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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

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ヴェルディーゼの目的

 頷きを返し、自分の話に耳を傾けてくれる面々を一人ずつ眺め、リーシュデルトが言葉を探すように視線を彷徨わせる。

 そして、ゆっくりと息を吸うと、話を始めた。


『先ず……お二人が色々なことを偽ってここにいらっしゃるのは、わたしからヴェルディーゼさんにここに来ていただくようお願いをしたからです。あ、でも、入学や教師就任の手順に関しましては、正規のものですよ。……こほんっ、無駄話でしたね。ごめんなさい……ええと、そのお願いというのが……この世界の滅亡を防ぐ手助け、というものです。ただ、事情がありまして……直接竜を討伐する、などということはヴェルディーゼさんにはできません。なので、みなさまへの働きかけなどをヴェルディーゼさんにはお願いしていたんです』


 リーシュデルトがそこで言葉を区切り、ユリを見た。

 今までの説明にはユリは一切登場しておらず、ユリはまだ疑われている。

 ただ、リーシュデルトにとってもユリは初対面の存在で、今までヴェルディーゼから話を聞いていただけだった。

 なので、ユリがどういう存在なのかもリーシュデルトは知らず、言葉を選んでいる最中なのだろう。


『ユリさんは……ヴェルディーゼさんの従者、とでも言いましょうか。その呼び方からもわかる通り、ユリさんはヴェルディーゼさんに付き従っておられるんです。…………あと、恋仲だそうです』

「あ、主様、主様、リィ様に圧掛けちゃダメですよ。さっき自分で伝えたんだからもういいじゃないですか……」

「第三者からも言わせないと」

「無理矢理言わせたら意味ないんですよそれ。第三者がポロッと言うから証明になるんですよ。……一概には言えないけど。あと別に証言とかいりませんよね……?」


 リーシュデルトに圧を掛けて恋仲だと証言をさせたヴェルディーゼにユリが小声で言った。

 どうしてもみんなに恋仲だと理解させたいらしく、ヴェルディーゼは無言で笑みを浮かべて誤魔化すばかりだが。


『……んんっ。わたしからの説明は以上です。わたしにできるのは、お二人をここに招いた張本人として、この世界の創世神として、お二人は決して危険なお方ではないと保証することだけです。……それから……ラーニャさん。心より、あなたに謝罪申し上げます』

「……えっ? えっと……? 私、幸せに生活してるよ……?」

『それは良いことですが、そうではなく……。……わたしは軽い気持ちで、あなたをここに転生させました。しかしその結果、歪みが生じてしまい……世界を破滅に追い込むことになりました。これを伝えるかどうかは、とても悩みましたが……あの竜は、そのことを理解しているでしょうから。わたしから伝えたかったのです。そして、どうか自分を責めないでください、ラーニャさん。悪いのは、全部わたしだから……その尻拭いすら、わたしは一人では……』


 リーシュデルトがそう言って俯くと、ラーニャが近寄ってしゃがみ込み、視線を合わせた。

 そして、ゆっくりと首を横に振って、落ち着いた声を出す。


「あのね、神様。私は、あなたには凄く感謝してるよ。あなたのお陰で、私はみんなと出会えて、楽しく生活できてるから。だから、神様もそんな苦しそうな顔をしないで、自分を責めすぎないで」

『……ら、ラーニャさん……ごめんなさい、みっともない姿を見せましたね。とにかく……わたしにできるのはここまでです』


 リーシュデルトがそう言い、ヴェルディーゼを見た。

 その視線を受けたヴェルディーゼは頷き、アレクシスとネリルを見る。

 ネリルは最初よりも戸惑いの薄れた優しい表情で、不安そうな顔をするユリを見つめていて。

 アレクシスは、その疑念を薄れさせはすれども、その疑いは晴れていなかった。


「あなたが創世神なのは、事実なんでしょう。しかし……あなたが嘘を吐いていない証拠は、どこにもない」

『……わたしも、ヴェルディーゼさんにはそう言ったんですよ。わたしの民であるみなさまは本能でわたしが創世神であると理解できますが、その発言を保証するものではないと。ヴェルディーゼさんも、承知の上のようでした。……ただ、その意図に関しては、わたしには……ヴェルディーゼさん、今ここでなら、説明してくださいますか? ヴェルディーゼさんは、その時になったら説明すると……』

「ああ、言ったね。結論から言えば、時間稼ぎがしたかった……かな。僕にとって大切なのはユリで、他者の疑念なんてどうでもいいから。その方が動きやすいから、多少疑念が薄れるようリィに説明をするようお願いはしたけど、僕にとっては時間稼ぎこそが真の目的だよ」


 ヴェルディーゼがそう言って微笑み、そっとユリから離れた。

 戸惑うユリがヴェルディーゼを見上げた直後、バンッと扉が開いて人影が飛び込んでくる。


「わぶっ……も、もしかして、メルちゃ――」

「会いたかったよ〜〜!! も〜忙しくて忙しくて、ユリに手紙を書く暇もないんだから!」

「……め、メルちゃん。離れた方が……私は今、疑われてるので……と、とりあえず、一旦……」

「知ってるよ! 先生が全部説明してくれたもん! それで、ユリが心細くなっちゃうだろうからって、なるべく早く着けるように色々と手配してくれたんだ!」

「……あ、あるじさっ……せっ、せんせっ……!!?」

「あ、私もう知ってるから、先生呼びじゃなくても大丈夫だよ?」

「……主様ぁ!!?」


 色々と先回りしてユリの不安を解消しようとしていたらしいヴェルディーゼに、ユリがメルールに抱きつかれながらただただ叫んだ。

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