序章 劣等生?優等生?
ここは《創造の都》ステイシアにある、エドワール高等学院。
この学院は、魔法科、法学科、普通科の3つに分かれている。
そして魔法科1年4組の教室にある1人の男子生徒がいた。
「··············」
その男子生徒は机に突っ伏して寝ていた。
「あんた、いい加減起きなさいよ」
「··············」
隣の女子生徒が声をかけるも男子生徒は起きない。
机に突っ伏し、静かに寝息を立てて寝ている。
「おーし、お前ら全員席につけー!授業初めっぞー!」
1年4組の担任。イギス・ロイ・アレイ先生が入ってきた。
それでも、この男子生徒はピクリともせず寝ている。
そして、我慢の限界を迎えたのか、女子生徒が席を立ち。
「お、おい?何するんだ?」
アレイ先生が止めようとするも遅かった。
ガンッッ!
その女子生徒は寝ている男子生徒の机を思い切り蹴っ飛ばした。
「ぬぐぉっ?!」
男子生徒はびっくりして、椅子から落ちる。
周りの生徒は(またやってるよ····)という表情で現場を見つめる。
「あんたねぇ、授業始まってんの!みんなの迷惑になるんだからさっさと起きなさい!」
クラス一同はこう思った。
(別に迷惑はかけてない気が·······)
口にするのは怖いので、みんな黙って見つめる。
「ん·······あぁエアリス、おはよう」
「おはよう······じゃないのよ!いつまで寝てんのよ!」
「ごめん····昨日もたっぷり寝たんだけど、それでも眠くて」
目を擦りながら冷静に対応する、男子生徒。
この男子生徒の名前は、アガサ・ヒュール·グラス。
授業態度は決して良いとは言えず。いつも寝ている。
だが、成績はいつもトップで、魔法の腕はピカイチである。
だが、彼の脳内はいつでも睡眠欲で満たされている。
「あんた、1回電撃魔法でぶっ倒すわよ」
ここでアガサに怒っているのが、幼なじみのメーベル・ミア・エアリス。
真面目で律儀な性格で。曲がったことが嫌いな芯の強い女の子。
成績優秀だが、いつもアガサには劣ってしまう。
それが、許せないのか、何かとアガサに突っかかる。
「エアリス〜貴方が授業の妨害しちゃってるよ〜」
エアリスを宥めるこの女の子が、アイリス・ユーミア・エイシア。
とある上級貴族の娘だったのだが、はぐれ者(異能者)ということが発覚し、家を追い出されてしまう。
今は、アガサの家に居候している。
「そうだぞ、エアリス。席につきなさい!」
「あんた、偉そうに········」
エアリスの目がピクピクと痙攣する。
そして、右手を前に出し。
「ライトニング・エンシェント······ボルト·メギス」
そう唱えながら、空に魔法陣を描くと、アガサの方に一筋の電流が走り直撃する。
「がはぁっ!」
アガサ終了のお知らせ。
ボルト·メギスを食らったアガサは机の上に気絶する。
「先生、こいつはもう放って置いて、授業しましょう」
「あ、あぁ。そうだなエアリス」
アレイ先生の表情は少しばかり強ばるが、授業を進める。
◇
「アガサ······禁術は人のために使うのだ。決して私欲のために使ってはならぬ」
そういったのはアガサの祖父、カーギス・ロア。
自分の死ぬ間際にアガサに禁術を授けようとしていた。
「分かったよ、じいちゃん」
(禁術なんて教えて貰っても、何にも使えないっつーの)
欠伸をしながら、どうでも良さそうに聞く。
「禁術の名は□□□□□□」
アガサはその名前に聞き覚えがあった。
「?!それは前魔法歴5000年に滅びたはず····」
「···············」
祖父はもう答えることは無かった。
そして、その会話を最後に、祖父は息を引き取った。