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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

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堕ちた竜

 何か情報でもと思って会話をしていたのだが、話が通じなくて会話が苦痛になってきたので、ヴェルディーゼが女に剣を突き刺した。

 女はそれを見て、口角を吊り上げる。


「ああ、ルスディウナ様……私は役目を果たしました! どうか最期に、貴方様の祝福を――!」

「……どうせなにか仕込んでるんだろうとは思ってたけど。はぁ……後でユリに癒してもらおう。気味の悪い狂信者め……」


 ぶつぶつとヴェルディーゼが呟いていると、女が瞬く間に腐り落ち、蠢き始めた。

 耳に残る嫌な音を立てながら、腐った肉がヴェルディーゼへと迫る。

 それをヴェルディーゼは嫌そうに見て、手のひらを腐った肉に向けた。

 すると肉は一瞬で燃えて灰になり、動かなくなる。

 肉を動かしていた魔力が完全に消えたのを確認して、ヴェルディーゼが息を吐いた。

 この世界を狙っていた神への対処は一先ず済んだので、ヴェルディーゼが結界を解除してネリルたちの方を見る。

 大きな怪我は負っていないが、どうやら勝機を見出すことができずジリ貧になっていたらしい。


「……さて。援護くらいはしないとなぁ」


 ヴェルディーゼがそう言ってネリルとアレクシスに近付いていき、竜を見た。

 相変わらず怒りに満ちた瞳をしている。


『貴様ァ……我は邪王竜なるぞ! 一体どれだけ我を愚弄すれば気が済む!?』

「そんなつもりはないんだけどね……二人とも、こっちは終わったけど勝てそう?」

「え? いつの間に……じゃなくて、貰った加護が凄すぎてアレクが全然傷付いてないから、しばらくは負けないと思うけど……全然攻撃が通ってないから、勝てる気もしない……かも」

「連携は? 聖剣と聖女の力で。普通に攻撃するより全然通るはずだけど」

「試したけど、効いてなさそうだったよ……?」

「……ルスディウナめ、あの竜に何かしたな……はぁ、とにかくわかったよ。じゃあちょっと攻撃通るようにするから、時間稼ぎして」


 一方的にヴェルディーゼが言い、数歩下がってから竜をジッと観察し始めた。

 そのまま動かなくなり、何も言わないのでネリルとアレクシスが顔を見合わせて頷く。

 唐突ではあるし、どれくらいの時間が欲しいのかも言わずに黙り込んだので無茶振りをとも思わないでも無かったが、やはりどうにかしてくれるというのは願ったり叶ったりでもある。

 どうにかしてやろうと二人が気合を入れ、改めて竜と向き合った。


「聖女の名のもとに、浄滅せよ!」

「はぁッ!」


 ネリルが詠唱し、アレクシスが聖剣で一点に攻撃を仕掛ける。

 これと言った弱点は見つかっていないが、ほんの僅かとはいえ徐々に攻撃が通っているらしき場所はある。

 であれば、一点への集中攻撃により、傷を付けることくらいはできるだろうと考えているのだ。


『効かぬわァ! さぁ、その血肉を寄越せェ、邪神めがァァ……ッ!』

「……お前に力を与えてる奴の方が、僕よりよっぽど邪悪だと思うけど? ふふ……なるほど、可哀想に。お前もとっくにルスディウナの操り人形にされてたんだね。納得が行ったよ……邪王竜なんて名を名乗っておきながら、光に堕とされたたのか。いや、察するべきだったな。ルスディウナの手が加えられていたからこその、その僕への執着か。なら……」


 ヴェルディーゼがネリルとアレクシスよりも前に出て、ゆっくりと竜に手を伸ばした。

 そして、その鱗に手を触れると、竜から光が噴き出し代わりに黒い靄のようなものを纏い始める。


『グ……ゥ、アア……ッ』

「リィはもう、誰にも話さないだろうけど……僕は昔に、リィからこの世界に優しい竜が生まれたって聞いたことがある。竜って聞いて、もしかしてとは思ってたけど……ふふ。……さて、切っ掛けは作った。操り人形から抜け出せるかどうかは、君次第だよ」


 ヴェルディーゼがそう声を掛けて、竜から離れた。

 そして、戸惑いながらも警戒だけはしている二人に近づいて行くと、軽く説明をする。


「さて。……あの竜は、最初から邪悪だったわけじゃないらしい。他者の影響でああなってただけ。ただ、その根源は取り除いたけどそれだけで元には戻らない。あくまでも僕が取り除いたのは根源だけだからね。だから、元に戻れるかどうかはあの竜次第。元に戻れば、戦う必要は無くなるよ。とりあえず、さっき言った根源が聖剣や聖女と同じ光側の属性になってたせいで効かなかったみたいだから、反転させておいた。竜自身の属性も反転して光にしておいたから、今なら根源から振りまかれた影響だけを浄化できるはずだよ。手伝ったら?」


 ヴェルディーゼがそう言って首を傾げると、目を丸くしてネリルが竜を見た。

 竜は微動だにせず、ただ時々苦悶の声を漏らしている。

 アレクシスは少しだけ怪しむような目をヴェルディーゼへと向けたものの、首を横に振って頷く。


「……わかった、そうしよう。それで、先生はこれから――」

「……ッ、申し訳ないけど話は後で! もし僕がいない間に事が終わればラーニャと一緒に学園に戻って!」

「えっ、ちょっと先生!? 急にどうしたの!? あっ、行っちゃった……!」


 ネリルが伸ばした手を引っ込めてアレクシスと顔を見合わせ、少し釈然としない顔をしながらも竜に駆け寄っていった。

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