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第8話:実家と元婚約者の評判(追放側の話①)

*****


俺は王宮でゆったりとくつろいでいる。どうやらロミリアはガーデニー家から出ていったらしい。婚約破棄してやったときの顔は本当に面白かったな。でも性格はうざかったが、あいつは見た目だけは良かった。遊び相手にでも残しとくべきだったか?


――わざわざ丁寧に話してやってたのに、ちょっと惜しいことをしたな……。


「あの……ルドウェン様」


思い出してたら、召使いのパトリーが話しかけてきやがった。こいつは王宮に古くから勤めている。


――ちっ、なんだよ。


パトリーはいつも人がのんびりしている時に話してくる。


「なんだ?」


「も、申し訳ございません。ここにルドウェン様のサインが必要なのですが……」


――ったく、めんどくせえな!


俺は書類だの、サインだのが大っ嫌いだ。いつものように、中身など見ないでサインする。


「ほらよ」


「あ、ありがとうございます。あ、あの……ルドウェン様?」


――なんだよ、まだ何かあんのかよ。


「あ?」


パトリーはもじもじしてる。ったく、うぜーなー!話したいことがあるなら、さっさと話せ、こののろま!


「わ、私ごときが申し上げるのは大変恐縮なのですが……。も、もう少し書類の中身を見てからサインされた方が良いかと……」


――ああ!?なんだこいつ、召使いのくせに調子乗ってんのか!


「てめえ!俺に文句あんのか!!」


「い、いいえ!めっそうもございません!申し訳ありませんでした!失礼いたします!」


思いっきり怒鳴ってやったわ。誰のおかげで生活できてると思ってんだ。ちっ、書類にサインさせられたせいで疲れたな。


――ダーリーんとこでも行くか。


俺は護衛たちを連れて、ガーデニー家に向かう。ロミリアがいなくなったから、もう気にせずダーリーに会えた。こんなことなら、もっと早く婚約破棄してやればよかったな。しかし、いつにも増して庶民のクズどもが俺を見てくるのはなんでだ。


「あの、ルドウェン王子様」


歩いてたら汚いババアが話しかけてきた。


――なんだ、このババア。汚ねえな。


「あ?」


俺が丁寧に話してやるのは、貴族のきれいな女くらいだ。


「ロミリアお嬢様とのご婚約を破棄されたとは、本当でございますか?」


――ちっ、もうクズ庶民も知ってやがんのかよ。きっとロミリアが腹いせに言いふらしたんだろうな。あのクソアマが。


「お前なんかに話すわけねえだろーが。さっさと道を開けろ!」


「やっぱりそうなんでございますね!なんてひどいことをなさる!あなたのせいで、ロミリアお嬢様はお家から追い出されたんですよ!」


ババアが俺の両腕を掴む。


――このクソババア!


ドガッ!ズザァァァ!


俺はムカつくババアの顔を、力いっぱいぶん殴ってやった。


「ひいいいいいい!お助けを!」


ハハハッ!バカだなぁ。


「ルドウェン様!さすがに度が過ぎますぞ!おばあさん、大丈夫ですか!」


なぜか、護衛の一人がババアを助けてる。


「おい、ブライアス!お前は俺の護衛だろ!なんで俺から離れるんだ!」


「ルドウェン様!いい加減にしてください!ロミリア様とのことだって……」


ちっ、こいつはなにかあるとすぐ説教だ。


「うるさい!お前はもうクビだ!そんなにそいつが好きなら、ずっとそこにいろ!」


ったく、何で俺の周りにはバカしかいないんだ。


*****


お義姉様がいなくなって、ホントに良かった。いつもいつも、礼儀を守れだの、世の中に尽くせだの、うるさくてしょうがなかったわ。あのヘンな教会だって、汚い庶民がたくさん来るから嫌いだった。


「ねえ、お義父様~。教会はもうやめにしない?」


私はお義父様にしな垂れかかる。


「ダーリーの言う通りよ、エドワール。庶民が私たちのお金をたくさん使っているのは気分が悪いわ」


お母様も賛成してくれた。


「そうだなぁ、わしもちょうど、そう思ってたところだ。これからいろいろと金がかかるだろうからな」


男の人ってホントに簡単。ちょっと色気を出して甘えればコロリ、なんだから。それに、今ガーデニー家で一番偉いのは、この私。なんてったって、ルドウェン様の婚約者ですもの。


「よし、早速召使いたちに伝えるか」


お義父様とお母様が召使いを集める。しかし、彼らは思いのほか反抗してきた。


「エドワール様、デラベラ様、私たちは反対でございます。先祖代々続いてきた聖ガーデニー教会を閉じておしまいになるなんて。あの教会にはガーデニー一族の思いがこもっているのですぞ」


たしかこの人は一番古い執事だっけ?


「いいや、聖ガーデニー教会は今日で廃業とする」


そうよ、その調子!


「なりません!あそこが最後の頼みになっている方々も多いんですぞ!」


「ダーリーが王宮に嫁いだらまた始めれば良いですわ」


――さっすが、お母様!


「なりません!」


――ウーン、しつこいなぁ、このおじいちゃん執事。


ちょうどその時、私の大好きなルドウェン様がやってきた。


――キャッ、ルドウェン様だ!もう、ホントにカッコイイわ!あれ?今日はいつもの護衛の人がいないのね。そうだ!ルドウェン様からもなんか言ってもらお!


「ルドウェン様!」


「やあ、ダーリー。今日もかわいいね。何かあったのかな?」


――今日もかわいいだって!ウレシーーー!おっと、いけないいけない。


「あのね、ちょっと聞いて欲しいの」


さりげなくルドウェン様にくっついて話す。


「……だから、ルドウェン様からも何か言って欲しいの。……おねがぁい」


上目遣いで最後のひと押し!


「わかったよ、ダーリーが困っているなら何とかしないとね」


ヤッター!やっぱりルドウェン様って優しいわ!庶民の人はルドウェン様のことを”気が荒い”なんてウワサしてるらしいけど、全然そんなことないじゃない。しょせん庶民の言うことなんて、アテにならないってことね!


「こんにちは」


「こ、これはルドウェン様」


さっきまでの威勢はどこへやら、おじいちゃんも縮こまっちゃって。


「話はダーリーから聞きました。私も聖ガーデニー教会の廃止に賛成です。ガーデニー家は、もう十分に務めを果たしたと思います」


言葉遣いもホントにきれい。


「ん……む」


さすがに王子様に言われると逆らえないみたいね。まるで私が言い負かしたみたいで気分がいいわ。


「ルドウェン様がおっしゃられているとおりだ。聖ガーデニー教会は本日をもって廃止とする!」


お義父様が言って、教会は正式に廃止になりましたとさ、ヤッタネ!


*****


このところ庶民の間では、ある話題でもちきりだった。


「おい、お前聞いたか?ロミリアお嬢様のこと」


「あぁ、もちろん聞いたとも。婚約破棄からの追放だろ?ひでえ話だよなぁ」


「何でもルドウェン様浮気してたらしいな」


「婚約者がいるのに普通浮気なんてするかぁ?」


「しかも、聖ガーデニー教会も廃止しちまったんだと」


「えっ、マジで?ロミリアお嬢様に病気とかケガを治してもらった人、何人も知ってるよ、おれ。なんでまた、そんなバカなことを」


「噂だとルドウェン様も賛成したらしい」


「私、ルドウェン様がおばあさん殴ってるところを見ました」


「実は俺も……」


庶民たちのウワサなど、彼らの知る由もなかった。

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