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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

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原作のストーリーと問題、戦争と限界

 完全に話が横に逸れていたことに気が付き、ヴェルディーゼが咳払いをした。

 そうして気を取り直すと、改めて話題を戻して創世神がこの世界が原作通りに進まなくなることを理解した上でここに呼んだという転生者についての話を始める。


「とにかく……その転生者が、ヒロイン……主人公? の、代わりみたいな立場になっちゃったんだよ。本来の……あー、主人公は別に死んでもいないのに」

「立場を奪われた……ってこと、ですか? ……悪いこと、なんですかね……そうでもない?」

「そうでもないね。いやまぁ、本来の主人公は攻略対象の一人と裏で婚約が決まってたりするけど……んんっ、別にその転生者は原作知識があったわけでもないし、ただ仲良くなった結果のこと。……ただ、致命的な問題が一つあるんだよ」


 指を立てて言うヴェルディーゼにユリが首を傾げた。

 主人公の立場を転生者に奪われた。

 主人公にその自覚があったわけでもなく、転生者にも悪意はないので、それ自体は悪いことではない。

 無い、が。


「そもそもの話。原作のストーリーは、主人公が……なんて言うのかな、攻略対象と一緒に世界を救うって話なんだよ。学園は知識の宝庫だから、狙われて主人公とかが巻き込まれたりするんだけど……それはともかく。学園には三年間通うんだけど、ゲームシステム的には一年目が恋愛メイン、二年目でキャラクターの育成、三年目で決戦、って感じなんだよ。騒動が起こり始めるのは二年目から、三年目からは戦争の規模になる」

「ひぇっ。……そ、それでその、それの何が問題なんです……?」

「主人公は聖女で、その力と聖剣の力を合わせないと最後の敵を倒せない。その上で、少しずつ現れてきてる不穏なものに転生者が怯えて、攻略対象に行かないでって訴えて、攻略対象はそれを受け入れようとしてる」

「……それって、その場合……世界は……?」

「滅ぶ」


 端的に告げられたその言葉に、ユリがガクブルと震える。

 今は少なくともユリの周囲では何も起きていないので、実感があるわけではない。

 だが、戦争が起きて世界が滅ぶというのは、クローフィ・ルリジオンでの汚染よりもずっと現実味があって、ユリが胸元でぎゅっと手を握り締める。

 世界の汚染なんてものは、ユリの目には見えない。

 汚染されてどうなるのか、実感することもなかったから、別に何も感じなかった。

 しかし、戦争は。


「戦争……」

「……まぁ、阻止もできればで構わないとは言われてるんだけどね」

「……え、……え? で、でも、世界が滅んじゃうんじゃ……?」

「うん。けど、クローフィ・ルリジオンと違って世界の核にとっては致命的じゃないから。汚染は世界の核、根幹に影響を与えるもの。対してこっちは、あくまでも表面に影響を与えるだけ。大事な部分には何の影響も無いんだよ。……阻止できるならもちろん、阻止した方がいいんだけど。でも、それができなかったところで、滅びるのは世界というよりも文明と生命。世界は生きてるから、再生そのものは可能なんだよ」


 阻止した方がいいことに変わりはないが、できなかったところで致命的ではない。

 それにユリが僅かに肩の力を抜き、ゆっくりと息を吐いた。

 戦争などと、安心できるはずもないが。


「……戦争なんて、まだ先のこと……なんですよね?」

「ん? うん。大丈夫、ユリだけは危険な目には遭わせないから。……今度こそ、絶対に」

「で、でも私……友達とかが巻き込まれたりしたら、突っ込んで行っちゃいますよ? 閉じ込められるとかは嫌ですからね?」

「閉じ込めたりはしないよ。ユリがそれを望むのなら、その友達ごとユリを守るだけ。……その相手がどうしても戦わないといけないなら、大怪我くらいまでは許容してもらうことになるけど」

「ひえぇ……嫌ですよぉ……友達が大怪我とか……」

「世界を救うために必要なら下手に守ることはできないけど、個人的な事情とかそんなものならちゃんと無視して守るから」

「個人的な事情をそんなものと切って捨てられるなんて、涙を禁じ得ないですね☆」


 ユリのテンションが唐突に壊れたので、ヴェルディーゼが驚きながらユリを抱き締めた。

 元気がないので読心したところ、暗い考えに支配されてしまっていたのである。

 友達が死んでしまったらどうしよう、という言葉とともに、乾いた笑みが飛び交う。

 明らかに正常ではないだろう。


「……限界、だった?」

「何がですか? 私は全然――」

「寂しくて、必死で、だから食事にも頓着しなくなって、量が多くて安いものを買った。そうでしょ。……ごめんね。そんなに、僕に依存してるなんて……まだ、ずっと先だと思ってたのに」


 ぼそりと、ヴェルディーゼがそんなことを呟いた。

 依存するのは、ずっと先だと思っていた。

 それでは、まるで。


「……依存することが、確定してたみたいに……言うんですね」

「話を逸らさないで……いや、大事な話か。……うん、そうだね。だって、ユリは大切な人を失うことになるから。……神に寿命は無い。クーレも、みんなみんな……いつかは、僕達を置いて死んでいくんだよ。……それを、今のユリは……誰かに縋らないと耐えられない」

「……ぅぅ。……わかって、ます。わかっています……でもぉ」

「大丈夫。ただの人間だったユリが、そんなことに耐えられるはずがない。だから、弱いなんて思わなくていいんだよ」

「……私は……いえ。……主様は、甘すぎます」


 少しだけ元気を取り戻して、ユリがゆるりと笑った。

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