなるなんて思ってなかったんだけど……僕が思ってるより怖いのかなぁ。……まぁいいや、続きは城でやろう。死体処理は任せてくれていいからね」


 死体とはっきり言われ、ユリが肩を跳ねさせた。

 そして、一拍してから頷いて、ヴェルディーゼの手に触れる。

 するとすぐに目の前の景色が変わり、ユリが周囲を見回せばそこは――地下室だった。


「ひぃっ!? ち、地下室っ……!?」

「殺しを咎めるつもりはないよ。僕も散々やってきたことだからね。それを経験してない神も極少数だろうし。ただ……ちょっと色々、言っておかないといけないなぁって思ってね?」

「ぁぅ……」

「先ずは、そうだなぁ。ユリ……僕のために、苦しみながらやったのなら、もう絶対にやらないで。そんなことをユリがする必要は無い」

「……そう、いうわけじゃ……」

「そう。なら、軽々しくそんなことはやらないで。少しでも後悔するかもと思うなら、やっちゃダメ。些細なことが切っ掛けでそんなことをするのもダメ。……わかった?」

「はい。……今回は……その……相手が、主様のことを舐めてたから……それで、私、怒っちゃって。……ごめんなさい」


 ユリが肩を落としながらそう言って頭を下げた。

 ヴェルディーゼはそれに目を眇め、ユリの頭を撫でながら顔を上げさせる。

 今も、ユリの表情に苦しみは見えない。

 怒られたことに落ち込んで、反省して――それだけである。


「……封印のせい?」


 ふとヴェルディーゼがそう口にすると、大げさにユリの肩が跳ねた。

 そして、ユリは数秒ほど沈黙した後に、重苦しく頷く。


「……はい。これが、その……ルスディウナって人の干渉の結果なのかとかは、わかりません。だけど……あそこで、あの人を……私を封印した人を倒せていたら……殺せていたらって思ったら……同じようなことを、ずっとぐるぐる考えてたせいかもしれませんね。……いつの間にか、抵抗感とか……忌避感とか、なくなってて……」

「……ユリは……それを、どう思う? 殺しを躊躇わなくなって……嫌?」

「……わかりません。でも、主様の役に立てるかもしれないのなら、それは嬉しい、です。誰かを殺す必要は、別に無くて……でも、戦えるようにはなったってことでしょう?」

「そうだね。……それでいい。それがいいよ。なら、次の仕事までに手加減を覚えようか。教えてなかったわけじゃないけど……より本格的に、より厳しく……ね」

「ひえっ……よ、よろしくお願いします……」


 より厳しく、と口にするヴェルディーゼに、ユリが頬を引き攣らせながらも頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ