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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

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ガン見

 メルールの視線が、アレクシスとネリルからユリの方へと流れる。

 ユリはまだメルールにくっつき、幸せそうに頬を緩めていた。


「……えっと……ユリ?」

「ふぁい」

「結局なんだったの? それに、なんでそんなにくっついて……?」


 メルールがそう言って首を傾げると、ぴたりとユリが固まった。

 そして、少し経ってから遠い目をすると、ぐでりっと更にメルールへ体重を預けながら答える。


「ネリル先輩に声を掛けられたので、話そうと思ったら隣に王子殿下がいて」

「まぁ、うん。びっくりするよね。それで……?」

「パニックになったんですけど、なんとか落ち着いて自己紹介とかして」

「うん」

「そしたら、ルシオン様経由やら直接見たやらで私の成績……というか、試験の順位見られてて。興味持たれて……」

「……あー……」

「将来雇いたいなぁって目で見られたりして……すごく、すっごく、疲れました」


 ユリがそう締めると、メルールがその頭に手を伸ばして撫でた。

 メルールもメルールで唐突すぎて何がなんだかわかっていなかったのだが、説明を聞いてその心中は察したのだろう。

 頭を撫でることで少しでも疲れを癒やしてやりつつ、ふぅと息を吐く。


「先ずは、兄様がごめん。悪気は無いと思うんだけど、殿下に伝えられるとただの世間話だったじゃ済まないもんね……それに、ユリが凄く優秀だって話なんか……」

「うぅ。目立ちたくないのにぃ……」

「よしよし。とりあえず、兄様にはこれ以上ユリのことを話さないように釘を刺しておくから。領地の方でも優秀な女の子がいる、なんて話ばら撒かれたら恥ずかしいもんね。……手遅れだったら、ごめんね」

「ぴぃ!? な、そっ、なっ、なんて怖いことを言うんですか!? そっそそっそんなのあるわけが……」

「そう言い切れる?」

「言い切れませんけどぉ! うぅ、うぅぅ〜……嫌だ、嫌だぁ。もうだめだぁ……おしまいだぁ……」

「あはは……ほら、リューのことを迎えに行こう? それのことは私がどうにかしておくから、ユリはもう忘れていいよ」

「私の救世主ぅぅ……」


 ユリがメルールにしがみつき、リューフィスと合流して寮に戻った。

 珍しくヴェルディーゼがいなかったので、ユリがさっさと着替えてしまおうと堅苦しい制服を脱いでいく。

 着替えるのも面倒ではあるのだが、制服ではあまりくつろげないので。


「ただいま――あ、ごめん」

「ぴゃぁ!? あっあるじさ、あっ、あっ!? へ、変態っ!?」

「ご、ごめん。わざとじゃないから変態はやめて……フィレジアじゃあるまいし……」

「誰ですか!? ……やっ、あっ、見ないで……」


 着替えの最中に偶然ヴェルディーゼが帰ってきてしまい、がっつり下着姿を見られたユリが真っ赤になって蹲った。

 ユリがパニックになって叫んだりヴェルディーゼの口から飛び出した誰かの名前に反応してまた下着姿を見られたりしつつ、服で何とか自分の肌を隠す。


「……」

「……何ガン見してるんですかぁ! いいから一旦向こう行ってください! こっち見ないで! 着替えられないじゃないですか!!」

「今更見られて困るものも無いだろうに。……無いよね?」

「無くても恥ずかしいもんは恥ずかしいんですが!」

「ならいいけど。はい、早く着替えちゃって」

「距離取ってガン見されたところでさっきと何も変わってませんよ!? 恥ずかしいんだからふざけ倒してないでさっさと後ろ向いてください二人きりの時の呼び名セクハラ野郎に変えますよ!?」


 すっとヴェルディーゼが視線を逸らした。

 セクハラ野郎は嫌だったらしい。

 ようやく着替えられるようになったので、ユリがその背中を睨みつつ急いで服を着る。

 変なところが無いか軽く確認してからユリが息を吐き、ヴェルディーゼの方へと近付いていく。


「終わりましたよ、主様。もう大丈夫です」

「あ、うん。さっきはごめ……可愛いね、その服どうしたの? 友達と出かけたときにでも買った?」

「謝罪よりも服を褒めることを優先しないでください。せめて言い切ってからにしてくれませんか……いや、嬉しいですけど」

「僕が褒めてるのは服というよりその服を着てる可愛いユリなんだけど、まぁいいや。さっきはごめんね、凄く今更なのに恥ずかしがるユリが可愛くて……」

「前半に余計な言葉つけなくてもいいんですよ。ところでフィレジアって誰ですか。女の人ですか、男の人ですか。浮気ですか、許しません……」

「師匠だよ。だから目から光消さないで」

「主様のお師匠様! ……えっ、お師匠様変態なんですか?」


 ユリが衝撃を受けたように固まった。

 それにヴェルディーゼがどう答えたものかと困ったように微笑み、その頭を撫でつつゆっくりと首を横に振る。


「僕は変態でも間違ってはないと思ってるからフィレジアに悪態付きたい時とかには呼ぶけど……僕以外は言わないね。まぁ、うん……フィレジア以上のがいるのは確かだけどね」

「へ、変態お師匠様……?? ……こ、こほんっ! あの、その……さっきはすみません。主様も来るって知ってるのに隠しもせずに着替えて、その癖見られたら怒るっていうのは……ちょっと理不尽でしたよね」

「そんなことよりも恋人とはいえガッツリ見た僕の方が悪いと思う。ごめんね」

「……いや、……まぁ、うーん」

「ほら、蒸し返すと恥ずかしくなってくるでしょ? ……また妙な気配がする。報告してくれるね?」

「妙な気配ってなにぃ……??」

「僕以外の男と話したんだよね。誰、誰と話したの。ねぇ」

「あっはいわかりました」


 ユリがヴェルディーゼから少し距離を取りつつそう言い、頬を引きつらせた。

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