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身体測定と三栖華と仁阿の関係

 4人でAグランドに着くと既に統合科の生徒がチラホラと集まっていた。

 確かそれぞれ20人ずつだから3クラスで60人か。

 それでも全然余裕があるぐらいにはグランドは広いんだが……


 ちなみに2年生はこれだけじゃない。魔術科、幻想科、一般科そして俺達の統合科とあり、ほとんど名前の通りの内容になっている。


 魔術科は魔術を専門的に教える学科。生徒はほぼ魔術適性者だが、魔科学などを学ぶために魔術適性がない生徒も数人いるとか。生徒の数は合計で80名ほど。


 幻想科は幻想人のための学科。

 現代社会についてと幻想人の社会を中心的に学ぶ学科。こちらは幻想人が多いが、将来、幻想学についての職に就こうと考えている。又は幻想についてもっと深く知りたいという人間もそれなりにいる。生徒の数は30名ほど。


 一般科はごく普通の高校と同じ。適度に魔術、幻想を学ぶが基本的に一般学習をする科。魔術適性がない人間が多く、2年生の中でも生徒数が1番多い120ぐらいだ。


 そして、俺達の総合科。ここまできたらわかると思うんだが、総合科はこれ等全てを履修することになる1番難しい科だ。

 しかも、ちゃんと落第もある。もしテストに合格出来なければ追試などもなく他の科への移動を余儀なくされるという仕組みになっており元々は80人いた総合科の生徒も今は60名。今年でもっと減ることだろう。

 ただ、総合科で卒業すれば他の科よりも優遇されることが約束されているので希望者は多いんだとか。

 俺?いつもギリギリのところで粘ってますよ……


「お、ソウ!お前も来たか!」


 聞き覚えのある声に呼ばれたので聞こえた方を向くとカイが手を振っていた。

 その横には少し小柄な獣人の男子が1人、あいつは確か……

 2人がこっちに向かってくる。正確にはカイがこっちに向かってくるので獣人の男子もついてきているというほうが正しいか?


「ふっ、久しぶりの再会か。カイジに会うのも久方ぶりよ」

「いや、ルーヴェは2週間ぐらいのもんだろ」

「言ってみたかっただけだ」


 さいですか。

 元々ルーヴェとはカイもミコトも俺同様同じクラスだったから顔馴染みだ。ゲームや漫画の話でもよく盛り上がっている。


「カイジさんの横にいる子って確か……」

「がいおうが、だっけぇ。よく天崎と一緒にいるよねー。獣人なのもあってなんか飼い主と懐いた犬みたい」


 クスクスと笑う仁阿。

 凱王牙な?それと正確には犬じゃなくて狼だ。絶対あいつの前で言うなよ?噛み付かれるから。


「お、なんだなんだ。新しいクラスでいきなり女子2人連れてるとかやるじゃんか。ソウ!」


 こっちに来るや否や女子2人を見るカイ。

 相変わらずだなぁ。


「へろへろー、天崎」

「って、仁阿じゃねーか。なに、お前と同じクラスなのか。ソウ」

「まねー、そもそもはルーヴェに話しかけた流れでこうなったんだけどさ?いつもあんたとも一緒にソースケがどんな子か気にはなってたんだけど自己紹介でさー」

「おい、バカやめろ」

「ん、んー?なんだソウ、やらかしたのか?やらかしたんだな?」


 嬉しそうな顔すんな、殴るぞ。


「ふっはっは!引っ込み思案な自分に今更ながら決別するらしいぞ、カイジ?」

「ほー、そりゃまた面白そうじゃないか!」


 あ、やばい。話変えなきゃやばい。


「ソウ、お前って仁阿と知り合いだったのか?」

「ん?ああ、高1の時に最初に告った女だからな!」

「ぶっ!?」


 告った?え、告ったって、え?


「そーそー、こいつ急に話しかけてきてさ。何かと思えば付き合ってくださいだからね。まじウケたわ」

「仁阿ちゃんその時すごいキョトンって顔してましたよね」


 なんだ、その時は三栖華も居たのか。


「ふむ。つまり今2人はなんだ……愛を紡ぎあっていると」


 言葉だけではわからないだろうが、ルーヴェが今めちゃくちゃ動揺している。

 多分こういう言葉はゲームでは大丈夫だと現実だと苦手なんだろう。気持ちはわかるけど。


「んや、振ったよ?」

「フラれちゃったぜ!」


 ですよねー。


「あった瞬間に告ってくるやつなんか好きになるわけないじゃん?なんかチャラそうだし、バカそうだし」

「おーっと、俺の悪口はそこまでだ。高校2年のガチ泣きを見たくなかったらな!」

「それはそれで面白そうだけど?」

「ヤメテ!俺のライフはもう無くなりつつあるのよ!」


 あー、なるほど。

 それでもなんだかんだで相性は良かったようだというのは2人の会話から察しはついた。


「ふふふ、お二人とも仲がいいです」


 気づいたら俺の横にいた三栖華。

 2人の邪魔はしちゃいけないと思ってこっちにきたんだろう。

 その気遣いは無用だと思うが。ふと気になっていたことがあったのでせっかくだし聞いてみよう。


「そう言えば、三栖華の家って結構立派なのか?」

「え、えーっとなんででしょう?」


 とても驚かれた。あれ、これはバッドコミュニケーション?


「あー……なんというか。育ちに良さそうなお嬢様っぽいもんで」


 めちゃくちゃ悩んだ末に出た言葉はそれだった。

 俺のボキャブラリーの無さよ……。

 本当の理由はやはり魔術適正の高さと三栖華から溢れる……なんというかオーラ的なもの?そういったものを感じとったからだ。


 俺は少し特殊な力を持っていて相手の魔力を感じ取ることができる。

 それが赤間の家で身についたものなのか、孤児の時に身についたものなのかはわからないが、気づけば身についたものだ。

 だから魔術適性検査の時にクラスメイトの魔力を感じ取って基本的な魔術適正値がわかった。


「そう、ですね。一応……その、お屋敷にはお世話役の方が何人かいるぐらいには」


 お嬢様だー!!

 いや、お嬢様には慣れてるんだけど、あくまで身内だったもので身内以外のお嬢様っていうのとは話した事がない。

 ん、というか仁阿って昔から一緒にいるって言ってたような?


「え、じゃあ仁阿もお嬢様!?」

「いえ、にゃーちゃん……」

「にゃーちゃん?」


 おおお、三栖華の顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「に、仁阿ちゃんは私の付き人ですよ?」


 あ、持ち直した。流石はお嬢様だ。いついかなる時も平常であれ。素晴らしい。


……はえ?付き人?付き人!?


「え、なに!?あいつってメイドか何かか!?」

「あー、まぁそうなる……んでしょうか?メイドというよりはずっと一緒にいる姉妹のような感じですけれど」


 ふぁー、全然イメージがないものがきたな。

 あの感じでメイドは……いや、アリか。

 ルーヴェの方を見ると同じこと思っていたのか、カイと話している仁阿をじーっと見つめながら何やら頷いている。アリなようだ。


「んー、なになに?私の話してる感じ?」


 こちらの視線に気づいて仁阿がこちらに向かってきた。

 メイド、メイド……。

 こう、活発なメイドというのもそれはそれでアリだと思うんだ。

 しかし、そう言った目線で同級生を見てしまうのはいかがなものかと思いましてね。


「とりあえず、我はニアのメイド姿が見てみたい」


 おおい!?直球すぎんよルーヴェさぁん!?


「はぁ?メイド服?あー、私と三栖華の関係話しちゃったわけね」


 チラッと三栖華の方を見る仁阿。

 それに対して頭をぺこぺこ下げる三栖華。関係真逆じゃないですかね?


「確かに私は三栖華の付き人だけどメイド服着てるわけじゃないよ?身の回りのお世話してるわけじゃないしぃ、どっちかっていうと……護衛?」

「なん……だとっ」


 ガックリと項垂れるルーヴェ。

 おいおい、そこまでか?


「あはは!まぁ、私って身寄りが無かったからさー。宝城家のお世話になるようになってからは三栖華とずっと一緒にいたわけ。宝城家は代々蘭頼家に仕えてたんだってさー」


 笑いながらサラッとすごいこと言った気がするんだが!?


「あ、でも仁阿のお屋敷には確かにメイドさん居たよね?」

「はい、居ますね」

「ソウスケ、ぜひお邪魔しよう」


 お前をそこまで駆り立てるものはなんだ、ルーヴェ。

 いや、メイドなんだろうけど。あと俺に振るな、お前と同類だとバレる。


「御招きしたいのは山々ですが、ここから少々距離がありまして……」

「私達は寮暮らしだし?だから私は付き添いでこっち来てるのもあるから」


 あー、それで学園でも一緒にいるのか。

 確かに元々付き人だったなら向こうも安心できるだろう。


「いずれ機会がありましたら御招きいたしますね」

「専用のビーチとかあるから夏いいんじゃない?」

「ほう、ビーチだと?」


 カイがすぐさま反応したぞ、おい。


「なら俺も行きてー!」

「私もー!」


 へうあ!?ミコト!?いつの間に居たんだ。

 急に俺の背後からミコトが現れてきた。こいつ、わざとこっちに気づかれないように近づいてきたな。


「あ、みこっちじゃん。へいろー」

「へいろー!クラスの子達と話してたらまさかの仁阿がみんなと話してたからこっち来ちゃった!」


 なんだその挨拶は……


 どうやらミコトと仁阿も知り合いみたいだな。

 この場合は仁阿の顔が広いのか、それともカイとミコトの顔が広いのか、俺がただ単に人付き合いがないだけなのか。

 なんだかんだで全部な気もするな。悲しみ。


「いやー、ここにソウちゃんいるのがすごい違和感あるよ」

「そういやそうだな。基本的にソウは学校内でも人と付き合ってないし、終わった後はすぐ家に帰るし」

「2人と仲がいい分、気にはなってたんだけど機会無さすぎたよねー」


 俺がただ単に人付き合い悪いだけだった、悲しみ。


「久しいな、ミコトよ。今日も可憐だ」

「やほほーい、いつも褒めてくれてありがとね。ルーちゃん!」

「ふっ、事実を言ったまでのこと」


 ルーヴェはミコトに対して何故か他の人に比べて態度が違う。

 一度聞いた事があるが「素晴らしいヒト、だからだ」と言っていた。どこがかわからん。


「んー……」


 わざとらしく俺のことをじろじろ見始めるミコト。

 放っておいてくれ、どうせ人付き合いが悪いよ俺は。


「ルーちゃんはいつもの事だけどソウちゃんが女子を2人連れとは隅のおけないねぇ」


 ……はい?


「いや、こいつらはただ勝手についてきてるだけだぞ」

「え、何その言い方、ひっどーい!泣いちゃう!」

「ちょっと男子ー!仁阿ちゃん泣いちゃってるじゃーん!」


 いやいや、そういうノリ苦手なんだって。


「ふ、ふたりとも。ソウスケくん困ってますからその辺で……」

「あらあら、三栖華ちゃんは優しいなぁ。ならこの辺にしておきますかぁ」

「そろそろ身体測定も始まるしな!」


 お、三栖華さんまじ天使!助かった!

 カイの言葉通り、先生もグランドに到着しているようだ。ここで話していては遅れてしまうな。


「それじゃ行くよ、ソウちゃん!」

「え、おい……うお!?」


 手を引っ張るな!お前力が強いんだからっ!


「ふっ、変わらぬな」

「変わるわけないだろ、あの2人が」

「それもそうか」


 俺の様子を見てニヤニヤしているルーヴェとカイ。いやいや!ちょっと2人とも、たす、助けろー!!!

 俺の思いは届くこともなく、引っ張られるままに集合場所へと連れて行かれてしまうのだった。


 さて、そんなこんなで身体検査が始まるわけだが普通の身体測定でいうと身長だったり体重だったりを測るもんだが、そう言ったものは今の時代、魔法陣に乗るだけで全部わかってしまう。なので時間がかからず早く終わってしまうので同時に体力測定も行う事になっている。


 ここで問題になるのが種族間の違い。

 人間と幻想人だと体の作りがそもそも違う。

 獣人は身体能力がとても高く、ドワーフは力が強いがその分素早い動きができない。小人はそもそも体が小さいので全てにおいて身体能力が低い。エルフは機敏な動きが出来るが力が弱いとそれぞれバラバラなのだ。

 その中でも人間はオールマイティであり、駄目な人もいれば優れている人もいる。そんな感じだ。


 統合学園では全種族が登校する学園なのでどうしてもこういった測定で大きな差異が出てしまうのだが、そこはそれぞれの種族の特性を知るという名目のもと、合同で行われるようになっている。


「さて、それではAクラスの生徒は魔法陣に入ってくださいね」


 雷斗さんの指示の元、グランドに描かれた魔法陣に俺達Aクラスの生徒が移動する。


「あー、太ってたらどしよー」

「ふふ、どんなにゃーちゃんでも私は好きですよ?」

「えっ……という事はやっぱり私太った!?」

「ええー!?ち、違います!そういう意味で言ったわけじゃなくてぇ!」


 魔法陣に入りながら2人が騒いでいる。

 やっぱり女子って体重とか気になるもんなのかねぇ。日頃からちゃんとしてればそう大差はないと思うんだが、やっぱり甘いものとか好きだからだろうか。

 ふと横を見るとさっきまで賑やかだったルーヴェも黙ってるし、エルフもそういうの気にすんのかな?


「それでは皆さん、そのまま動かないようにしてくださいね。先生、お願いします」


 雷斗さんの号令と共に魔法陣が黄色き輝きだした。

 この間に動いてしまうと正確な数値が出ないんだとか。ただだからと言って姿勢を正してピシッとしておく必要もないらしく、楽な姿勢で待っていればいい。

 いや、流石に座ってるとかダラーっと手を投げ出してるとかはダメだと思うけど。

ものの数分で終わるので楽なもんだ。

 まぁ、スタッフの人はそんな事ないだろう。普通に考えればクラス一つ分の情報が一気にくるわけだしかなり忙しそうだよなぁ。他人事ではあるがお疲れ様です。


「はい、皆さん。もう動いても大丈夫ですよ。お疲れ様です」


 雷斗先生の一言でみんなが一斉に動き出す。

 楽にしていてもいいとはいえ動くなと言われるとやっぱりなぁ。

 少し伸びをしてルーヴェの方を見ると未だに身動きせずに目を瞑っていた。


「どうかしたのか、ルーヴェ?」


 少し心配になって声をかけてみる。一応魔術による干渉を受けてるわけだし、エルフは魔力の影響とかありそうじゃない?何かしらあったらそれはそれでちょっと嫌だし。


「……ん、ああ。すまん。少々微睡んでいた」

「微睡んでいたって……なんだ、寝不足か?お前らしくもない」

「いや、なに……ちょっとな」


 んー?なんか様子がおかしい気がするのだが、だからといって気にしすぎるのもなんだけどさ。


「……宿敵よ」

「ん、なんだ?」


 心配している俺にルーヴェが呼びかける。前々から思ってたんだがこいつが俺の事をトモと呼ぶときのニュアンス、ちょっと違くないですかね?

 そんなふうに思っているとルーヴェからとてつもない事を言われた。


「我と勝負せぬか?」


………………………………はい?









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