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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

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加護と友達として

 アレクシスに加護を与えると口にしたリーシュデルトが、集まる視線に少し緊張しながら説明を始めた。


『加護というのは……えっと、要するに……』


 始めたのだが、リーシュデルトも加護を与えるのは初めてのため、説明に詰まってしまった。

 見かねたヴェルディーゼがすかさず咳払いをして視線を集め、簡単に加護について説明する。


「そこまで大きな効力があるわけではないけど……力の一部を分け与えるってことだよ。リィの場合はとんでもない硬さの結界辺りかな」

『お、大きな効力があるわけではないのですよね……?』

「リィの場合はどうだろうね。元があれだから、かなり頑丈でもおかしくないと思うけど」

『か、過大評価です……恐縮です。……そのっ、アレクシスさんは……責めるつもりはありませんが、少々力不足であることは、わたしの目から見ても……事実です。ですから、恐ろしい経験をすることになってしまうとは思いますが……戦いに参加したいのでしたら、わたしの加護を受けて、あちら側の攻撃を気にせずに戦っていただきたいな……と、思います……ど、どうでしょうか……?』


 恐る恐る、といった様子で窺うようにアレクシスを見るリーシュデルト。

 アレクシスはそんなリーシュデルトを見返して、ゆっくりと目を閉じた。

 そして、数秒してから目を開くと、ネリルとラーニャを見て、最後にリーシュデルトへと視線を移して微笑む。


「光栄です。謹んでお受けいたします」

『よ、良かった……ヴェルディーゼさん、受けないようなら肉壁になってもらうしかないとか、とても不穏なことを仰っていますから……』

「ネリルが後衛だから、盾はいるでしょ? ユリ以外は生死なんてどうでもいいし……」

「主様!?」


 はっきりとどうでもいいと言うヴェルディーゼにユリが目を剥いた。

 そして、メルールから離れてヴェルディーゼにひしっと抱きつき、必死になって訴える。


「主様、私は誰か一人でも死んだら……ッ、す、凄く悲しいですから! だから囮作戦とか、肉壁で突破するとか、とにかくダメですからね!」

「……そっか。ならしょうがないから、僕も並行して補佐くらいはしようかな。やらないといけないことはあるけど……まぁ、大した相手じゃないでしょ」


 ヴェルディーゼがそう言ってぽんとユリの頭を撫でた。

 誰か一人でも死んだら、という自分の発言でリューフィスが死んだ時の光景や感情を思い出してしまい、ユリがぷるぷると震えて涙目になり始めたのでメルールも後ろからユリを抱き締めてその頭を撫でる。

 ユリはなんとか自分の感情を落ち着かせながらメルールを見て、気まずそうに尋ねた。


「……その……リューちゃんのこと、メルちゃんは……」

「知ってるよ。死んだことも……裏切者だってことも。死んだことは、少し前に先生から聞かされてびっくりしたけど」

「……その言い方って……メルちゃん、リューちゃんが裏切者だって、気付いていたんですか? ……いえ、そうですよね。今思えば、三人一緒の授業の時、頑なに真ん中に座って私とリューちゃんを隣り合わせにしないようにしていましたし……」

「うん。私のことも、嫌いだったとは思うんだけど……ユリへの敵意が凄かったから」

「……じゃあ、メルちゃんは……リューちゃんが、死んで。……どう、思いましたか……?」


 怯えるような顔で、それでもユリがそう口にすると、メルールが黙り込んだ。

 そして、数秒ほど迷うように視線を巡らせて、言いづらそうに微笑む。

 それにユリが少しだけ顔色を悪くすれば、メルールは息を吐き出してユリの問いに答えた。


「ユリと同じくらい悲しんだか……って言われたら、絶対にそんなことはないと思う。裏切者だってわかってたのに、私にはそんなに悲しめない」

「……」

「だけど、全く悲しんでないわけじゃないよ。……私……ユリは気付いてないのかもって、守ろうとして……最初に気付いた時は、ユリと一緒にリューから距離を取ろうって思ってたんだ。でも、それにしてはユリの表情がおかしくて……わかっててやってるんだって、気付いた」

「……それは、はい。だいぶ早い段階から、私は気付いていたと思います」


 肯定するユリに頷き、メルールが遠くを見た。

 思い出すように目を細めながら、懐かしそうに。


「私ね……よくわからなかったんだ。自分が危ない目に遭うかもしれないのに、なんでそんなことをするんだろうって。……それで、ユリを見てて……気付いたの。純粋に、ただ友達としてリューのことを想っているからだって。それから、私も……友達として、リューと接するようになった。私には、警戒を全部捨てるなんてことはできなかったけど……リューと遊ぶのも、本当に楽しかったんだ。……だから、悲しかったよ。ユリほど悲しめないけど、それでも」

「……ありがとうございます。私があんな風になっちゃったから、そこまで丁寧に話してくれたんですよね……ごめんなさい」

「別にいいのに。……あ、先生、すぐ隣で長々とごめんなさい! うるさくなかったですか?」

「……それは、いいけど……距離が近くない?」

「嫉妬しないでください! 私とメルちゃんは同性ですよ、同性!」


 距離の近さをヴェルディーゼが少し嫌そうに指摘すると、ユリがわーわーと騒いだ。

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