第五章 幼き頃の記憶
これはエアリスとアガサの幼き頃の物語である。
「アガサく〜ん、あーそーぼ!」
「え?やだよ。眠いし·········」
嫌という感情を隠すことなく表情にだしている。
アガサが冷たくあしらうとエアリスは目に涙を溜め
「うわぁぁぁん!アガサのバカァァァ!」
大きな声を上げ泣き出してしまった。
そうすると遠くから母親の声が聞こえた。
「アガサー!ちゃんとエアリスちゃんと遊んであげなさい!」
「わかったよー!」
しぶしぶエアリスと遊ぶことになった。
「今日も魔法の練習よ!」
「えー、また?」
エアリスは遊ぶ=魔法の練習みたいになっていた。
「早くアガサ教えて!」
いつも、エアリスはアガサに習いながら練習している。
「今日はファイア・エンシェントの練習するか」
「炎系のエンシェントだね、わかった!」
そう言うと的の木に向かって右手をかざし。
「ファイア・エンシェント······《エンゲイル・インスティレンション》!」
眩しいくらいの直径10cmの炎の球を作り出し、的に放つ。
が、大きくそれ空へ飛んでいってしまった。
「あれ?球を形成するところまでは完璧だったのに」
「魔力がまだ安定してないんだな、まぁそこは年齢も関係してくるけど」
アガサは生まれた時から魔力のキャパはカンスト状態だったが、エアリスは一般の人のため年齢相応のキャパである。
ちなみに今のエアリスは10歳です。
「もっと指先に魔力を集中させるんだ」
エアリスの手を取り、教え込む。
「うー、できない·········」
「エアリス、もう暗くなったし帰ろうぜ」
「あと1発だけやらせて!」
「あと1発だけな」
力強く頷き右手をかざす。
「ファイア・エンシェント‥‥‥‥《エンゲイル・インスティレンション》!」
炎の球はそのまま的に向かって真っ直ぐ飛び、木は灰と化した。
「やったー!できたよアガサ!」
「あぁ、良かったなおめでとう」
エアリスは笑顔で喜んでいた。
アガサの家に来たエアリス。
「あ!お父さん!さっきね、ファイア・エンシェントの《エンゲイル・インスティレンション》成功したよ!」
「おぉ!あれはファイア・エンシェントの中でも上級の方なのに」
エアリスは胸を張ってドヤっていた。
「まぁ、アガサが教えてくれたおかげね。アガサだいすき!」
アガサには眩しすぎるくらいの笑顔で告白してきた。
「大きくなったらアガサと結婚する!」
エアリスはアガサに抱きつき、プロポーズもしてきた。
「え、エアリス·······エアリスはお父さんと結婚するんじゃなかったのかー!?」
エアリスのお父さんが泣き始めた。
「やだ!アガサと結婚する!」
抱きつかれるアガサは終始困った表情だった。
でも、満更でもない表情をしていた。
「しかし·········アガサくんはすごいよなぁ。生まれた時から魔力のキャパは半端なく。階級も特別階級。俺でもまだ1階級なのに」
恨めしそうな目で夕飯を食べながら見てくる。
「いえいえ、アドラスさんもすごいじゃないですか、なんせ王国魔道騎士団第35代団長なんですから」
そう、エアリスの父親メーベル・ミア・アドラスは王国魔道騎士団第35代団長として活動していた。
滅多に家に帰ってくることは無いが今日は久しぶりの休暇で帰ってきていた。
「それにしても、可愛いエアリスが心配だ。私を狙う人達は大勢いるからね」
「団長として評判はいいはずですが·········」
「いや、私のことを悪く思う人も少なからずいるよ。特に《外界》の人とかね」
《外界》 それは、3つの都のさらに外にある国で主に王国に害を及ぼすであろう者たちが住んでいる。
そのため、一般市民の立ち入りは固く禁止されている。
王国魔道騎士団は《外界》からの侵入者を追い出したりする仕事を主にしている。
「それでアガサくんには折り入って頼みがあるんだ」
アドラスは真剣な眼差しで見つめてきた。
「エアリスの傍にいて、守ってやって欲しい。別に結婚して欲しい訳でもないさ。恋愛は君の自由だし、エアリスにもそこは何も言わない。ただ····」
アドラスは少しため········
「エアリスが1人前になるまでは、見守ってて欲しいんだ」
「アドラスさん········わかりま······」
アガサが承諾しようとした時··········
「失礼します!」
アガサの家の使用人が慌てた様子で駆け込んできた。
「何事だ?」
父さんが問いただした。
「エアリスお嬢様が········黒ローブ姿の男にさらわれて····」
「?!」
「エアリスが········さらわれた?」
「今すぐ王国魔道騎士団を配置しろ!しらみ潰しに探すのだ!」
アドラスが部下に指示した。
「アガサくんは·····ここで待ってるんだ」
「い······いやだ!探しに行ってくる!」
アガサは2人の父親の制止も聞かずに飛び出していった。
その頃エアリスは········
「よーし、ガキ。大人しくしてろよ。今から親父さんを殺してやるからな」
黒ローブ姿の男は表情は、あまり見えないものの声は冷たく、平気で人を殺しそうな感じだった。
エアリスは恐怖で叫ぶこともできなくなっていた。
(アガサ·······助けに来て·······!)
心の中で念じるばかりだった。
「ハァハァ·······どこだエアリス········」
かれこれ1時間探しているものの中々見つからない。
「こうなったら·······ソウル・エンシェント·····《メモリー・エスケープ》」
《メモリー・エスケープ》は使用者の強く念じている人の居所を光の粒が導いてくれるエンシェントだ。
「これをたどって·······」
アガサは光の粒を頼りに走り出した。
歯を食いしばり、大切な人を助けるために·······
第四章続きが気になるとは思いますが、しばしアガサの記憶回想にお付き合い下さい。