462.効率的な行動
ベルノルトの母親が彼の祖父と共にゼフティアに亡命しようとして戦闘の後に死亡したこの事件はリッジファンタジアの時系列的には序盤である。ジェレミー派のオフェリーの父親が『ブルガテド側から人が押し寄せて来る可能性があります。それが騎士なのか一般的な国民なのかは定かではありませんが、ゼフティアの不利益は防止しなければなりません。ルーク様を信仰している者たちは百歩譲って良いにせよ、武の神ラグナル様を信仰している人々もかなりの数に上ります。そんな異文化の彼らが馴染めるわけがないですし、不満が溜まって反乱やテロを起こされたら困りませんか』と進言し、王や王妃が警戒を許可した時に起こったことだ。文章として少し出てくるだけであったが、まさかベルノルトの母親が絡んでいたということまでは覚えていなかったので驚きであった。
なお、オフェリーの父親としては、自軍が被害を受けたが許すことでブルガテド帝国側に貸しを作ることが目的であったようだ。
それからベルノルトとエルーシアはしばらく話をしているが、彼はドゥーゼ侯爵家は継がないという選択をしており、「僕は君にすべてを捧げたい。ずっと共にいさせてもらえないだろうか。君を愛している」と跪き、エルーシアは「私もあなたのことが好きよ!」という感じで快諾するという流れであった。
(そういえば昨日、少しエルーシアに好きな人はいないのかということと、いつか結婚するのよねということを雑談している時に聞いてみたのよね……)
リッジファンタジアⅡの主人公であるエルーシアは本来であれば攻略キャラのいずれかと結ばれるというのが良いはずなので聞いてみたのだが、「私としてはリゼ様にご迷惑がかからなければそのうち結婚するかもしれませんが、今のところ興味が湧く男性はいませんね……!」と答えられてしまった。ベルノルトとは一緒に練習することが多々あるし、リアムやミーナ、ベルノルト、エルーシアの四人でダンジョン投影施設に挑戦したりとそれなりに接点があるはずだ。しかし、ベルノルトに惹かれたりはしていないようである。ただし、アルノルトが馬車に閉じこもった際にはベルノルトに加勢してアルノルトをどうにかしようとしていたので、仲間意識のようなものはきちんとありそうだ。ウィリモードに関してはエルーシアに挨拶をしていたが、その際のエルーシアは騎士モードで対応しており、まったくもって興味などはなさそうであった。
リゼとしては(どうすれば……)と思うが画面に視線を戻す。
そこからはエンディングが流れてタイトル画面に戻るのだが、以前はタイトル画面から『鑑賞』を選択してスチル一覧を選択して眺めてしまった。しかし今回はすぐに部屋で出来ることをしようと動き出すことにする。恐らく少ししたらタイマーが鳴るはずだ。
「よし、色々と考えるのはあとよ。効率的な行動を!」
リゼは机に素早く進むと机に伸びていたスマートフォンの充電器とケーブルをアイテムボックスへと収納した。それから机の上に置いてある自分の日記も入れてみる。恐らくはリゼの予想では知ってはいけない情報は消されるだろうが、何かしらの参考になる情報があるかもしれないと感じていた。なお、スマートフォンがまたもや置かれていたのでアプリ版リッジファンタジアを起動して、報酬を受け取っておき、同じようにアイテムボックスへと収納してみる。うまく持ち帰ることが出来れば二台目だ。
それから本棚に向かうとタイトルなどは気にせずに機械的に前世の世界の本をアイテムボックスへと入れていき、続いてゲームのパッケージは入れてみようとするのだが、それは出来なかった。
(うーん、やっぱり流石に無理なのね……残念……)
ここでタイマーがなり始めたわけであるが、今回は既に色々と行動しているため、かなり効率的に動けていることになる。それからクローゼットから服などもアイテムボックスへと入れてみることにした。デザインの参考になるかもしれないからだ。前世の両親が誕生日プレゼントでくれた宝石や時計などがあったのでアイテムボックスに入れる。プレゼントしてくれたシーンは思い出せないのだが、プレゼントしてくれたという事実は思い出した。
(そういえば、えっとパソコン? は……この部屋にはないのね。スマートフォン的な色々出来るものだったはず。イラストを描いたりとか。この家の別の部屋にあるのかな?)
ふと部屋を出てみようかとドアノブに手を掛けるが以前に試したのと同様に開かなかった。何となくであるがあまりしつこくドアを開こうとしない方が良いと直感で感じたため、ドアノブを離す。
(開いてしまったら戻れない気がする。今後は触らないでおきましょう。えっと、まだ時間があるみたいよね。他に何か持ち帰った方がよいものがあるかも……)
タイマーを見るとまだ時間があるので、部屋を見渡してみる。本棚のゲームのパッケージ以外の本は全てアイテムボックスへと入れることが出来たわけであるが、隣の棚にはリッジファンタジアシリーズに登場するキャラクターのアクリルスタンドや缶バッジなどがあるくらいだ。
「一応、グッズも持ち帰ってみましょうか……」
リゼはアクリルスタンド、ぬいぐるみ、缶バッジ、アクリルキーホルダー、コラボカフェのコースターなどをアイテムボックスへと入れていく。ここでふと思いついたことがある。
スマートフォンを取り出すと、ゲームのパッケージを手に取り表面と裏面を撮影していくリゼだ。そして、タイマーを見るとギリギリの時間になっていたのでスマートフォンをアイテムボックスへと収納する。わざわざ時間を気にしてアイテムボックスに入れたのは、きちんと入れておかないと持ち帰れない可能性が高いからだ。
ほどなくして視界が暗くなった。
朝になる。夢の中で効率的に行動出来たこともあり、満足感を感じていたのか目覚めはかなり良い。すぐさまアイテムボックスの中身を見るが、きちんと持ち帰ることが出来たようだ。
「よし、色々と持ち帰れたみたいね!」
リゼはベッドから起き出すと、洋服などをベッドに並べ始める。するとヴィズルが『マイマスター、張り切っているようですがこれらはどうしたのですか?』と聞いてきた。
「ふふふ、実は色々あって手に入れることが出来たのです。あ、私の前世関係……で!」
「そういうことですか。また摩訶不思議なことを成し遂げたようですね。マイマスターは予測不能な行動を取ることに定評がありますよ。私の中で」
ヴィズルは念話ではなく音声モードで返答をしてきたのだが、宙に浮きながら服を見ている。なかなかに珍しいと感じているのか興味があるようだ。リゼは自分に合わせてみた。いまはサイズ的には合わないが、成長すれば着れそうである。それからヴィズルと共に北方未開地に転移すると自室にアクリルスタンドなどのグッズを飾ってみた。
「あー、これ他の人に見られたらまずいかな……ベルノルト様のアクスタとかもあるし……。なぜこれらを机の上に飾っているのかという純粋な質問をされたら、リッジファンタジアが好きですと言うわけにもいかないし……ちょっとしまっておきましょうか。そういえばこれって素材は何なのかな? うーん、ガラスではないし……アクリルスタンド、アクリルキーホルダー……アクリルというものだったりして」
少しアクリルスタンドの素材はなんだろうかと思うが、リゼは飾ったグッズたちをアイテムボックスへと収納しつつも主城の方に趣味部屋でも作ろうかと少し考えていた。




