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664.状況把握

 森からそっと様子を伺うが、地下墓地は三メートル程度の高さの黒い塀で囲まれている。そして、塀の中央部分は長方形の穴がくり抜かれていて通れるようになっており、地下墓地への出入り口のようだ。そして、塀には三メートルおきに物見用なのか穴が空いており、中を観察するにはそこから見るしかなさそうである。ヴィズルに見てきてもらおうかとも考えたのだが、塀の付近から、何らかの力により物体の飛翔が出来ないようになっているということが分かった。試しにヴィズルには塀に近づいてもらったのだが、いきなり地面に落下してしまい、そこからはヴィズルは地面を転がって脱出するしかなかったのだ。

 リゼたちとしては物見用の穴から中を観察するため、近づいてみるしかなくなった。森から塀までは十メートルほどあるが、その十メートルの区間には木々がなく、草なども生えていない。地面は加工した石を張り巡らせて整備されているという状況だ。要するに死角がなく目立ってしまう。塀の内側にはいくつかの(やぐら)があるが、幸いなことに誰もいなかった。


「問題はどうやってあの穴まで行くかなわけだけど、匍匐前進(ほふくぜんしん)でも見つかるだろうね」

「あの、ロイス様、私が一人で見てきます。この剣を使えば姿を消せるますので」


 リゼはヘルを持ち上げてみる。そして、(これって姿を消せたりしなかったら、無理ゲーというやつでは……? いえ、仲間が中にいる敵を外におびき出したりして、その隙に偵察するとか、そういうパターンになるのかな……)と思いつつもロイスたちを見るが、現状、リゼが姿を消して見てくるしか手がないため、全員が頷いてきた。

 作戦が決まったのでリゼは機能を発動させる。


「ん? 普通に見えるね」


 ロイスが首を傾げてくるので、「あ、姿を見られている状態で機能を使ってもダメなのです。逆に姿を見られていない人にはほぼ確実に気取られませんので、行ってきますね」と話しておく。

 リゼは足音を立てないように気をつけながら塀に近づくと、塀にへばりついてロイスたちに合図をする。問題ないという合図だ。そして、穴から中を見てみた。見えたのは青い肌をした例の魔物であるのだが、物見の穴からこちらを覗いており、ビクッとしてしまう。しかし、気づかれてはいないようだ。魔物が邪魔で穴の先が見えないため、リゼは別の穴から覗いてみることにする。


「うっ……ここも見張ってる……中央部分の出入り口から見てみますか……」


 出入り口に向かうと、中には入らずにそっと観察してみた。中に入らないのはバレたりするかもしれないからだ。現状、地下墓地の背後部分にいるのだが、中にはそこそこの魔物がいることが分かる。だが、出入り口からは全体が見えないので、塀を登ってみることにした。


(幸いなことにこの塀、デコボコしていて足をかけられそうなところがいくつかあるし、登りましょう。片手がヘルで塞がっているから落ちないようにしないと……あと、音が出ないようにゆっくりと慎重に……)


 リゼが塀を登り始めたのを見たエルーシアは息を呑むがルミアが「さすがはリゼ。まさか、登ろうと考えるとは思わなかったね?」とロイスに話しかける。ロイスは「想像以上の行動に出るところが……良いね。でも、少し目のやり場に困るかな」と横を向いていた。スカートが風で揺れていたりするので目のやり場に困っているようだ。


「えっ、普通にスカートの下にはペチコートか何か穿いているでしょ。抜かりないと思うけど、リゼは。ガードが硬いことに定評があるんだから」

「それなら安心だ……とはいえ、やはり目のやり場には困るな……僕は目線を外しているから何かあったらすぐに教えてくれ」

「紳士だね、ロイスって」

「あなたたちねぇ、リゼ様が頑張っているというのになんて会話をしているの」


 エルーシアが指摘するとルミアとロイスはエルーシアに頷いてリゼの無事を祈るのだった。


 なんとかかんとか登りきったリゼは中の様子を眺めてみる。見える範囲が広がったことで様々なことが分かった。合計で三十体ほどの魔物がおり、物見の穴からは外を警戒しているが、穴から離れることもあるようだ。魔物が物見の穴から離れたタイミングでは櫓の上に二体の魔物が立って辺りを警戒していた。常に外を警戒していることになる。そして、見張りにつかない他の魔物はウロウロとしているようだ。また、出入口付近には魔物はいない。

 リゼはしばらく観察していたが規則性があるということが分かった。櫓の上は必ず二体が周囲を監視しているが、監視時間は十分だ。そして、物見の穴は穴が十個ほどあり、すべての穴から外を監視する。要するに十体が外を見張っていた。監視時間は五分だが、十体が必ず物見の穴で外を見るため、ウロウロとする魔物の数が少数になるので、突入するならこのタイミングしかないだろう。


(物見の穴から魔物が離れて、他の魔物が櫓に登るまでの約三十秒ほどは誰も外を見張っていない時間があるみたいね……! そのタイミングで塀まで来て穴から見えないところというか、出入口付近で身をかがめて待機……。そして、櫓での監視から物見の穴での監視に切り替わったら突入。十体が見張るから二十体を相手にすればよいし、結構散らばっているから、実質は数体を相手にすれば扉までたどり着けるはず。これしかないでしょうね)


 色々と作戦を考えつつも、少しばかり中に入ってみたかったが、入るとやはりバレたりするかもしれないので覗くだけにしておいた。そして、かなり情報を分析できたリゼは一度森に戻ると、「この背後部分には三十体ほど例の青い肌の魔物がいました。あと地下墓地には扉がありましたね……。その扉の付近には上位種らしき魔物が一体いました。なので、通常の個体が二十九体、上位種が一体という感じです。全体を把握したいので側面や正面も見てみましょう。あと、見張りには規則性がありまして――」と知り得たことを告げる。

 他の面々も他の場所から確認してみる件について同意のようで、静かに移動をして側面を見て、正面までやってきた。側面には二十体の魔物がいたが、数以外の行動は基本的に背後部分と完全に同一である。なお、地下墓地は正方形で一辺が百メートルほどの長さがあるようだ。塀は百二十メートルほどであり、塀から地下墓地までの距離は三十メートルほどである。また、地下墓地は正面や背後、左右にそれぞれ一つずつ扉があるようであった。観察していて分かったことだ。

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