表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/257

可愛いと念話

 あれから、更に数ヶ月後。

 ユリは屋敷で散々からかわれ、イチャついたヴェルディーゼとの生活を思い返してぽやーっとしつつ、入学式に参加していた。

 とはいえ、校長先生の長ったらしい話などに興味はないので、やはりユリの脳内はこれまでのヴェルディーゼとの生活で占められる。

 眠くなる話に誘われ、零れかけたあくびを噛み殺しつつユリは静かに入学式が終わるのを待った。

 そうして、ユリは入学式後の誘導に従って教室へと入る。


(なんか……すっごい見られてる?)


 ユリが眉を寄せてそんなことを考え、キョロキョロと周囲を見回した。

 見られている。

 クラスメイトたちに、それはもう見られている。

 何か制服に変なところでもあるのだろうかとユリが下を向いて制服を確認し、髪に触れておかしなところが無いか確かめる。

 別に何もおかしなことはなかった。

 そんなもの、あるはずがない。

 何故ならばその視線は、ユリの整った容姿に吸い寄せられているに過ぎないのだから。

 高校では親友であるゆうちゃんこと悠莉が威嚇をしていたし、そもそもユリは高校では暗い印象を持たれていた。

 おしゃれにもそこまで興味があったわけではないので、清潔感を保つよう意識していたくらいだった。

 しかし今はユリは恋をして、おしゃれにも気を使っている。

 というわけで、今のユリは高校時代よりも可愛いのである。


(……高校の時はこんなこと無かったのにぃ)


 何故視線が集まっているのかわからないが故にユリが怯えつつ、少し身体を小さくした。

 小動物みたいだったので、微妙に微笑ましげな視線がユリに突き刺さる。

 ちなみに、ユリは自分が可愛い部類に入ることは自覚している。

 自覚しているが、高校時代にはこんなこと一切無かったので、混乱しているのである。

 あと、視線が集まっているだけで〝私が可愛いからか!〟と納得できるほど容姿に自信があるわけでもない。

 というわけで、わけもわからずユリが内心震えていると、教室の扉が開いた。

 そして、大人の男性が中へと入ってくる。


「初めまして、と言っても試験で会った人もいるかな。このクラスの担任を務めるヴェルディーゼだよ。新任だから至らないところもあると思うけど、よろしく。さて早速だけど――」


 校長の話とは違い、ユリが一言一句聞き逃さないよう集中してヴェルディーゼの話を聞く。

 謎の視線に晒されていたせいで、ユリは内心で非常に荒ぶっていたのである。

 そんなユリにとって、ヴェルディーゼの声も姿も表情の移り変わりも、ヴェルディーゼの全てが特効薬。

 何一つとして聞き逃さないし、見逃さない。


「ふすーっ」


 何なら鼻息も荒かった。

 このままだと周囲に引かれて友達ができなくなりそうなので、ちらっとユリを一瞥したヴェルディーゼが遮音と認識を変える結界を張る。

 これで、周囲にはユリがお行儀よく座って話を聞いているようにしか見えない。

 ヴェルディーゼがこれからについて説明を行いつつ、自然な流れで歩き始めた。

 真っ直ぐとユリの方へ向かい、そっとその肩に触れ、更に教室を見回るように歩いていく。

 肩に触れた際に、ユリと念話を繋いだのだ。


『……ユリ……』

『あああああ主様主様主様主様っ! 聞いてください、凄く見られてたんですけど心当たりないですか!?』

『……昨夜の痕跡でもあったかもねぇ』

『え? 昨夜……って、あ、え、あ、きっ、あ、痕……っ、え、えっ……』

『嘘だよ。可愛いからじゃない?』


 認識阻害の結界が更に役立った。

 結界がユリの真っ赤な顔を隠し、周囲には真面目なユリの姿を見せる。


『か、可愛いからって……そんなわけないですよ。それなら、なんで高校時代には何も無かったのかって話になっちゃいますし……』

『可愛いからだと思うけど……。……チッ、僕のものに不埒な視線なんて向けやがって……あ、ごめん、なんか漏れた』

『ひぇ』

『いっそ閉じ込めて――んんっ、なんでもない。ちゃんと守ってあげるから大丈夫だよ』

『あ、あの、守ってくれるのは嬉しいんですけど、その手段の方がですね……心配でならないんですけど。ダメですよ、監禁とか、その……』

『大丈夫。プチッとするだけだから』

『擬音語で表現を柔らかくしようとしても無駄ですよ!?』


 プチッとしようとしているらしいヴェルディーゼに、ユリが頬の赤みすら消し飛ばして念話で叫んだ。

 そして、少ししてから結界の中でユリがむぎゅむぎゅと口元を動かす。

 可愛いやら僕のものやら、冷静になると照れる発言が多く含まれていたので、少し恥ずかしいのである。


『ユリに一目惚れしてるっぽいのは後で潰しっ……処理……あー、あー……どうにかしておくとして、ユリ』

『不穏なワードが多すぎる、という話は一旦脇に起きますか。なんです?』

『とりあえず、忙しくてもこれで毎日会えるし……まぁ、寮の部屋は把握してるから別に夜にでも会いに行くけど、とにかくなるべく一人にはしないから、安心して。休日は屋敷かどこかで待ち合わせして出かけよう』

『ぅ、はい……楽しみにしてます』

『じゃあ、そろそろ話も終わるから、念話切るね。もし寂しくなったり、何かあれば魔力を出してくれれば繋げるから』

『……はい』


 返事をすると念話は切られ、ほんの僅かにユリが肩を落とした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ