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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

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リーシュデルト

 様々な疑念はありながらも、早くネリルの目を覚まさせるべきなのは確かなので、アレクシスが二人に警戒するような眼差しを向けながらもネリルに魔女の核を与えた。

 すると、ネリルの表情がふっと柔らかくなり、ゆっくりとその瞳が開かれる。


「……ネリル。大丈夫か? 身体の調子は……」

「平気。私のためにありがとう、アレク。そんなに怪我をして……今すぐ治癒を……」

「だ、ダメです! ネリル先輩っ……今は……。……っ」


 咄嗟にユリが叫んで止めたものの、どんな顔をすればいいのかわからずすぐに俯いてしまった。

 そして、そっとヴェルディーゼに顔を押し付けて見えないようにする。


「……たぶん、あなたがしたんだよね? ヴェルディーゼ、先生。ついさっき……ここの景色が、見えてた。音も、ちゃんと……」

「状況説明が面倒だったからね。手順に従わずに起こすほど干渉するわけにはいかないけど、これくらいなら。……それで、君はどう思う? ユリを疑うのかな」

「ぁ、主様……っ」


 強張った顔をしながらユリがヴェルディーゼを見上げてその袖を引いた。

 怖がっているユリの頭を撫でて落ち着かせつつ、ヴェルディーゼはネリルに返答を促す。

 ネリルは少し考えてから全員の顔を見て、答えた。


「ユリちゃんのことは疑ってないよ。でも、あなたのことは疑ってる。あなたは一体なんなの?」

「うーん……ユリの恋人?」

「ちょっ……!? きゅ、きゅきゅきゅ急になに言って……!」

「小動物の鳴き声みたいだね。……事実でしょ? それとも、そう思ってたのは僕だけだった?」

「そんなことはないですけどっ。ないですけど、そうじゃなくてぇ……っ」


 耳まで真っ赤になってユリが顔を覆い、そのまま固まってしまった。

 先ほどのビクビクしている姿よりは断然マシになったので、ヴェルディーゼが満足して仕切り直そうと咳払いをする。

 が、唐突な恋人発言に周囲は呆気に取られていたので、あまり仕切り直せてはいなさそうだった。


「…………冗談はさておき。事実ではあるけど」

「わざわざ言わなくていいですからぁっ! と、とと、とにかく、急にこんなことし始めた理由を私にも説明してください! こんなの聞いてません! っていうか主様ならネリル先輩のこと起こせたんですか!? じゃあなんで教えてくれなかったんですか!? ダメなら説明してくれればたぶん無理は言いませんでしたよ!? 最終手段はあるって安心できましたよ!!?」

「耳元で叫ばないで、今から説明するから……んんっ。じゃあえーと……リィ、説明よろしく」

『そ……そこでわたしに交代してしまうのですか……? わたしのことくらい説明してくれてもいいではないですか……』

「あっ、神様」


 ふわっ、と急に半透明の幼い少女が現れ、ラーニャがぼそりと呟いた。

 彼女がヴェルディーゼの言うこの世界の創世神、リィで、ラーニャをこの世界に送った神らしい。

 ユリもその姿は初めて見るので、何やらヴェルディーゼが少し気にかけているらしいリィを観察する。

 長い金髪を二つの三つ編みにしていて、瞳は綺麗な翡翠色。

 とても可愛い外見をしているので、ユリがすっとヴェルディーゼに視線を移した。

 首を傾げて見つめ返され、ユリがへにゃっとはにかんだ。


『はじめまして、わたしはこの世界を創った神で、リーシュデルトと申します。長いので、どうぞリィとお呼びください。最高位……んんっ、ヴェル、ディーゼ、さ……んに、お願いをいたしまして……今は、わたしの姿を幻影として映し出してもらっています。わたしが本物であることは、そこのラーニャさんが証言できるかと思います。……そう、ですよね……?』

「う、うん。アレク、ネリル姉様も……あの人は、私にあの転移の力をくれた人なんだ。だから、疑わなくて大丈夫!」

「ああ……そうなんだ。なら、私は信じるけど……アレクは疑い深いから、まだちょっと疑ってるかな?」

「……いや……なんとなくわかるから、あまり疑ってはいないよ」

『あっ……みなさんは、わたしの民ですから。本能的にわかると思います……』


 おどおどと落ち着かなそうに視線を彷徨わせながら、リーシュデルトが答えた。

 そして、ユリとヴェルディーゼを見やると、ヴェルディーゼからは視線を外してユリだけをじっと見つめ、遠慮がちに微笑む。


『はじめまして、ユリさん。ヴェルディーゼさっ……ん、から、お話をお伺いして……ずっと、お会いしたいと思っていたんです』

「へ……あ、は、はいっ。私もお会いしたいと思ってました! お話もしたくて! ……おもに、主様との関係について」


 ユリが目を逸らしながら低い声で呟くと、リーシュデルトはびくりと震えてヴェルディーゼを見た。

 自分のことをどう説明したのか、と聞きたげなリーシュデルトにヴェルディーゼは微笑み、そのまま沈黙する。

 答える気がなさそうなので、とりあえず後から弁明することにしてリーシュデルトがネリルたちへと視線を移した。


『わたしから、伝えたいのは……先ず、お二人は怪しい人物ではないということです。……わたしのお話、聞いていただけますか?』


 ゆっくりとリーシュデルトが首を傾げると、ネリルたちが頷いた。

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