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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
真っ暗闇の世界

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封印期間

 それから、ヴェルディーゼは一つずつ今回起きたことについて説明をした。

 ユリが本当に、数百年間もの孤独を味わった可能性があることも、含めて。


「……数百年間……凄い年数ですね」

「可能性の話でしかないんだけどね。……僕なら、実際にはどうなってるのか、調べることもできるけど……」

「あはは……まぁ、ちょっと怖いですよね。主様はきっと、もしそれが本当なんだとしたら……そんな長い間、って自責しちゃうんでしょうし」

「……ユリは、どうしたい?」

「……私は……」


 険しい表情をしながらヴェルディーゼが尋ねると、ユリは悩ましげに足元に視線を落とした。

 そのままユリはそっと目を閉じると、数秒ほどしてから顔を上げ、ヴェルディーゼを見る。


「……私の体感、ですけど。数百年間、本当にあそこにいたとしても……違和感は無い、です。……たぶん、主様が封印の解除に取り掛かったのであろうあの瞬間……私が、それに気付くまでは……私、主様の名前も、自分の名前も、たぶん、忘れてましたから。でも……何も無くて、退屈で退屈で、単に長い時間を過ごしていたんだと錯覚していただけと言われても……納得できなくもないかな、と」

「……つまり、ユリの感覚としては、数百年間をあそこで過ごしてるんだね」

「うぅ……まぁ、はい。そっちの方が納得できます。……でも、あの……やっぱり、結局は感覚でしかないわけで。実際のところはわからないんですけど……でも……私は、別に……わからなくてもいいです。わかったら、主様は自分を責めちゃいますから。……助けてくれたことが、全てなのに」


 ユリがそう答えると、ヴェルディーゼは悩むように眉を寄せた。

 そして、そっとユリの背中に腕を回すと、目を細める。


「……主様?」


 すぐに顔を険しくするヴェルディーゼに、ユリは不安そうな顔をする。

 しかしすぐに何かに思い至ったような顔をすると、じとりとヴェルディーゼを睨んだ。


「見たんですね? 結局見たんですね?」

「……ユリが嫌なら、僕だけは知っておこうと思って……」

「私が別にいいって言った理由、ちゃんと伝えましたよね? 聞いてました?」

「僕が自責しちゃうからでしょ。わかってるよ……わかってるけど、その上で……どうしても」

「……むぅっ。ならいいです、教えてください。それなら、一緒に知ります」

「……えっと。……数百年どころじゃない、というか。いや、確かに数百年ではあるんだけど……」

「はっきり言ってください」


 じとりとしたユリの目に急かされ、ヴェルディーゼが目を逸らした。

 そして、ユリを抱き締めながら言う。


「…………約、千年。よく頑張ったね……本当に、ユリは頑張ったよ」

「……っ。そ、そんなに……? そんな、はず……だって、私の人生の何倍も……え……?」

「……これは、僕の推測だけど……ルスディウナが、壊れないように保護してたのかもしれない。……僕に、ユリの心が壊れる瞬間を見せるために。きっと、その方が効果的だっただろうから。……すぐにやらなかったのは……より効果的なタイミングを窺ってたからかな……」


 ヴェルディーゼがそう言って更に力を込めてユリを抱き締めた。

 長い年月をあの空間で過ごしていたことを知り、ユリは黙ったままヴェルディーゼに更に密着する。


「……ふぅ。……主様、より効果的なタイミングって言っても……主様にとっては、どんなタイミングであれ、私の心が壊れてしまったら……」

「ショックは受けるよ。でも、ルスディウナの手に落ちはしない。……ルスディウナは……認めたくはないけど、僕のことを熟知してる。そのショックを直視するのは、全てが終わってから……僕がそうするのを、わかってたからだろうね。……不安だろうけど……今はもう、大丈夫だと思う。辛いものが薄れたまま、僕と再会したから。ルスディウナの痕跡、さっき消したし。魔法っぽいのさっき潰したから……」

「……そう、なんですか。……え? 魔法っぽいの潰したって、もしそれが本当に私を保護するためのもので、まだ私がその影響下にあっただけならどうするつもりだったんですか!?」

「今は弱体化とか無いし、すぐ傍にいるから精神崩壊とかしてもすぐ戻せるから大丈夫だよ」


 ヴェルディーゼがそう言ってユリの頭を撫でた。

 全く良くはないその発言にユリは頬を引き攣らせつつ、溜息を吐いて少しだけヴェルディーゼから離れる。

 そして、真剣な表情でヴェルディーゼを見上げると、静かに口を開いた。


「主様。私……主様に話していない、大切なことがあります」

「……ん? ……聞くけど……僕、知ってるんじゃないかな。大体のことは知ってるよ?」

「知らない……と思います。たぶん。今から話すことは、五歳とかの頃のことなので」

「ああ、なるほど。それは知らないね。聞かせて」


 優しい声でヴェルディーゼがそう言うと、ユリは重苦しく頷いて、少しだけ躊躇ってから口を開いた。

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