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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
ようこそ、神の世界へ

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メイド服と考え事

 数十分後。

 ユリがぱたぱたと足音を立ててヴェルディーゼの部屋の扉を開いた。


「主様っ!」

「ああ、おかえり。随分と早いお帰りだね――あれ、前髪切ったの? 目が良く見えて可愛いね。さっきまでのも控えめな感じで可愛いとは思うけど」

「前髪の長さもメンタルに関わると思いまして! 思い切って短くしてみました!! 明るくなれる気がしたので!! というよりは素が出し切れていなかっただけですが!」

「……うん、しっかり効果があったようで何より」


 やたらとテンションの高いユリを見ながらヴェルディーゼがそう言い、ゆっくりとその頭を撫でた。

 そして、ユリの手元に視線を向けると首を傾げる。


「手に持ってるのは? ……メイド服?」

「はい! 着てください!」

「……ん?」

「着てください! さぁ!」

「……僕が?」

「はいそうです!」

「……何で?」

「絶対似合いますから! だから、ねっ? 着ましょうよぉ、主様〜〜」

「嫌だ。着ないなら返してきて」

「いーやーでーすー! 着てください〜、可愛い可愛い恋人のお願いですよー」

「恋人になって初めてのお願いがそれはもっと嫌だよ」


 断固として拒否するヴェルディーゼにユリがむっと唇を尖らせた。

 そして、抗議をするようにぽかぽかとヴェルディーゼの背中を叩く。


「うわーんうわーん、主様の意地悪ぅぅ……見たいのに……」

「……似合わないと思うよ」

「絶対似合います! そりゃ、その……服の上からじゃよくわからなくても、筋肉はかなりありますけど……細身ですから! 似合います!」

「僕じゃ見苦しいだけだよ。ユリが着たらどうかな」

「えー……うーん、コスプレっぽくなると思いますけど……」

「それはそれでいいよ。着てくれる?」

「……うぅ。恥ずかしい、ですけど……着てほしいと言った手前……うぅ〜」

「あははっ、そんなこと気にしなくてもいいよ。別に恥ずかしいから断ってるわけじゃないし……いや、まぁ、恥ずかしいけどね」


 ヴェルディーゼがそう笑ってユリの頭を撫でた。

 何を言っても着てくれないことがわかったのか、ユリがしょんぼりと肩を落としながらメイド服を戻しに向かう。

 そしてヴェルディーゼが仕事をしながらユリが帰ってくるのを待つと、ユリはまた新たな衣服を手にしていた。


「……それは?」

「服です」

「そうじゃなくて……」

「……主様の」

「うん。返してこようね。僕はこのままでいいんだよ、着慣れてるから」

「うぐうぅ……き、着慣れてるとかどうでもいいんですよ私からしたらぁ! 見たいだけなんですから!! 普通の服持ってきたんだからいいじゃないですかー! 一旦! 見せてくれるだけでいいんです!」

「嫌だよ恥ずかしい」

「うう……絶対すっごくすっごく似合うのに! じゃあもうあれですよ、ワンピース着せます!」

「じゃあ逃げるね、ばいばい」

「あ゛ーっ!?」


 ヴェルディーゼが笑顔で手を振って部屋を出た。

 慌ててユリが追いかけると、ヴェルディーゼは笑顔のまま後ろ歩きでユリから逃げていく。


「ま、ま、待ってください……っ、ぅう……な、なんで、後ろ歩きなのに……追いつけないん、ですか……!? 私、走ってるのに……!」

「どうしてだろうねぇ?」

「含みのある言い方した! 絶対なんかやってますよね!? ……あっ、うきゃあっ!?」


 ユリが何も無い場所で転んだ。

 床にぶつかる前にヴェルディーゼがユリを回収し、そのまま服に触れる。

 すると服は消え、ヴェルディーゼが部屋へと足を進め始めた。


「……結局、何やってたんですかぁ……」

「うん? ああ……ここは僕の城だからね」

「答えになってないと思うんですけど……」

「神の城だよ。変幻自在、通路くらいいくらでも捻じ曲げれる。だから、僕の通った道を捻じ曲げて、わからないようにしながら距離を保って歩いてただけ」

「……物理的に通路が伸びてたんですか!?」

「うん。上手く調整したから、後ろを振り返らない限りは気付けないんじゃないかな」

「……うへぇ……どうなってるんですか本当に……」

「まぁ、あれやると一時的とはいえ城の外観が凄く悪くなるんだけどね。通路の部分だけ突き出るから……」

「へー……それはちょっと見たいかもしれませんね」

「ふふ……絶対外には出さないよ」

「……ん?」


 笑顔のまま言うヴェルディーゼをユリがきょとんとして見つめた。

 そして、若干顔色を悪くしつつ言う。


「あの……雰囲気が怖くなった気がするんですが……」

「気のせいだよ」

「あの、でも腕に力が」

「気のせいだよ」

「ちょっ痛っ、いだだだだだぁ!? 主様!?」

「今のは冗談。大丈夫だよ、怪我するほど強くはやってないから」

「怪我が無くても暴力は駄目では……!? というか力強いですね!」

「まぁそうだね。神の世界は完全実力主義。力こそが全てだからね。……一概にそうとも言えないけど。理性的な神もいるし、狡賢く、上手く力がある存在を利用する神もいる……まぁ、どちらにせよ力が無いと舐められるんだけど」

「大変そうですね。たぶん、私は無縁でしょうけど……」

「……」

「あれ? 主様?」


 ユリが不思議そうに首を傾げた。

 しかしそれでもヴェルディーゼは返事を返さず、ユリが更に頭上に疑問符を浮かべる。

 何やら考え事をしている様子なので、ユリがそれ以上は邪魔をしないようにと黙り込んで大人しく運ばれていった。

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