第一章 エアリスの努力
前魔法歴2850年。《始まりの神》ワールド・オリジンによって何も無かったこの地に命と自然。
そして《エンシェント》が与えられた。それにより、人々はソリティアの王国を変えていった。
しかし、前魔法歴4264年に《終焉の神》ワールド・デリートによって、ソリティアの地は再び『無』となった。
だが、ワールドオリジンはソリティアの地に3つの光を残した。
《創造神》メイン・エギス・ステイシア、《破壊神》ロスト・エンシェント、《時空神》ザ・クロック・スパイア。
この3つのの神はお互いに仲を深め、ソリティアの地を豊かにしていった
だが、そんな平和も長くは続かなかった。
前魔法歴5000年にこの3つの神が対立した。
そして、戦争が起こった。
この戦争は一説によれば500年も続いたとも言われる。
そして、ソリティアの地を残そうとして、3つの都をそれぞれ築いた。
《創造の都》ステイシア、《破壊の都》エンシェント、《時空の都》クロックそして中央にソリティア城が建てられた。
「ということだ、ざっくり流れを説明するとこんな感じかな」
黒板に図を書きながら、アレイ先生は説明する。
「今、俺らがいるエドワール高等学院はどこの都にあるかは答えられるな?」
辺りを見渡し、指名する人を探す。
「じゃあエアリス」
指名されたのはエアリスだった。
エアリスは起立し、背筋を伸ばして答える。
「《創造の都》ステイシアです」
「よし、正解だ」
アレイ先生もご機嫌の様子。だが、視線はある一点を見つめていて···········
「················」
そこには今日も居眠りする、アガサがいた。
教科書を枕代わりにし、気持ちよさそうに寝息を立てている。
アレイ先生も関わるのは面倒だと思ったのか、スルーして授業を進めていく。
でも、それを見過ごせないのがエアリスだった。
「あんた!さっさと起きなさいよ!先生がスルーしてるからっていつまでも寝てんじゃないわよ!」
教室いっぱいにエアリスの怒声が響く。
周りの生徒もいきなりのことでビクッと肩を揺らす。
「ん、ぬぁ·········エアリス?おはよう····」
「あ、アガサくんおはよう···」
エイシアが遠慮気味に挨拶する。
「おはようじゃないわよ!もう4時限目なの!
いつまでもサボってんじゃないの!」
息子を叱る母親の如く怒りをあらわにする。
当の本人は全く気にしない様子で、大あくびをする。
「っ〜〜」
「まぁまぁエアリスこの辺にしといてやってくれ」
すかさず、アレイ先生が仲裁する。
「先生も先生ですよ!なんでこいつをスルーするんですか!叱ってくださいよ!」
「いや、まぁ·····ねぇ·······」
エアリスの形相はまさに鬼そのものだった。
今にでも教室をぶっ壊してきそうなオーラだった。
周りのみんなも1歩退き、逃げる体勢になっていた。
そして案の定·······
「ライト・エンシェント······」
空に魔法陣を描き、放つ。
「ショック・スマッシュ!」
ボルト・メギスの1段階上の魔法を放つ。
流星はその後1時間再起不能となった。
◇
お昼の時間になり、それぞれが昼食を食べに散らばる。
「ふわぁ······お腹空いた·····」
アガサが背筋を伸ばし、弁当箱を取り出す。
「あんた、本能のままに生きすぎでしょ」
エアリスが欠伸をする、アガサに向かって言い放つ。
「だって、本能に従った方が楽でしょ?」
自分が正しいと言わんばかりに、食べながら言う。
今日も、エアリス、アガサ、エイシアの3人で中庭に行きお昼を食べている。
「それにしてもアガサくん、この前の魔法実施試験また1位だったよね。すごいな」
エアリスの眉がピクっと動いた。
「う、うん。ありがとう、エイシア」
先月行われた、魔法実施試験ではアガサが1位で、エアリスが2位だった。
アガサはいかにもやる気がなさそうにしていたが、圧倒的大差でエアリスに勝っていた。
それはエアリスにとって苦い思い出となってしまっていた。
「あ、エアリスも凄かったよ!ね?アガサ」
すかさずフォローを入れるエイシアだったが、傷口に塩だった。
「まぁエアリスの魔法は精度がいいし、威力も高いからな」
アガサもフォローを入れる。
でも、ダメだった。エアリスは目に涙をうかべ、
「もういいもん!どうせアガサよりダメだし!」
怒って、中庭から出ていってしまった。
「あーあ、まったくエアリスは········」
「ごめんね、アガサくん。私のせいで」
エイシアが手を合わせて謝る。
「いいよ、エイシアは何も悪くないから。」
(しっかし、こうなると厄介だなぁ。でも、行き先はわかる)
エアリスは幼い頃から、怒って飛び出すと決まった場所に行く。
「俺、エアリスを追いかけてくる」
そう言うと、アガサはある場所へと走った。
その頃エアリスは·········
(何よ!どうせアガサは私のことを下に見て、嘲笑ってるんだわ)
ある場所で膝を抱え泣いていた。
「私の方が努力してるのに··········」
エアリスは小さい頃から、努力を怠らなかった。
小学生の頃も、常に授業を真面目に受け、テストも頑張った。
でも···········上にはいつもアガサがいた。
アガサは授業を真面目に受けないし、いつも寝てばっかり。
なのに成績は常に上位。そんなアガサを許せなかった。いや、ただ嫉妬していただけだった。
(私の事なんて、どうせ··········)
そう考えると、涙が止まらない。
「エアリス?またここにいたか」
「アガサ?」
アガサとエアリスがいるのはエドワール高等学院の裏にある小さな丘の上の木の下だった。
エアリスは小さい頃から何か嫌なことがあると、すぐここに来て泣いていた。
そのことを、アガサは知っていたのだ。
アガサはエアリスの隣に座り。
「エアリス········お前は確かに、俺より弱いし劣っている」
「何よ、けなしにわざわざ来た訳?」
「まぁ、最後まで聞けって。小さい頃から俺と勝負して、負けてはここに来た。ほんとに厄介だったな」
エアリスは頬を膨らませこちらを睨む。
「でも、裏で努力してるのは分かってる。勝負に負けた次の日は庭で魔法の練習を日が暮れるまでしていた。俺は思う。お前はいつか報われる。俺を超える日も遠くはないさ」
(俺、かっこいいこと言ったな·······)
エアリスは黙って聞いていた。そして
「ふん、いつかじゃないわ。明日にでも超えてやるわよ!」
立ち上がり、アガサを指さして、宣言した。
「ま、頑張れよ」
立ち上がり、背筋を伸ばして欠伸をする。
そして、エアリスの頭にポンと手を乗せニヤける。
「子供扱いしないでよね」
エアリスは怒って、手を払い除ける。
「早くエイシア達の所へ行きましょ」
そう言い、小走りで行ってしまった。
けどその顔には笑みが浮かんでいた·········
気がした。
ここにて登場作者の天音ココアです。
2作品同時並行は辛いです。でも、好きでやってるから楽しいんですけどね。僕自身はこの小説の参考作品として、ロクでなし魔術講師と禁忌教典を参考にしてるんですよね。
あれ、面白い。ほんとに。
エアリスのツンデレ具合をどうしようか、ほんと困っちゃう。可愛く書けるよう努力します。
それでは、またどっちかの作品で会いましょう!
2月21日某所。