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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

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因果と思考制限

 それから、数十分ほど撫で回されたりとヴェルディーゼに好き放題されたユリは、乱れに乱れた髪を整えながら考え事をしていた。

 ふわふわと浮つく、纏まらない頭で。

 ユリはこれは何かしら干渉されたなぁ、なんてことをぼんやりと思いつつ、小さく息を吐く。


「……やっぱり主様、怪しい気がするんですよね……」

「……僕が怪しい?」

「怪しいですよ。私は別に、主様が怪しくても信じてるのでいいんですけど……でも、何かはしてるよなぁ、って」

「ふぅん」

「例えば……私の行動を誘導してる、とか? 根拠と言えるほどのものはないですけど、私――」


 ヴェルディーゼがユリの頭に手を伸ばした。

 髪を整えるのを手伝うように、その髪を梳いて微笑む。

 纏まりかけていたユリの思考が、ばらばらと崩れてどこかへ行ってしまった。

 何かを言おうとして半開きになった口がゆっくりと閉ざされて、ユリがその瞼を下ろす。

 少ししてから瞼を開いて、ユリが言った。


「主様。全部全部隠されるのは、嫌ですよ」

「うん、知ってる」

「全部を話せとは言いません。だから、何か少しくらい、共有してくれてもいいじゃないですか」

「……それは、ダメ。大丈夫だよ、全部上手く行くから。ちゃんと、そうなるように仕向けてる。……これも、その一環。だから、ごめんね」

「……本当、に?」

「本当だよ。安心して。伝えられるのはこれくらいだけど……嘘じゃないから」


 ユリが小さく頷き、その胸板に顔を埋めた。

 何も活躍できていないから、役立たずなんじゃないかと不安になっているのだろうとヴェルディーゼが小さく苦笑いする。

 とはいえ、現状ユリにできることがほとんどないのも事実。

 どれだけ不安がっていても、役割を捻り出すのは難しかった。

 それをするには、もう、手回しをし過ぎてしまっているから。

 既に、捩じ込める場所が無い。


「……あの、主様」

「なに?」

「ネリル先輩も、ラーニャ先輩も、リューちゃんも、メルちゃんも……それに、テーチャ先輩も。他の友達も、先輩も……先生だって。……誰も、危ない目には……」

「危ない目には遭うだろうね。これはゲームを元にした世界で、今はゲームのシナリオが着実に進んでる。……恋愛してるかって言われたら、あんまりしてないけど……とにかく。シナリオそのもので、学園自体が危険に晒されてる。誰一人危険な目にも遭わせないっていうのは、不可能だよ」

「……ぅぐ」

「だけど、まぁ……死者は出さないよ。そこは安心して。それとなく学園に注意は促してるしね。そこから国の方に注意も行くだろうし……原作をそのまま同じ状況でなぞるつもりはない」


 こくりとユリが頷き、目を伏せた。

 死者は出さない、ということは、誰一人怪我もなく、というのはやはり無理なのだろうと思いながら。

 ユリとて無理だろうとは思っていたが、それでも希望は捨てたくなかった。

 ヴェルディーゼならあるいは、とも思っていたのだが。


「……無理なものは無理、ですよね。うぅ……なら、やっぱり……前に言っていたように、戦争だって……」

「戦争は……どうだろうね、防げるかな。無理そうなら防ぐのは諦めるけど、規模は絶対に原作よりも小さくするから」

「……改めて考えると、原作、割と酷い状況まで追い込まれてるんですね……?」

「そうだね。だからこそ、ある程度酷い状況になるのは既定路線になってる。改めて創世神に話を聞いてみたんだけど、世界にゲームを直接ぶち込む感じで作ったから全てのイベントを回避するのは無理だって。大きなイベントは、規模を小さくするだけなら可能だけど……そういう因果として定まっちゃってるから、無理矢理捻じ曲げると世界の核に影響が出かねない。あるいは、別の形で因果が収束するかもしれないね」

「いんががしゅうそく」

「……思考制限してるから難しい話するとキャパシティオーバー起こすんだった」


 幼子のような舌っ足らずの声でヴェルディーゼの言葉を繰り返すのみになってしまったユリを見てぼそりとヴェルディーゼが呟いた。

 そして、深い溜息を吐くとまるでぬいぐるみのようにユリを抱き締め、しばらくの間黙り込む。


「……ふぅ〜。全く、時々鋭すぎて困るなぁ。お陰でこんな対処をする羽目になって……はぁ。思考制限の影響下にあっても怪しいなんて言われるなんてなぁ……びっくりしたぁ。……でも、これだと制限し過ぎてるから、後でもう少し緩めないと。条件付けをもう少ししっかり考えて……適宜発動する感じなら、周りからも怪しまれないかな」

「せいげん……てきぎぃ……」

「……おかしいな、そろそろこれ治るはずなんだけど。おーい……ユリ〜?」

「……ふぁいっ? ……あ、あれ……? 私……? さっきまで、主様の話を……うっ、頭が」


 完全に何も考えていない顔で言葉や音を真似する人形のようになっていたユリがハッと正気を取り戻した。

 どうやらさきほどまでの記憶はないらしく、ヴェルディーゼを見上げては頻りに首を傾げている。


「……大丈夫?」

「あ、頭が痛くて……うぅ、なんだろう……」

「おいで、治すから」

「はぁい……」


 ヴェルディーゼがしれっと魔法で思考制限を掛け直し、頭痛も治して微笑んだ。、

因果について調べたらよくわからなくなってきてしまったので、あの辺りは雰囲気で書いています。

哲学だとうんぬんかんぬんとか、量子力学だとどうのこうのとか……。

なので、読者の皆様もふわっと解釈して受け止めてください。

そんなに難しい話はしていないと思いますが……使い方が合っているのかどうかよくわからないので、間違っていた場合は優しく指摘してくださると嬉しいです。


そういえばいつの間にか百話を超えていましたね、おめでたいです。

この次の章が書きたくて始めたまであるので、その直前であるこの章は少し雑になっているかもしれませんが……頑張って終わらせるので待っていてください。

雑だろうと綺麗に纏まるように頑張りたい。

ただ、次の章に熱が入りすぎて雑プロットしかないのです。


それと、総合評価の方も百が目前となってきましたね。

皆様、応援ありがとうございます。

評価やブクマ、感想やいいね(反応?)、大変励みになりますので、気が向いた方はしてくださると幸いです。


特になんでもない回で長々と語ることとなってしまいましたので、そろそろ締めます。


これからもどうかユリちゃんとヴェルディーゼの行く末を楽しんで見守っていただければと思います。

完結までしっかり書いていくので、飽きるまでは読んでくださいね!

なんならたぶん完結後も続けて書いていくので!

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