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50話 ほろ苦い戦い

 ハグたんが敵プレイヤーを見事1人キルした同時刻。


 その現場での爆発音が届かない程に離れた森林地帯でも、既に戦いが繰り広げられていた。


「ほんげえっ! ハグたんの右腕ポジションのこのウチが〜」


 鉄製の鎖が右足に絡みついた状況に陥り、誰にも認められてない自称をしながら毒づくマサムネ。


 その劣勢である絵面に対し、鉄の鎖に繋げられた軽量草刈り鎌を頭上で旋回させているプレイヤーが1人。


「クラン『大三字』所属、

その二つ名は『死苦味(ビターエンド)』。

CCOで最もシブいカムイと評判の鎖鎌(くさりがま)のカムイで、お前の最期を看取ってやろう」

「あ? 聞いてねぇし」


 敵プレイヤーである軽装の中肉中背中年男性。

 彼こそ鎖鎌という一見マニアックな武器であるカムイを扱うが、鎖、鎌、分銅、それらをさしずめ三刀流の如く巧みに使い分ける高度な業師である。


 野生の勘を頼りに刀で暴れるだけの脳筋マサムネは翻弄されてばかりだ。


「続いて食らえ、鎌で攻撃」


 相手は間髪入れず、鎌の旋回を加速させながら投げつける。


「あっやべ! ふんぎゃろっ!」


 反射的に躱そうとしたものの、足に巻き付かれている鎖を失念したためあえなく転倒。

 そこに横から投げつけられた鎌の刃がマサムネの手首に命中し、幾ばくかのダメージを受ける。


 マサムネは怯むどころか仕返しに鎌を奪ってやろうとしたが、鎖を引っ張ることで相手の手元に回収されてしまうという抜かり無さ。

 だがマサムネにとっては、ダメージ以上に憤懣やる方ないものが湧き上がっていた。


「テメーコンプラ違反だろゴラァ! 鎖鎌ってフツー鎌の方は投げねーんじゃねーんか!」

「そういう常識をあえてズラす。このシブさも分からねぇお子ちゃまなんざ、お家に帰ってプニピュアでも見てるんだな」


 見当違いなダメ出しにすら、余裕げに煽り返す冷静さ。この男が自認する渋さは口だけではないらしい。


 しかし、そこは口喧嘩において天下無双を冠するマサムネ。


「テメーに言われなくたってプニピュアは毎週ニチアサでリアタイしてるもんね〜。ウチは3代目に出てくるピュアドリールが推しかなぁ」

「聞いてねぇよ!」


 推しの変身した姿を夢想しながら、つぼみが花開く様を両手で表現する決めポーズ。

 なおどうでもいいが、このポーズは5代目に登場するピュアマリリンである。とりあえずいい加減な人間だと伝わればいい。


「真剣に戦わないアマちゃん相手は付き合ってらんねぇ。こんなシブくねぇ奴には、(カラ)い結末を味わわせてやるしかねぇな」

「お、なんか大技きちゃいやすか?」


 首をコキッと鳴らし、鎌の旋回を止めて木の柄の部分を握る。

 この大技が来る前のような異様さには、マサムネも思わず口数少なくなるほど。


「よい子のみんな、これが大人のシブさよ。【魔女の大鎌(デスサウィズ)】」

「うおおおデカい! 説明終了!」


 小ぶりだった鎌が突如として巨大化。

 代償に鎖や分銅は消滅したが、そんなことが文字通り矮小な事になるほどのインパクト。


 大きさのみならず重量も見た目相応に大幅増加したこのアーツにかかれば、上段から振り下ろそうと真横から振り抜けようとマサムネの体はたちまち真っ二つになるしかない。


「その右腕、貰ったぁ!」


 リトルフラワーの副隊長の脱落を大声で宣言する。


 絶体絶命の中、マサムネは相手でも鎌でもなく、その後ろだけを見据えていた。


「ウチはハグたんの右腕だけど……」

「ハグたんの奥の手コロリンだころすゥ」

「なっ!? 新手がいたか!」


 敵プレイヤーの後方に潜んでいたコロリンがその姿を現す。

 しかも巨大化した鎌の範囲外から、遠距離攻撃用のアーツの発動準備を終えながら。


「【消巨砲(イレイサーブラスター)】」

「なっなあああああ!!」


 機械化した両腕の掌から極太の光を照射し、土も草木も抉るほど跡形も残さない熱量で相手を焼き尽くす。


 なまじ鎌を巨大化させたせいで体幹が保てず、直撃を受けて成すすべもなく丸焦げになった相手は、膝を地面に付いて伏すだろう。


「くおおおお……俺のシブとさ、アマくみるんじゃねえ……」

「凌がれちゃったころす!」


 相手は膝に手をついて倒れてようとしない。

 彼は、ハグたんの花飾りと似たような、つまり仮死状態に追いやられるダメージを食らってもHPを1だけ残して耐える効果をもつ装備品によって、どうにか歯を食いしばって生き残っているのだ。


 彼、いや、相手クランにも意地がある。


 リトルフラワーが飛び級をかけたランク戦であるように、相手クランはフリーバトルではあるのだが勝利すれば自身のレベル×1000ゴールドのデイリー報酬が振り込まれるからだ。


「玄人好みの渋い名勝負を見せつけるのはこっからだ。この俺の底力、存分に味わうがいい!」


 故に、負けられないのだ。

 たとえ相手クランと背負うものの大きさが違えど、戦いを放棄しない限り、気持ちに左右されない実力勝負に持ち込める。


 とはいえコロリンはさしたる動揺もなく、ただ勝利だけを確信していた。



「マサムネ流屑奥義・牛丼がんめんなげ!」

「ぐっはぁ!! もうちょっと渋い技名で倒してくんない……?」


 アーツでもなく、ただ相手の背中に刀を投げつけたマサムネが、僅かに残っていたHPを削り切った。


 まるで締まらない最期だったが、マサムネもコロリンも一人だけでは間違いなく勝てない、良くて相討ちで終わっていた強敵だ。

 だとしても、コロリンと二人で連携すればどちらも生存した上で相手をキルできる。


 これこそが、ただの力比べで終わらないクランバトルの肝なのである。


「イェース! 挟み撃ち大成功!」

「イェースころーす!」


 2人は右腕と機械腕でハイタッチを交わし、再会を祝しつつ勝利の喜びを確かめ合った。


「せんぱいも名演技だったころす。おかげでシブシブな相手を出し抜けたころす〜」

「いやいや、敵がマヌケすぎただけっしょ〜」


 謙虚なのか相手を小馬鹿にしているのか微妙なことを宣うマサムネだが、そんな細かい過ぎたことをともかくとしたコロリン。


「これで5対3、誰かも敵さん倒してるころすね」


 生存者の人数比はいつでも確認できるが、誰が誰を倒したかまではクランランクバトルが終わるまで表示されないので注意が必要だ。


「順調そうだころす。マサムネせんぱい、このまま2人で一緒に行動していれば安心だころす〜」


 クランバトルのセオリーに則ってコロリン方針を呈する。

 数の有利とは、それだけ力の不利を覆せることをコロリンは知っているからだ。


 一方でマサムネはそう思ってないらしいが。


「……いんや、二手に分かれて行動した方がいいっしょ」

「えっ、どうして?」

「まず行方不明のハグたんを回収しなきゃやばない? ウチらが手分けしてでも捜しに行く方がいいって」


 マサムネの判断は型に囚われない。

 数の有利さえも覆すような強大な敵への想定に加え、このクランの存在意義でもあるハグたんファーストにも則る方針だ。


 リトルフラワーに加入してから日が浅いコロリンだったためにそこまで思い至らなかったが、マサムネがそれだけ先輩らしく熟慮を……いや、ルールブックを独り占めしていたからだろう。


「優先事項は決まりだころすね。それじゃコロリン、あっちの方向から捜しに行くころす」

「おっけおっけ、だったらウチはあっちこっち怪しそうなとこに行くんで」

「手当たり次第よりもコロリンの反対方向を捜してほしいころす……」


 マサムネの方向音痴の要員でもあるいい加減な性格に苦笑しながらも、2人は頷いてそれぞれこの場を後にする。

 ハグたんのみならず、他の友達も無事が分からなければ不安がある。



 残り時間50分。

 勢いを占う序盤戦が終了する頃合い。



 暫しメンバーを捜索している最中、動きがあったのは、コロリンの方だった。


「ここらへん、やけにぬかるんでるころす」


 森林地帯を抜け、胸の高さまで伸びる草原地帯を捜索中、足元が見えないせいで粘り気のある生温かい泥が纏わりつく感覚に悪戦苦闘する。


 もしや湿地帯に迷い込んでしまったのかと過ったが、一歩前までは土の地面を踏んでいたはずだとも。

 それでもコロリンは現状を重視する。


「これはちょっとまずいころすぅ。動きにくいところを敵に狙われちゃったりしたら……」

「おっ? おっちゃんの産んだ()()()の匂いに誘われたべか?」

「はれっ!?」


 陽気そうで田舎っぽい印象の声に驚いたコロリン。


 同時に、この泥の中に潜んでいた人物が意図的に設置した罠に飲み込まれていたことも。


「もしかして……このぬかるみ、おじさんの仕業だころす? ひいっ!? これムリ戦うのやだ!!」


 相手のその姿を一目見た途端、コロリンは高い悲鳴をもらす。


 スキンヘッドにふんどし一丁、でっぷり太った腹と筋肉質な上腕を晒したほぼ裸一貫の老け顔男性が、泥まみれになりながら立ち上がったのだから。


 現実世界でエンカウントすれば即座に通報して逃げ一択するほどの不審者じみた相手プレイヤーは、名乗りをあげる。


「クラン『大三字』所属、

その二つ名は『子濁産(ネイビーベイビーズ)』。

ほっほ♡ 泥んこといえばこのおっちゃん、おっちゃんといえば泥んこだっぺやー」

「うえぇ……き、キモいころすぅ……」


 コロリンは潔癖症ではないが、いやらしい目つきと舌なめずりを交えた自己紹介に露骨なほどに嫌悪感を顔に出す。


 それでも会敵した以上は、お互いに名乗るだけ。勝利のために戦うだけ。

 敵のえり好みをしている場合ではないなど、コロリンは知っている。


「いざ勝負だや! CCOで最もねちっこいカムイと評判のこの(どろ)のカムイで、そっちの娘っ子に泥んこ遊びの気持ちよさを教えてやるべ〜」

「クラン『リトルフラワー』所属、

その二つ名は『殺尽平均(キラーマージン)』。

すっごくキモいけど……だからこそみんなに会わせられないころす」


 生理的に関わりたくないと表情に出しながら、自分1人だけで始末する覚悟を決め、機械腕のカムイを駆動させた。

 一生使われなさそうなプロヒール(読まなくても構いません)


 PN:マサムネ

 年齢:17歳(高校2年生)

 身長:163センチ

 体重:53キロ

 バスト:大盛り

 好きな食べ物:カップめん!

 嫌いな食べ物:たまご、ぬか漬け、ゴーヤ、マヨネーズ、豆腐、ミニトマト、プチトマト、デカいトマト、ナメクジの仲間だから貝類、小学校でリュウジに食わされた納豆、食べたことないけどマリっさんの手料理、他多数。

 趣味:レスバ!

 特技:いやがらせ!

 好きな武将:伊達政宗! 夏侯惇!

 最近の悩み:奥歯が痛い


 備考:ちいはな5姉妹の長女枠だが、作中最悪レベルのトラブルメーカーであり、クズではないにしろカスでアホ。

 人生を適当に生きることで向き合うべき課題から避けている節がある、典型的なダメ人間。

 おかげでリアルのクーちゃんにはクラスの女子達から隠れファンクラブが結成されているが、こいつは他校の男子達から正面きってアンチクラブが結成されたという。

 でも、それらひっくるめて、愛嬌なんです☆

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