説明
「創!準備して来たよ!」
「おい、白雪姫、なんのようだよ」
そらそらと不機嫌なねおんがリビングにくる。
全員座っていたのでそらそらは俺の隣に、ねおんは桃の隣に座った。
「っし、説明始めるか。」
俺がそう言うと全員が俺に注目する。
「2年前に入って来た4人はさっきから気になってただろ。俺が作ったソファでくつろいでるアホ面は緋色の兄弟子であり、このハウスの建設者、古川 柳だ」
俺は真正面のソファに座る柳を指差して言う。
そして4人は目を見開く。
「………あの、いいですか。」
1番、冷静な真宵が控えめに手を挙げる。
「このハウスを建てたのって創くんじゃないんですか?」
真宵は“本当の事を言え”と脅してくるような目でこっちを見てくる。
「このハウスを物理的に作ったのは俺だ。だが、土地や金は全て柳のものを使った。」
腕を組んで真宵の方をチラッと見る。
「わかりました」
ふん、普段俺に敬語なんか使わないくせに変なこと言うからバチが当たったんだよ。
「へえ、じゃあ柳さんはずぅーっと裏で支えてくれてたんだぁ〜」
足を組みながら桃の淹れた紅茶を飲んで千歌はそう言った。
「千歌、行儀が悪いわ。緋色様のいる場でそんなことするのはやめなさい。」
千歌の隣に座る真宵が千歌を睨む。
………できれば「客の前で」と言って欲しかった。
「創くん、その…柳さんの事は知ってるよ。あの……3年間居なかったメンバーでしょ?じゃあなんで柳さんは帰って来たの?」
何か悪いことが起こるのかもしれないんじゃ、と言いたげな表情をする桃。
「あぁ、それについてがメインだ。まあ、準備の時間も込みで……1ヶ月後、くらいにメンバーが増える。」
そしてチラ、と柳に視線を送る。
何をするのか理解したようだがその表情は「えー、めんどくさい」と言いたげだ。
俺は柳を睨み、顎を前に突き出して「やれ」と支持する。
「うわ」
顔にも声にも出ている柳の気持ち。
「はあ、創くんがさっき言ってくれましたが“アンブレラハウス”のメンバーが増えます。ですがその子………黒雨持ちなんですよ。」
そう言い放った柳の顔はとても冗談を言っているような顔ではなかった。
「苗字は?」
「黒雨ですよ。これまた縁起の悪い」
やれやれ、と言うような仕草をする柳。
柳の言ったことはつまり技名と同じ苗字、と言うことだ。
そして“時鍵”と言う組織……俺の上司なんかよりももっと昔の時代を生きていた強い奴……俺等はそいつのことを「初代・王」と呼んだ。さらにそいつが持っていた技の名前も「黒雨」だった。
「随分と縁起の悪い子だけど……メンバーになるってことは此処に住むんでしょ?家族とか……大丈夫なの?」
「その子……黒雨ふわりは母親1人と暮らしています。……と言っても彼女はずっと眠っています。なのでふわりは病院に預ける、と言っていました。」
「なら大丈夫、よね」
ぼそっと緋色がつぶやく。
「ねーねー柳さん、名前でなんとなくわかったんだけどさ、性別教えてくんない?」
まったく千歌は………あれほど初対面の相手には敬語を使えと言ったのに。
「女の子ですよ」
「へぇ〜じゃあ女子の方が多くなるんだ〜」
柳が来てから無駄にテンションが高い千歌とは対極に少し、テンションが下がった。
確実にここには男手が足りていない。筋力のある奴がいないのだ。
全員サポート向きと言っても過言ではないだろう。
「柳さんはいつまでここにいるの?」
桃が柳に紅茶を追加する際に尋ねる。
あぁ、それは聞いておきたいな。
「そうですねぇ…仕事の量から言って2ヶ月、位ですかね」
桃にありがとうございます、と言う風に頭を下げ答えた柳。
まあ、この様子だと随分と仕事が片付いたように見える。
「ふう、そろそろ始めるか。」
話がいったん落ち着いて来たので、新人……ふわりの部屋を作りに行くことにした。
「じゃあ2週間ほど上にこもるから夕飯はいらない」
階段を登ろうとすると柳に呼び止められる。
「今回は僕も手伝わせてもらいますよ?創くん___________________頼みましたよ?」
そして何も言わず俺は階段を登る。
作業、開始