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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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嫌な視線

「久々の〜! 外〜〜!」


 交流区に降り立ち、ユリが腕を広げながら叫んだ。

 周囲にざわめきによって声を掻き消され、ユリがほっと息を吐きながらヴェルディーゼの方に駆け寄っていく。


「……ひ、人が多くて良かったです。誰にも聞こえてませんよね……?」

「恥ずかしがるなら、なんであんなこと言ったの……? あんまり聞こえてないと思うけど……」

「う、うるさいですよっ。久しぶりだから、ついテンションが上がって……」

「……ごめんね。あんなに長く……」

「あー! んもぉ、主様ってば! それはもういいですから、折角のデートを楽しみましょう? さて、先ずはどこに……あれ?」


 ユリがふと言葉を止めてヴェルディーゼから視線を逸らし、周囲を見た。

 何やら多くの視線が自分、そしてヴェルディーゼに向けられており、ユリはそわそわと身体を揺らす。

 そして、助けを求めるようにヴェルディーゼの手を握り、不安げな表情で身体を寄せた。


「……な、なんで。前は……」

「……ごめん、忘れてた。ちょっと説明するから、こっちに」

「えっ、あ、はい!」


 ヴェルディーゼに腕を引っ張られ、ユリが戸惑いながらも返事をした。

 そのまま二人で路地裏まで走っていき、ヴェルディーゼが周囲に人の気配が無いことを確認して息を吐き出す。


「……ごめん、驚かせたね。大丈夫だった?」

「大丈夫……です、けど……な、なんで……? なんだか……視線がおかしかった、ような」

「……前は、怖がらせないように細心の注意を払ってたんだよ。僕に敵意のある存在を徹底的に引き剥がして、遠くに追いやって……交流区の管理者とは知り合いだから、彼女にも手伝ってもらってね。そうして対策をして、ようやくユリを連れて来てもいいと思えた」

「……全然気付きませんでした」

「あの頃のユリに気付けるわけないよ。あの頃は僕のことを好いているわけでもなかったし。まぁ、それはともかく……元から僕は、一部からは嫌われている。神は傲慢だからね、他者の干渉を嫌いがちなんだよ。だけど、僕は世界が滅ばないようにする役目があるから、いくら嫌がったって僕は行かざるを得ないし、世界を存続させるには僕に頼るしかない神が多数いる。実力のある神は僕に頼らずとも問題無いけど、神になったばかりのとか、才能に恵まれなかったのとかは、どうしてもね」


 ヴェルディーゼがそう言って肩を竦めた。

 そして、面倒そうに壁を少し睨みながら、続けて説明をする。


「神っていうのは、知的生命体から進化するもの。進化し神になると相応の力を得る。だからこそ……神になったばかりの存在は、全能感に酔い痴れててね。神になったばかりの者ほど傲慢なんだよ」

「……でも、神様ってそう簡単に生まれないんじゃ……」

「昔はそうだったよ。でも、世界が増えていくにつれ、神が生まれる確率も上がっていくからね。それに……リィみたいに、どうしようもないことになってたらまだ弱くても諦められたのかもしれないけど……中途半端に弱くて、才能が無いと、僕への劣等感でそれはもう面倒なことになる。高位の神なんてほんの一握りで、実際のところそういうのは多いからねぇ……結果があんな嫌な視線の雨だよ」

「……見下してます?」

「別に。僕は僕の実力を知ってて、そういう存在との差も理解してるだけだよ。……少しの努力もしてなくてやってるならちょっと見下すかもしれないけど。まぁ、とにかく……ああいう視線の主は弱いから、大丈夫だよ。無視しておけばいい。その内絡んで来なくなるのが大半だから」

「あれっそういう話だったんですか!? 弱いから大丈夫ってことを言いたくてこの話してたんですか!?」


 驚いたような表情とともにユリがそう言うと、ヴェルディーゼが首を傾げた。

 そして、当然のように頷いて、ユリに微笑みかける。


「そうだよ? ユリの方がずっと強いからね。有象無象の戯れ言なんて気にしなくていいんだよ」

「わ、私はてっきり、前はどうしていなかったのかと、あれがどういう人達なのかの説明であって……主様が守ってくれるのかと」

「守るけど、慣れる必要もあると思ってね。とはいえ事前に説明しておくつもりだったんだけど……浮かれちゃって、忘れてた……」

「浮かれてたんですね、嬉しいです。えっと……でも、慣れるって?」

「敵意とか悪意とかを込められた視線とか、後は一応、襲われることにも慣れた方がいいね」

「襲われる前提ですか。怖……気軽にデートもできないじゃないですか。うぅ……」

「念頭には入れておいた方がいいかな。僕としても面倒だけど、デートのためならしょうがない。それに、ここなら万が一のことがあっても、ユリに傷なんて付けられないだろうし」


 ヴェルディーゼがそう言ってユリの頭を撫でた。

 不思議そうに首を傾げているユリを見て、ヴェルディーゼは含みのある笑顔を浮かべながらその頬を撫でる。


「とにかく安心して、僕が離れたとしても、ユリに傷なんて付かないから」

「なんか笑顔が不穏で安心できないんですけど……まぁ、わかりました……?」


 ユリが微妙に頬を引き攣らせながらもそう返事をすると、ヴェルディーゼは満足そうに頷きながらユリの手を引いて歩き始めた。

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