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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

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戦闘開始

 時は少し遡る。

 ヴェルディーゼがメルールに連絡用の道具を渡し、その連絡を受ける役割について説明し、寮に送った直後。

 ヴェルディーゼはアレクシスを横目で確認し、リーシュデルトの加護を確かめていた。


「……加護は、大丈夫そうだね。リィのことだから、加護も上手く行かないんじゃないかって少し心配してたんだけど」

「……なのに、創世神様を先に行かせたのですか」

「ユリの安全の方が大事だからね。最悪僕が加護を与えればいい。まぁ、副作用が無いとも限らないけど……死にはしない」


 アレクシスが少し刺々しく言うと、ヴェルディーゼがそう答えて肩を竦め、ネリルを見た。

 数日間寝たきりだったので、本調子が出るかどうかは怪しいはずだ。

 しかし、思いの外ネリルがけろっとしているので、ヴェルディーゼは不思議そうにその姿を眺める。


「……? 気になることでもあるの、先生?」

「寝たきりだったはずだよね。……ただの昏睡の呪いのはず……聖女の力が本人を守ってた? だからって、多少鈍るくらいの変化すら守られるわけが……ん、いや。……取り繕うのが上手いだけか、なんだ」

「……えっと……アレクやラーニャちゃんの前では……言わないでほしかった……なぁ」

「先生。本当にネリルを戦場に向かわせるのですか」

「そのつもりだけど? 大丈夫だよ、ユリは優しいし情が深いから全員のことを大切に思ってる。ユリの大切な存在を死なせようとは思わないからね」


 ヴェルディーゼが腕を組みながら言い、全員を眺めた。

 そして、溜息を吐いて横目でユリたちが歩いていった方を見る。


「……さっさと片付けないといけないんだよ。リィは守ることしかできないし、メルールは戦闘経験が無い。ユリは実力はあるけど、実戦じゃ魔物相手ですら武器や魔法は振るえない。模擬戦ならあんなに強いのに……」

「ユリちゃん、そんなに強いんだ……でも、戦えないんだね」

「ん。……そんな中で、ユリ達が狙われてるんだから。怪我をさせたいならのんびりしてくれてもいいけど、準備ができたならさっさと動くことを推奨するよ。ほら、考える前に動いて。竜如きどうにでもできるんだから。準備終わった?」


 面倒そうにヴェルディーゼが尋ねると、ネリルとアレクシス、ラーニャが顔を見合わせてから頷いた。

 それを確認し、ヴェルディーゼがパチンと指を鳴らす。

 瞬間、景色が切り替わり四人は先ほどまでとは違う場所に立っていた。

 どうやらそこは山の前らしく、ヴェルディーゼ以外の三人はその大きな山を見上げる。

 うっすらと見える中腹辺り、そしてその更に上は黒い大地で覆われており、草木が腐り落ちているように見える。


「ここにあの竜が住んでる。ああ、登る必要は無いからね。あっちから来るなら良し、来ないなら引き摺り出すから。……さて、これからの行動だけど……ラーニャはもう少し後ろに。ギリギリ僕達を視認できるくらいの位置まで下がっていいよ。もしもの時は僕がラーニャのところまで全員を連れて行くから、そこからはお願い」

「う、うん。わかった! アレク、ネリル姉様も、気をつけてね!」

「次、ネリルとアレクシス。まぁ言わなくてもわかると思うけど、前衛、後衛で役割分担して上手く戦って。必要に応じて補佐とかはするから」

「うん。……それで、先生は? 先生も竜と戦うの? えっと、確か向こうでは……」

「補佐だけかな。必要最低限、危ない時に手出しはするけど、僕の敵は竜じゃないから。余裕が無くなるほどではないけど、ちゃんと戦うから僕に頼りすぎないでよ」


 嫌そうにヴェルディーゼが言うと、ネリルとアレクシスが頷いた。

 満足気にそれを確認すると、ヴェルディーゼは山を見て笑う。

 竜が出てくる気配はない。

 であれば、無理矢理にでも出てこさせる必要がある。

 ――と、いうわけで。

 ヴェルディーゼが剣を出し、軽く横薙ぎに振った。


「先生? 一体何を……」


 何をして、と続けようとしたネリルの声が、轟音に掻き消された。

 ギョッとしながらネリルとアレクシスが山を見ると、山の下部が消滅し、重力に従って山のまだ残っている部分が落下していた。

 先ほど剣を振った際に、だるま落としの要領で山の一部を消し飛ばしたらしい。

 こちら側に飛んできた土や岩など、山の残骸はヴェルディーゼが結界でしっかりと防いでいる。


「……は……ちょ、ちょっと待ってくれ、な、何をしているんだ、先生……!?」

「出てこないから、山を消し飛ばしてるんだけど。ああ、大丈夫、竜は山の頂上に住んでるし、飛べるから精々家の場所が突然低くなって驚いてるだけだよ。これで死ぬようなことはない」

「そんな心配はしていない! そんなことよりっ……」

『一体何をしている!?』


 怒りに満ちた竜の声が聞こえて、バッとアレクシスがそちらを見た。

 口元から炎を漏らし、こちらを睨みつける竜がそこにいて、アレクシスが息を呑む。

 しかし、すぐに聖剣を握りしめると、意識を切り替えて聖剣を竜に向けた。


「出たな、悪竜……!」

『……ふん。先ほどのはそこの不快な男の仕業か……! いいだろう……聖剣の主の血肉を喰らい、貴様も咬み殺してやるわ!』


 低い声で竜が言い、咆哮とともに戦闘が開始した。

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