178.禁書庫へ
特に何も考えずに手をかざしてみたため、光が消えて少し驚いてしまった。
「え……?」
「素晴らしいです。この剣ですが、いままで何人かが手をかざしてみたのですが、認められた人はいなかったのです」
「そう、ですか……」
思っていたよりも貴重な剣だったらしく、止めておけばよかったと少し思ってしまう。
(何かな……何かの使命を背負うことになるとかそういうことではないよね……?)
案内人は「そうなのです」と言いつつ、経緯を説明をしてきた。
「このショーケースの中の光はかつてショーケースごと、ブルガテド帝国から贈られたものと言われています。選ばれたものは剣として実体化することが出来るようになるそうです。未だかつて誰も選ばれなかったため、ショーケースが壊れたらどうなるか分かりませんので、専用の仕掛けで隠してあったのですが……剣の具現化は想像すれば良いそうです」
「やってみます」
リゼは目を瞑り意識を集中させ、剣を想像してみる。どうしようかと考えたが、ブリュンヒルデを想像した。
すると、リゼは剣を握っているのだった。ブリュンヒルデそっくりの形をした剣だ。しかし、色は異なっている。白色の剣だ。なお、ブリュンヒルデは明るい銀色の剣身である。
「成功ですね。この場に立ち会えたことを光栄に思います」
「それにかなりしっかりとした剣ですね。鉄の剣と打ち合っても折れなさそうです」
「試してみますか?」
案内人の提案にリゼは頷いた。どれくらいの硬さなのか、試せるなら確かめておきたいところだ。
「こちらをどうぞ」
武器エリアにあった加護付きの剣を渡されたため、(叩いてみて良いのかな?)と考えつつもリゼは渡された剣を強く叩いてみた。しかし、秘剣ミスティアには一切の傷もついていないのだった。
「これなら打ち合っても問題ないですね。こちらの加護付きの剣はお返ししますね」
「フォルティア様、ちなみに選ばれてしまったので宝物庫からは秘剣ミスティアをお選びになったということになりますが……宜しいですか?」
「はい。他に欲しいものはなかったのでこれで大丈夫です」
「承知しました。なお、剣を手放すと消滅させることが出来るそうです」
剣を空中で手放すと剣は消滅した。リゼは剣が消滅した空間を眺めながら呟いた。
「なかなか便利ですね……ちなみにこの剣を持つと何かの意味と言いますか、使命を帯びるとかそういうことはありませんよね……?」
「詳しいことは当時の説明書きに書いてあること以外は分かりません。なぜ贈られたのかも記録に残っていないのです」
秘剣ミスティアは帝国から贈られたということのみが分かっており、誰が作ったのかといった詳細情報は一切ないらしい。リゼとしてはあとで神器にさらに詳細を聞いてみることにするかと思った。
「レーシアだけでも恐れ多いのに、私が持って帰って良いものなのでしょうか……といってもショーケースへの戻し方もわからないのですけれど……」
「戻し方は……ないです。なので、問題ありませんし、陛下からも……宝物庫の中で制限なく一つを持ち帰ることを許可すると命じられておりましたので、こちらを選んでいただくことで大丈夫です。それでは次は禁書庫にご案内しますね」
リゼは「分かりました」と返事をしつつ、宝物庫を後にして案内人に続く。これから続いて禁書庫を目指すことになる。
(この秘剣ミスティア、剣を持ち歩いていない時でもアイスサーベルと同じでいつでも剣を出せるということに。すごい。とはいえ、普通の剣よりもかなり軽いのでこれに慣れすぎるのはよくないかも)
思っていたよりも軽かったので、この剣の感覚になれるとブリュンヒルデなどの剣を使う際に支障が出るかもしれないと、そこは気をつけようと考えるのだった。アイスサーベルと同じだ。
禁書庫は塔の上の方の階層にひっそりとあった。しかし、管理は厳重でここに辿り着くまでに鍵のついたドアを五つも通過した。
(厳重よね。確かジェレミーのスキルソードフェイカーは禁書庫で手に入れたと言っていたけれど、どうやって入ったのかな……王妃様にお願いしたのかな?)
禁書庫はさほど広い部屋ではなく本棚が五本ほどある。埃のにおいが充満しており、床にも埃が積もっている。リゼは入室すると咳をしてしまった。見渡すとびっしりと本が詰まっている。先に来ていたエリアスがうんうんと唸っており何にするのか悩んでいるようだ。
「こちらの三本の本棚が魔法、あちらの二本の本棚がスキルに関連するものです」
「ありがとうございます」
リゼは案内人にお礼を言うとまずエリアスに話しかけにいく。
「どうですか?」
「なかなか悩んでいます。スキルにするかもしれないです。宝物庫では良い何かを手に入れられました?」
「はい。今度お見せしますね!」
エリアスと少し話をしたのち、二人は何をもらうべきか集中して考えることにする。失敗は出来ないため、よくよく考えて選ぶ必要がある。
(まずは魔法……といっても氷属性の魔法書はないので基本的には風属性を見ることになる。風属性は……ここね。上級魔法は十冊しかない……。それに比べて光属性や火属性や水属性は沢山あるのね。闇属性は二冊。さて、見ていきましょうか。強そうなのは……えっと、特殊上級魔法ウィンドストーム、風の竜巻を発生させ相手を巻き込む。それをくらうと竜巻の中でダメージを受けて叩き落とされる。つまり、アクアヴォルテックスに似ているのかも。それから特殊上級魔法エアソード。剣状の風の塊が相手に向かって飛ばされる。弾き返しても三回は相手を貫こうとする。これはモンスター相手には良いかもしれない。念のため、他のも見てみようかな。グラビト・インモービリスという闇属性魔法は重力で相手の動きを制限することが出来るみたいね。もう一つの闇属性魔法は辺りを闇で包み込むのだけれど、自分は闇の中でも視界的に問題がないという魔法。なるほど、他には特に良さそうな魔法はないかも。魔法はひとまず保留かな。ではスキルを見て何をもらうか判断!)
リゼはスキルの本棚に移動する。攻撃系スキル、防御系スキル、その他スキルと区分けして並んでいる。例えばリゼの持つ燕返しなどは防御系スキルであり、ジェレミーのソードフェイカーといったスキルは攻撃系スキルとなる。リゼとしては攻撃力を増したいため、攻撃系スキルを入手したいところだ。
(攻撃系スキルは……交換画面で見たことがあるスキルたちと似たり寄ったり……かな。少なくともソードフェイカーみたいなスキルはないみたい。防御系スキルはオートで五回攻撃を防げるというものがあるけれど、これは避ければ良い話だし、相手が八連斬りみたいなものを使ってきたら何の意味もなくなるのよね……。その他スキルは……これは……特殊なスキルたちね。交換画面で見たソード・エクソシストなどもその他に区分けされる。あれはスキルの発動を一定時間無効化するもので確かに攻撃でも防御でもない。うーん、あまり欲しいものがないなぁ)
スキルの本棚を半分見たところでエリアスが声をかけてきた。
「リゼ、これ見てください」
「はい?」
エリアスに呼ばれて魔法書が置かれていれる本棚へと向かう。何か良い本があったのかもしれない。
「これ、すごくないですか?」
「これは……本の色的に特定の属性魔法ではない魔法の本、ですか? 古そうですね」
エリアスが手に持つ本はだいぶ古く埃まみれになっていた。




