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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
ようこそ、神の世界へ

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特殊体質と練習開始

 ユリが座って足を休めながらヴェルディーゼの適性調査の結果を待っていると、ヴェルディーゼはすぐに頷いて翳していた手を降ろした。

 ユリが途端に目を輝かせ、わくわくとした様子でヴェルディーゼの言葉を待つ。


「……なるほど。特殊体質かな……適性は深淵魔法のみ、だね」

「深淵魔法! 凄そうですね! ……あの、でも、特殊体質って……?」

「言葉通りだよ。才能だとか、それ以前の話で……ユリの場合は、その他の適性がゼロ。本来は、まぁ絶望的に適性が無くても、本当に初歩の初歩の魔法は扱えるくらいの適性があるんだけどね」

「あ、つまり私はそれしか使えないんですね。凄そうだからいいですけど……あれ、つまり運動回避案件では!?」

「んー……この場合、武器も別で縛りが付く場合の方が多いかな。魔法一属性、武器一種類しか使えない感じ」

「……回避案件ではなさそうですね……今のところ」

「そうだね。武器も使えない事例もあるにはあるけど、かなり珍しいかな。確率としては武器も別で縛りがあるって方が高いね。確認作業くらいは今日やってもいいけど……」

「あ、嫌です。無理です」


 ユリが真顔で言うと、ヴェルディーゼが苦笑いして頷いた。

 そして、それならばと魔法の練習をする準備をする。


「周りは……大丈夫だよね、たぶん……」

「……何の確認ですか?」

「深淵魔法は……簡単に言うと範囲と威力に特化してるんだよ。広範囲かつ高威力な魔法だね。その分扱いづらかったりするんだけど……見た感じ適性そのものはかなり高かったし、扱えないってことはないんじゃないかな。さて、そろそろ使い方についての説明をするよ」

「は、はい……! よろしくお願いします!」


 ユリが姿勢を正してそう言うと、ヴェルディーゼが頷きながらユリに手のひらを見せた。

 不思議そうにユリが首を傾げていると、ヴェルディーゼは意味深に笑みを浮かべながら尋ねる。


「何か感じる?」

「へ? ……な、何かあるんですか? この手に?」

「あるよ。……さぁ、可視化させてみようか」

「ま、待ってください一体何が――びゃん!?」


 手のひらを覗いていた顔が黒い靄に包まれ、ユリが飛び退いた。

 すぐに靄から距離を取ることに成功し、ユリが自分の体を抱き締めながら靄を睨みつける。


「な……なんですか、それ。真っ黒だし、不気味……」

「これは僕の魔力。敢えて手のひらに集中させて放出させてるんだよ。見えてこそいないけど、ユリの周りにも魔力は漂ってるし、身体の中を巡ってる」

「は、はあ……え、こんな禍々しいものが?」

「禍々しくないよ。これは色を付けてわかりやすくしているだけで、魔力に色は無いからね。……性質としては、禍々しさを秘めているかもしれないけど。邪神だから」

「そ、そうなんですか……でも、なんでこんなことをしたんです? 見せたいだけなら、最初から色を付けるだけでも……」

「こうした方が、より強く魔力を意識できるから」

「……そ、そんな強引にやらなくてもぉ……」


 相当怖かったのか、ユリが情けない声を出しながら靄を見た。

 色を付けているからそう見えるだけで、魔力そのものの見た目はそう恐ろしいものでは無いらしいがやはりじわじわと恐怖心がユリの心を煽ってくる。


「……ひぃ……」

「というわけで、とりあえずユリもこれ出せるようにしようか。あ、色は付けなくていいよ。僕は見えるから」

「……出せるように、と言われましても……どうやれば?」

「ああ、うん。先ずは魔力の循環から意識できるようにしようか。存在は感知できるようにしたしね」

「できるようにされましたね……それで、循環というのはどうやって? 頑張って意識してみてますけど、それらしいものは感じられないんですけど……」


 ユリが困ったようにそう言うと、ヴェルディーゼが背後に回ってユリの手首を掴んだ。

 そして、そっと魔力を流し込みつつ言う。


「目を閉じて。身体には血液が巡っていて……それと一緒に、魔力も流れてる」

「……はい」

「少しだけ、ユリの魔力を活性化させるよ。少し活発的になって、不思議な感覚になるかもしれないけど……大丈夫。悪い影響は無いからね」

「活性化……あ、う……全身が、ぞわぞわする……」

「大丈夫。すぐに慣れるよ。さぁ、想像して。手のひらに、魔力を放つことができる穴がある。もちろん本当に穴が開いているわけではないけど、魔力の通り道として確かに存在もしている。ゆっくりでいい。循環し、手のひらに到達する魔力が流れ出ていくのを想像してごらん」


 ヴェルディーゼの視界に、透明な魔力がゆっくりとユリの手のひらから溢れる様が映った。

 魔力は少しずつ勢いを増し、流れる量も増えていく。


「……ストップ」


 ヴェルディーゼが魔力が流れている場所を指先で押さえ、ユリの頭を抱き締めた。

 ゆっくりと息を吐いて脱力するユリを支えつつ、ヴェルディーゼが満足げに言う。


「上手くできてたよ。ゆくゆくは手のひら以外からも出せるようにはしたいけど……上出来だね。想定よりも早く習得できてる」

「……はぁううううぁああ……づっがれだー……うう、まだ全身がぞわぞわする……」


 ユリが自分を抱き締めてそう言うと、ヴェルディーゼが苦笑いしてその頭を撫でた。

 それを嬉しそうに受け入れつつ、ユリが上目遣いでヴェルディーゼを見る。


「ふひひ……私、上手ですか?」

「上手だよ。完璧」

「あっひゃっ、ふひひひにひっひひひ……」

「……笑い方が奇妙……」

「ひどいっ。あ〜でも、ふひひひ……練習楽し〜!! 褒められるの嬉しすぎるぅ!! えへっえへへへっ」

「……まぁ、これはこれで可愛いか」


 ヴェルディーゼがそう1人納得しつつ肩を竦め、次の段階に移ろうとひっそりとユリの結界の魔法耐性を強め始めた。

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