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第二話 迷いの森


「……ここは?」


 目を開くと、そこは鬱蒼(うっそう)とした森らしかった。

 『森らしい』と言ったのには訳がある。視界を隈なく覆う霧のせいで、ほとんど視界が効かなかったからだ。


 すぐ近くに人の気配を感じない。どうやら、転生と同時にあちこちに飛ばされたようだ。


 それにしても、異世界転生した直後。近くに誰もいないのは心細い。

 近くに誰かいないかと周囲に視線を走らせた時だった。


 遠くから声が聞こえたのだ。しかも、二人も。


「おーい!誰かいねえか!?」

「ねえ!誰か返事して~!」


 聞き覚えのある声。これは、恭也君と森谷さんだ!

 よかった、いきなり知り合いに出会えたのだ。僕はツいてるに違いない。


 喜び勇んで声を張り上げる。


「恭也君!森谷さん!聞こえる?僕……紡だよ!」


「はっ!なんだ、紡かよ……!悟だったらよかったのに。まあ、いいか」

「音鳴君!?よかった。周囲に誰もいなくて不安だったの!」


 返事はてんでバラバラに返ってきた。耳を澄ますと、どうやら二人は全く逆方向にいるらしい。

 お互いの声は聞こえず、辛うじて僕の声が届くほどの距離みたいだった。

 となると、話は簡単だ。


「こっちにおいでよ!とりあえず、合流しよう!」


 どうやら、僕は二人の中間地点に立っているらしい。

 ならば、僕が声を上げ続けて合流の目印になるのが手っ取り早い。


 ん?こういう時は目印じゃなくって耳印っていうのが正しいのかな?

 僕がそんなしょうもない疑問を浮かべていると──


「おお!?なんだ……よ……これ!」

「いや!?どうして……きゃああああ!?」


 ほとんど同時に二人の叫び、いや、悲鳴が森にこだまする。


 どうしたんだ!?まさか、誰かに襲われた?

 ここは異世界だ。どんな狂暴なモンスターがいるかわかったものじゃない。助けに行かないと!


 そこまで考えて、僕は逡巡した。

 二人は、全く逆の方向にいる。つまり、僕はどちらかを選ばなくてはいけなかった。


「……っ!」


 この状況ならば、森谷さんのもとに先に向かうべきだ。恭也君と違って、彼女はか弱い女子なのだから。

 でも、あの豪胆を絵にかいたような恭也君をあそこまで狼狽させるのも、よほどのことに違いない。


 僕が迷っていると、突如、森の中に突風が吹き荒れる。


「うわっ!?」


 遮蔽物の多い森の中でこれだけの強風が吹くとは思っておらず、僕はモロに転んで地面に頭を打った。

 突風は周囲を覆っていた霧も揺り動かしたらしく、再び起き上がった後、周囲の景色は一変してしまっていた。


 ……しまった……二人のいた方向を見失った!


「恭也君!森谷さん!返事をして!!」


 先ほど以上に声を張り上げてみても、返事はない。

 こうなったら、あてずっぽうに走り出すしかない!


「くっそ!こんな時に方向を見失うなんて、僕の馬鹿タレ!」


 自分を思いっきり罵って、勘を頼りに霧の中に飛び込むのだった。






「くそ……!やっぱり違ったみたいだ……!」


 しばらく走り続けて、僕の勘が「ハズレ」を引いたと告げていた。

 最後に聞いた2人の声から推測して、もうとっくに追いついてもおかしくない距離を走っているはずだった。


 息が上がり、その場に座り込む。


 すると、無力な僕をあざ笑うかのように、立ち込めていた霧が晴れ始める。

 何か手掛かりはないかと視線を動かしてみる。どうやら森の切れ目、開けた広場の淵に僕は立っているようだった。


 木々に加えて、あの濃密な霧は音を遮蔽する効果でもあったのか。今まで凍り付いたような静寂の世界に、急に音が戻ってきていた。


 とにかく、視界を確保するためにも開けた場所に向かった方が良いだろう。

 そう判断すると、僕は森を背にして広場に足を踏み入れる。


 ──その時だった。




「……歌が……聞こえる」




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