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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
ようこそ、神の世界へ

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何も起きないはずがなく

 翌朝。

 ヴェルディーゼのベッドの上で、ユリが顔を覆って悶絶していた。


「男女2人きり……同じベッド……何も起きないはずがなくッ……! ああああああっ……うううああああ……密室じゃないのに起きちゃった……うぅ……」

「……んん……ユリ……」

「ひきゃっ……あ、ああ……う……」


 ヴェルディーゼが寝惚けたように目を閉じたままユリを掴んで引き寄せると、ユリが悲鳴を上げて蹲った。

 そのまま唸り声を上げ、ユリが小さく呟く。


「……羞恥でおかしくなっちゃう……顔見れない……」

「んー……」

「ひびあぎゃががが……」

「……ッ……ふ……悲鳴すらおかしくなっちゃった……壊れた機械みたいだね。おはよう」

「……〜〜〜〜ッ……うー……あー、その……あー……あ、朝……強いん、ですね……?」

「いや、別に。ユリより前に起きてただけだよ。おはよう」

「え? ……ま、待ってください全部聞いてたんですか!?」

「うん。おはよう」

「さっきからなんで語尾に……あっあっあっおっオハヨウゴザイマスッ」

「あはは、だいぶ様子がおかしいね」


 ヴェルディーゼがそう言いながら身体を起こし、ユリを膝の上に乗せた。

 そして、首筋に指を添えながら言う。


「ひゃ、ひひっ……く、くすぐったいです」

「んー……精神は安定したかな。それにしても明るくなったね? よく笑ってる……」

「……し、指摘しないでください。恥ずかしいので……」

「あんなことをした後なのに恥ずかしいんだね? ふふっ」

「わぁああああーーー!! わっわたっ私! 部屋に! 戻りまへぶぁっ」


 ユリが焦って部屋から出ようとして何も無いところで躓き、顔面から床に突っ込んだ。

 ユリがそのままの状態でぷるぷると震える。


「可愛いね。……たぶん、落ち着いてるけどまだ1人になるのは抵抗があるんじゃないかな? ここで安心できるならここにいていいよ」

「……え? 神ですか?」

「うん。邪神だよ」

「……そっかあ……あれ、そういえばなんで私よりも私の心について把握してるんですか……?」

「オフにもできるけど、基本的に眷属が考えてることは筒抜けだよ。今は必要だから読心してる」

「……読心ができることは軽く聞いていましたけど……それで1人になるのは抵抗があるとかわかるんですか……?」

「うん。無意識下の深層心理とかまで読んでるから」

「え、こわ……こわ……い、けど……」

「けど?」

「……はぅ……」


 ユリが謎の鳴き声を発して自分の頬を包み込んだ。

 頬が赤く染まっている。


「……あの……着替えても、いい、ですか……」

「いいけど……部屋に戻るんだよね。……シーツ、ビリビリなままだけど……思い出したりしないかな?」

「……見ないようにします。今は……」

「わかった。そのままくつろいでもいいし、戻ってきてもいいからね」


 ヴェルディーゼがそう言うと、ユリがこくりと頷いて早歩きで部屋を出た。

 そして素早く自分の部屋に移動し、クローゼットにある自分の服に着替える。


「……ふぅ……あうう……昨日までは、昨日までは主様を見ても普通だったのに……! 好きすぎしんどい無理……吊り橋効果め……わかってても……駄目駄目わかってても好き……!! あんな風に救われたんだから惚れないわけないでしょもうッ!!」


 ユリが頭を抱えて叫び、ぶんぶんと頭を振った。

 しばらくして落ち着くと、ユリがチラリとベッドを見る。

 大きく破けたシーツがそこにあった。

 昨夜のことを思い出し、ユリが自分を抱きしめる。


「……駄目、だ。……駄目……見れない。……迷惑、かけちゃう……かも、しれないけど。……でも、怖い……戻ろう」


 ユリがそう言って急いでヴェルディーゼの部屋に戻った。

 するとヴェルディーゼはそうなることがわかっていたようで、すぐにユリを部屋に迎え入れると背中を優しく叩いて落ち着かせる。


「……大丈夫。傍にいれば、守れるよ」

「あ、主様……も、もう落ち着きました、ちょ、近……っ。わああ……」

「ん? 近い? ごめんね」

「……あ、あの」


 ヴェルディーゼが少し距離を取ると、ユリがそっとヴェルディーゼの服の裾を掴んだ。

 ぱちくりと目を瞬かせ、ヴェルディーゼが微笑む。


「どうしたの? ユリ」


 どくん、とユリの心臓が高鳴った。

 ユリが不安げに自分の胸元を掴み、ゆっくりと言う。


「あ、主様……」

「うん?」

「……好き、です。大好きです……」

「……」

「助けられ、たら……好きになっちゃって……目が離せなくて……その……」

「ふふっ」


 目を逸らしながらユリが必死に言葉を紡いでいると、ヴェルディーゼが小さく笑った。

 そして、どこか妖しい煌めきをその瞳に宿して言う。


「……初心(うぶ)で愛らしいね。昨夜もそうだけど」

「ああああああああ!? 知りません知りません知りません妙な雰囲気にしてきたのはそっちじゃないですかうわぁあああああああ!!!!」

「あはははっ。……なるほど、わざわざ告白してきたってことは……昨夜のは所々記憶が抜けてるみたいだね……羞恥のせいかな」

「へ? 記憶って」

「ああ、忘れて。……たぶん、また羞恥で潰れちゃうし」

「――? あ、れ……?」

「まぁ、とにかく。僕としても嬉しいから……ふふっ。晴れて恋人だね」

「……あっ……あっあっあっ……よ、よろしくお願いしますぅぅ……」

「うん。……ああ、僕、傍にいた方がいいよね? ちょっと仕事の書類を取ってこようと思うんだけど、それくらいなら一人でも大丈夫?」

「は、はい、少しだけなら……」


 ヴェルディーゼが頷き、部屋から去っていった。

 それを見届けて、ユリが呟く。


「……何か……忘れてるような……? 急に記憶が抜け落ちちゃったみたいな……うーん……? ……まぁ、いっか。……えへへへへ……あ、主様と。ふふ、ふひひひひ……昨日までは嫌悪感すらあったのに……吊り橋効果って凄いんだぁ。……拷問は、本当に……すっごく、辛かったし。……チョロすぎるんじゃないかって思ったけど、仕方無い部分も……あるのかな」

「感情に正当性を求める必要は無いと思うけど」

「わびゃああ!? お、音が! 音が無い……! 足音……!」

「ふふっ……からかいたくなる顔してたから。ああそれより、僕はしばらく仕事をするから好きに過ごしていいからね。もちろん、ユリが大丈夫なら部屋に戻っても、何をしてもいいよ。……ああ、衣装部屋で服を見るのもいいかもしれないね……」

「……服を見ます」

「わかった、行ってらっしゃい」

「はいっ」


 ユリがそう言い、再び部屋を出た。

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