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673.別の試練

 リゼは(ロイス様の試練は冷静でいられるかどうか、を見るものなのかな? 冷静に分析すると異変に気付けるようになっていたわけで。私のもそういう傾向はあったと思うのよね。あの黒い空間に相対してどうするのかという点において……)と考える。

 そして、ロイスは話を続けてきた。

 

「でなんだけど、とにかく行動に出ようと思ったからすぐに動くことにした。相手との距離はだいたい五メートル程度だったから、素早く動けばなんとかリゼを突き刺されないで済むかとも思って意を決して剣を反応しづらい敵の胸元あたりに投げつけつつ、一気に飛び出したんだけど、奴は器用に剣をかわすとリゼを突き刺そうとした。ただ、なんとかギリギリ間に合ったから腕で剣を受けながら、リゼを抱えてすぐにバックステップで距離を取ろうとしたんだが、君を抱える前に蹴りを入れてこようとしてきた。仕方がないので、泥臭い戦い方だけど、敵の足にしがみついてバランスを崩させて、腰の後ろに装備していた短剣で突き刺してなんとかしたよ。だいぶ、もみ合いにはなったけど、突き刺したところが良かったのか動きが鈍くて対応できた。収納袋は見えなくなっていたけど、短剣はベルトに装備している状態だったから使えて良かったと思う。腕には敵の剣が刺さったから、相当な痛みであったけど、敵を倒したら収納袋だったりが見えるようになったし、試練に挑んでいたことを思い出したんだ。だからキュアポーションでなんとか回復させたよ。それで質問なんだけど、リゼはこの試練についてどう思う?」


 随分と自分がロイスの試練に関係していたようであり、少し驚いてしまうが、なぜ自分が登場したのか気になってしまう。そして、彼の試練について質問を受けたので考えてみるリゼだ。


「あの、どうして私が登場しているのかが気になりますね……。そこはすごく謎めいていますね。とはいえ、まだ分析できていないのですが、一つ分かったことと言いますか、推測していることがあります。今回の試練がそれぞれで異なっているということは、それぞれに対して、その人物に意味のあることを試練として出してきているのだと思います。なので、今回のロイス様の試練にもロイス様向けの意味があることだと考えています。そう考えますとロイス様の試練……そうですね……誰かが死ぬ可能性があるときに冷静に判断できるか、どのように対処するか、などを見ていたのかもしれません?」


 もしかすると神器はロイスがそういった場面に遭遇した際に冷静でいられないと考えて今回の試練を出してきたのかもしれない。するとロイスは「おお、流石はリゼ。僕が考えていることと被っているところがあると思う」と話してくる。そして、彼も自分の考えを話してくるようだ。


「もしかしたら、神器の今回の個別の試練はその人物の弱点をついてくるのかもしれないと考えているね。で、僕のパターンについては……自分が深層心理で恐れていること、それが現実となった時に果たして冷静さを保てるのか、という点が弱点であり、乗り越える必要があったんだろうと考えている。だからリゼの意見はだいぶあっていると思う。リゼは機関の者と何度か戦っているみたいだし、万が一のことがあったら……と深層心理で怖がっていたのかもしれない。そういう状況に直面してだいぶ動揺したし、心が揺さぶられたけど、君を救うために頭をとにかく回転させたよ。もしかすると、神器としては僕の心を見透かした結果、冷静さを失う恐れがあると判断してこのような試練を与えてきたのだろう。見くびられたものだよ。残念ながら僕はそこまで心が弱いわけではない。もしかすると実は本質的にはそういう側面があったのかもしれないが、今となってはそんなことは確実にないと言い切れるよ。とある争奪戦、いや、男の勝負のために心を強くもっていないといけないからね。そして、リゼを抱えて窓から部屋を出ようとしたらまた別の場所にいたんだ。少し、水を飲むとするか」


 リゼは「えっと、争奪戦……男の勝負ですか? 危険なことではないですよね……」と呟きつつも、ロイスの話を聞いて一つ思うことがある。彼が冷静さを失うシーンは実際にあった。リッジファンタジアⅡでは祖父であるミュラー公爵が殺されたことで闇落ちをし、ラスボスとして圧倒的力を行使してくるのだが、神器はそういった側面を見透かしてきたのかもしれない。しかし、リゼとしては正直なところ闇落ちしてしまった気持ちについて、分からなくもない。リゼもリッジファンタジアでは父親が馬車の事故で死んでしまったことが原因で、エリアナの手下としてレイラ・ウィルズに対して数々の悪事を働く可能性を秘めていたし、親族が死んでしまったときに冷静でいられるかは分からない。ただ、神器からすると、そういった危うさのようなものも自身を入手するに値するかの判断基準としているのかもしれない。何かしらの復讐に神器を行使する危険性がないことを確認しているのだ。


(結構というか、かなりシビアに試練を与えてくるのね……真にロイス様が大丈夫かどうかを確かめるなら、誰かが死んだところにするべきだとは思うけれど、そこは少しだけ難易度が軽減されていたのかもしれない。試練に登場した私は死んでいなかったようだし……)


 リゼとしては若干、中途半端な状態でロイスのことを試したのだとは感じるが、神器としては今回の内容で推し量るということで問題ないと判断したのだろう。

 そして、ロイスはというと、収納袋から水を取り出すと再度少しばかり飲んでいた。


(そう考えると私はすでに神器を入手しているから、神器を手に入れてもよい人材なのかどうかという点はクリア扱いになっていて、計られなかったのかな?)


 するとヴィズルが『マイマスターは扉を見つけるというものが試練の内容でしたが、魔物などが多数出てきていました。もしかするとマイマスターは魔物という存在が未知のものですから深層心理で恐怖心を感じていて、そんな魔物に立ち向かえるかどうかを見ていた可能性もありますね。深層心理で恐れていることが共通して試練として出されるのだとしたらですが』と話しかけてくる。確かにそれはあるかもしれないと感じるリゼだ。戦闘ウィンドウで判別できないし、得体のしれない存在だとは感じている。案外、自分の深層心理とは分からないものだ。

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