第13話 彩りルームシェア
つやつやと光沢を放つ白玉。
でん、と居座り存在感を放つ丸い抹茶アイス。
色彩を締まったものにする黒々とした粒あん。
一色はそれらを少しずつすくい上げ、木製スプーンの上に同居させる。そんな贅沢なルームシェアを少しの間目で楽しみ、恍惚の表情を浮かべてから、彼女はそれを口に入れた。
「ん~~~~~っ!」
彼女は口内に広がる冷気に顔を歪めつつ、それを咀嚼する。次第にその表情は、じんわりと笑顔に変わっていった。
「はあっ、最高…… 桃源郷はここにあったんだね!」
斜向かいの席に座る一色はそんな風に大仰なことを言いながら、彼女の前に置かれた特製白玉あんみつに拍手を送る。深い頷きも相成って『あわや泣き出してしまうのでは』という危惧も頭をよぎる。食べ物へのリスペクトに関して言えば、E組の太丸にだって負けていなさそうな奴だ。
「んあ」
俺から見て一色の右隣に座る雨地が、一色の方に顔を寄せ、無防備に口を開けた。一色は「しょーがないなーっ」と嬉しそうな顔をしながら、またしても木製スプーンに色鮮やかなルームシェアを完成させ、それを雨地の口の中に入れた。
「なるほど…… これは無敵ね」
一色ほどオーバーではないにしろ、雨地も深く頷き、感嘆の声をあげた。いつも通りの無表情だ。それを聞いて一色は「でしょーっ」と、無邪気に笑う。
そんな二人が織りなす、スウィーツの食べさせ合いっこなどという甘酸っぱいイチャイチャ青春ラブコメを、俺は頬杖をつきながら呆れた気持ちで見ていた。
「お前ら…… 今日の主役は誰か、忘れてないか?」
一色が、まん丸な目をぱちくりとさせて答える。
「やだなー、こーたろう!忘れるわけないじゃん!」
三度、一色があんみつにスプーンを伸ばす。スプーン上を絶妙な配色で彩り、その手を前方に伸ばした。
「はい、あーん」
彼女の伸びる腕に合わせて口を開け、カラフルな甘味を受け入れる。
「……流れでやってみたけど、あはは、恥ずかしいなあ」
じっくりと舌で堪能したそれを飲み込んでから__俺の左隣に座る鴬谷は、恥ずかしそうにはにかんだ。「美味しい」と呟いて眼鏡の奥の瞳をきらめかせる。
「恥ずかしがるうーたんも可愛いよ!やばいよ!頭おかしくなりそう」
「お前はちょっと落ち着け」
「孝太郎も彩花にあーんしてもらったら?」
「お前は黙っててくれ……」
思春期の男をからかうな。そんなもん、さすがに俺でも気を遣うわ。
そんな風に、年相応にピュアで純情なツッコミを入れる俺を構うこともなく、当の雨地は涼しい顔をしながら、自席に置かれたわらび餅を口に運ぶ。プルプルと揺れるわらび餅は何ともみずみずしい。口に向かうまでの道中で、少量のきな粉がさらさらと舞った。
「お前らなあ…… 恩人の鴬谷をさしおいて、いの一番に食い始めるなよ」
太陽が燦々と照りつける、日差しの強い7月2日。
学校最寄りの大型ショッピングモール3階のフードコートにて、優等生と三バカトリオは4人掛けのテーブルを囲っていた。
「一番の目的は鴬谷への労いだろ」
そう__労い。
このメンバーが集った一番の目的は、俺・一色・雨地(成績順)の中間テストの結果を心配し、早い内から親身になって勉強を見てくれた鴬谷へ感謝の気持ちを示すためだった。
一色の戦意喪失、雨地の脱走という度重なるトラブルにも嫌な顔一つせず付き合ってくれて、そして結果的に、我がクラスから1人も赤点を出さずに済んだことの功労者である。
聖母という比喩は過言じゃないだろう。
「聖母は過言だよ、孝太郎くん…… 私のことは気にしないでいいよ。それに早い内に食べ始めないと、アイスも溶けちゃうよ。孝太郎くんも気にせず、どうぞ」
「……まあ、鴬谷がそう言うなら」
俺は彼女に促されて、机上のシャーベットを口に運ぶ。キンキンな冷気が、あっという間に口内を制圧してゆく。とんだ独裁者だぜ。俺も先ほどの一色のように、顔を歪めてしまう。
……と思いきや、その独裁者は態度を一変させ、甘い顔を見せる。くどすぎないオレンジの味。独裁者は独裁者でも、着いて行きたいと願ってしまうぐらいリーダーシップのある優秀な独裁者だった。
要するにとっても美味い……
女子たちに評判だっただけあって、俺にもリスペクトの感情が湧いた。
「まあ、それは置いといて…… 一色」
「はい!」
無駄に元気のよい返事の一色。
「と、雨地」
「ん」
短く無愛想な返事の雨地。
見もしねえや。
「どうもお前たち二人は、鴬谷への感謝や労いの気持ちが軽い節がある」
「えー?そんなことないよぅ」
「誠に遺憾だわ」
そんな反論を繰り出しながらも、一色と雨地はなおも目前のスイーツをぱくぱくと食べ進める。無邪気にも口周りに、クリームやらきな粉をコーティングしやがって。
「ま、まあまあ。孝太郎くん…… 気にしないで大丈夫だよ」
鴬谷はどこまでも気遣いの人である。彼女の謙虚な姿勢を見て溜飲を下げようと試みるも、そんな謙虚な彼女のパフェはまだ来ていなかった。
「ねぎらい…… ね。ねぎって美味しいわよね。焼き鳥とねぎが織りなすねぎまのコンビネーションが、最近特に熱いわ」
雨地もいつも通り、どこまでもテキトーの人である。彼女らしく駄洒落で会話を始める流れに、今日も今日とて脱力する。
「対して、ねぎらいの『らい』だけど…… これってライ麦のことよね? 恥ずかしながら、ライ麦のエピソードが一つもないわ。ライ麦とは友達でもないし、どころか顔も形も趣味嗜好も何にも知らない」
「恐らくだけど、ねぎらいの語源はねぎとライ麦じゃねえよ。人違いだよ」
明確な語源を知ってるわけじゃないからあんまり強くは言えないが、多分そうである。
「ライ麦は寒冷地でも育つから、寒さで小麦が取れない地域で重宝したんだよね。懸命で力強いイメージがあって、素敵だと思うな」
「ライ麦の味方までして本当鴬谷はいい奴だな……」
どこまでも優しくて涙が出そうだぜ。
「そんな美空へ労いの意味も込めて、私から無益な長話をプレゼントするわ」
「どんな前置きだよ。対価になってないぞ」
俺のツッコミに構うこともなく(耳に届いていないのではとさえ思う)、雨地は語りを始めた。
「このメンツが揃ってする会話と言えば、そうね…… まず真っ先に浮かぶ第一候補は、3億円を手にした時の身の振り方だと思うけれど」
「もっと建設的な会話はあると思うぞ」
俺のもっともな指摘は、やはり雨地には届かない。彼女は構うことなく続ける。
「参考までに聞こうかしら。みんなは3億円を自由に出来るなら、どう使う?せーので言いましょう。せーの」
問いかけた雨地も含め、4人は答えを導き出す。息の合った行進で早送りや逆再生を再現するパフォーマンスさながらに、寸分違わず呼吸を合わせ__『貯金』と声を揃えた。
「……なあ。もっと、若者らしい夢を持とうぜ」
「それは丸っきり孝太郎にも言えるわね。あなたも貯金するんでしょ?」
「ぐ……」
確かに散財に憧れる気持ちもあるが、やはり堅実な生き方の方が俺の性には合うと思う。つーか3億円なんて持ってたら、調子に乗って余計に人に奢る金額が増えそうだ。
3億円がいかに巨額とは言え、使い続ければいずれは無くなるだろうし、いつまでも金持ち気分でいられるわけじゃない。
それに、そんな生活に慣れてしまえば、3億円を使い切ってからも、わざわざ借金してまで他人に奢らないと己の虚栄心を満たせなくなってしまうという話もあるぐらいだ。恐ろし過ぎる。
「……一色、お前はてっきり『甘いもん食いまくる』とでも言うと思ったけどな」
「3億円分のスウィーツは、さすがに1日じゃ食べ切れないよねえ」
こいつ、いくら分のスウィーツなら1日で食い切るつもりだ……?
「3億円なんてもらっても置く場所がない我が家は、ますます狭くなるだけだわ」
「預金をしろ」
きな粉が付着しないよう髪をかきあげながら、雨地はそんなことを言った。仕草の色っぽさとは裏腹に、相変わらずのボケた発言だった。
「身の丈に合わない大金だからね…… 有効活用する術を身に付けるまで、ないものだと思って貯蓄しておいた方がいいんじゃないかな?夏場のお弁当みたいに、無防備に置いておくことですぐに腐るものでもないと思うし」
すっとぼけたエースと四番はさておき、鴬谷はどこまで行っても真面目だな…… 雨地の戯れに、全力で向き合っている。
「じゃあ、みんなの貯蓄計画を知ったところで…… 昨日見た夢の話でもしようかしら」
「脈絡がない上にここまで興味を惹かない導入も稀だぜ」
「それはどうかしら?」
「何やら自信満々だが、その『昨日見た夢』とやらは、今までの会話の流れに関係するのか?」
「いいえ、全く。驚くほど関係ないわ」
「そりゃビックリだよ」
「それでも私は、一度し始めた話を見限るほど冷徹にはなれないわ。私が紡ぐ1文字1文字は、まるで子供のように愛おしい」
「その強い覚悟を止める術を俺は持たない」
どう足掻いたところで雨地の勢いを止めることが出来そうもないと悟り、俺は雨地に手を差し出すことで、話の続きを促した。考えてみたら別に、止める理由もないしな……
「テレビを観てて思ったのだけど、パン屋さんってたくさんパンがあるから毎日パン食べ放題でしょ?その一点のみでパン屋さんになりたいという夢を見たのだけれど、どうやら朝が早くて重労働みたいだから私には無理だと諦めたわ」
「思ってた夢の話と違ったし展開のスピード感がすごかった」
寝ている間の夢かと思ったら将来の夢(というにはあまりにも吟味が足りない理由ではある)の話だった。しかも、相槌の余地さえなく完結してる。
「お、おう…… としか返答出来ないよ。せめて会話のキャッチボールが出来る空間を残しておいてくれ」
「じゃあ、お店を変えましょう。文房具屋さんになれば、毎日文房具食べ放題ね」
「何でもかんでも腹を満たす糧とするなよ。心臓に名前でも書くつもりか?」
食道をマーカーで彩ったり腸に付箋を貼ったりするなよ。どんなビュッフェスタイルだ。
「文房具を食べるのはともかくとして…… 出来ることなら、恥の多い生涯の記憶を消したいものだけれどね。アレを使って。えーと…… なんて言ったかしら…… そう、イェッサー」
「……英語を使おうとしたことは、普段の雨地を知ってる俺からすればとても殊勝な心意気だとは思うけれど、それを言うならイレイサーだ」
「そうと言う地域も中にはあるみたいね」
「イェッサーで恥の多い生涯を消す地域はきっとねえよ。何を了解してるんだよ」
俺がそうツッコミを入れたところで、雨地は残っていた最後のわらび餅を口に入れた。話す者がいなくなったことで、沈黙が生まれる。当の雨地は澄ました顔で咀嚼をしながら、俺の方をちらりと見て『何か?』みたいな顔してやがる。そりゃねえぜ。
「……一度流したけど、恥の多い生涯だったのか?」
沈黙の気まずさから、俺はそんなことを聞いた。いつも通り、考えなしの発言である可能性も高いだろうが。それに雨地ほどの能力とキャラクターなら、どこへ行っても堂々と、自分を発揮出来そうなものだとは思う。
「まあ、そうね。『あなたは私の神様です』って言われたこともあるぐらいね」
「……それ、讃えられてるじゃないか」
「人は人であるからこそ人でいられるのよ」
「なんだそりゃ」
「ま、そんなことはどうでもいいのだけど」
「お待たせしましたぁ」
雨地と無益な長話を繰り広げていたところに、鴬谷が注文したパフェが登場した。
細長い形状のパフェグラスなので、ともすればパッと見、バケツ型のパフェグラスよりは相対的にスリムな印象を受ける。
が__縦に長い。
異様に長い。
細長のパフェグラスいっぱいにこれでもかと詰め込まれたカットフルーツやシャーベットの上に、豪快にとぐろを巻くソフトクリーム。その上を、噴火したマグマが山頂に滴る様のようなイチゴソースが覆う。
想像の倍デカイ。
鴬谷から見ると、向かいに座る一色の顔が隠れてしまうであろう、山盛りのパフェ。
そりゃ時間もかかるわけだ。
「……大丈夫か?鴬谷」
「これは…… なかなか」
一色や雨地にも引けを取らないぐらい甘い物が好きな鴬谷も、このパフェを相手には困惑の表情を浮かべている。
「だいじょーぶ!うーたんが食べ切れなくても、わたしがいるからね!」
そんな中、一色は腕まくりをして、そこそこのサイズのあんみつを食べた後とは思えないほどの食欲を見せる。そういえば注文時に鴬谷をそそのかし、鴬谷にやたらとこのパフェを勧めていたのは一色だったか。
これが目的だったわけか…… 隙あらば甘い物を摂取したがる奴だ。
「ちょっと驚いたけど…… うん。美味しそう。行けるところまで行ってみるね。じゃあ、いただきます」
鴬谷は丁寧に手を合わせ、軽くお辞儀をし、食べ始めた。パフェとの初対面時こそ戸惑っていたものの、今の鴬谷からはそこまでの恐れは感じられない。オーバル型の眼鏡の奥の瞳は、まっすぐに細長のパフェを見据えていた。
「美空が戦地に赴いたところで…… 何の話だったかしら?」
「なんだっけか」
「パフェがおいしーって話だよ!」
自らのスプーンを手に早々に加勢に向かう一色を横目に、俺は雨地の無益な長話に付き合うために向き直る。
「何の話でも構わないけれど、少なくともこのメンツでする会話が恋バナでないことだけは確かね。私も彩花も美空も、エピソードトークを繰り広げるには経験が乏しいってことは、4月頃には分かっていたわけだし」
4月の段階でそんな話してたのは、さすが女子というわけか…… 入学直後、教室の席が縦一列だっただけあって、すぐに仲良くなってたみたいだし。
「孝太郎は、まあ、無さそうだし」
「ないよねえ、こーたろうは」
そう吐き捨てる雨地に、口元を押さえながら一色も同調する。
「全く失礼な奴らだ」
メロスは激怒した。必ず、かの偏見にまみれた女子2名を除かねばならぬと決意した。
「メロスを巻き込まないでくれるかしら」
「メロスもとい、生まれついてのエンターテイナーである俺は、どんな時も他人を楽しませて見せる」
「それならどれほどの時間、私たちを楽しませてくれるのかしら?」
「聞いて驚け。カップ麺にお湯を注ぐと同時に話を始めたとして、数十秒手持ち無沙汰になるほどだ」
「それはビックリね。相当大きなカップ麺なのかしら?」
「1分で作れるやつだ」
「それはそれは、大したエンターテインメント性ね」
「鯉は食べられないよねえ」
俺と雨地の益体もない話に、これまた何も生み出さない一色のコメントが混ざる。そりゃ、恋バナは無理だ。
「……鴬谷はどうなんだ?そこらへん」
「え」
話を振るため鴬谷を見ると、眼前のパフェは4割ほど姿を消していた。すでにグラス内のフルーツやアイスゾーンに突入している。一色も加担しているとは言え、少し目を離したスキにすげえや。
「い、いや…… 私は……」
そう言って鴬谷は、何やら恥ずかしそうに下を向いた。鴬谷みたいに可愛らしくて、奥ゆかしくて、気遣いの出来るタイプなら、世の男たちが放っておくはずがないと思うんだがな。鴬谷が目を離したパフェを、一色が放っておくはずがないように。
「特に、普通だよ。うん、普通」
流れで質問したはいいものの、どうやらまだその辺りに踏み込めるほどに心を開いてはもらえていない様子だった。まあ、デリケートな話題だしな。
俺のように、チームメイト以上でも以下でもない異性にそんなことを聞かれるのも、気の進むものではないだろう。軽率だったと反省せねば。
「美空。早くしないと、彩花にパフェ全部いかれるわよ」
「うーたん!早くしないとわたしにパフェ全部いかれちゃうよ!」
「……あっ!もうちょっと食べたい!」
みるみるうちに消費されてゆくパフェを横目に、俺は残っていたオレンジシャーベットを食べ切る。
そしてしばらく、楽しそうにはしゃぐ女子3人のやりとりを眺めた後、俺はトイレに向かうため席を立った。
◯
トイレから出て席に戻ると、そこにいたのは鴬谷だけだった。一色と雨地の姿もないし、彼女たちのスクールバッグもない。
テーブルの上には千円札が2枚。
「あいつらは?」
「あ、孝太郎くん…… いや、うーん、えっと」
鴬谷が何やら口ごもっていると、俺のポケットのスマートフォンが鳴った。画面を見ると、雨地からメッセージが届いていた。
以下、その文面。
『彩花と共に不思議な小人を追っていたら魔法の国に紛れ込んでしまったので、もう今日は再会出来ないかも。今はなんやかんやで、歌えや踊れの大宴会中。そして気付けば異世界に飛ばされていて、魔王討伐に乗り出したところ。この戦いは長くなりそう。私と彩花の運命やいかに。明日の学校には行くわ』
「世界観が不明だ」
壮大な冒険活劇に身を投じたわりに、明日の学校には来るらしい。
雨地のよく分からないメッセージをよく分からない気持ちで眺めていると、もう一件彼女からメッセージが届いた。
『私と彩花はこちらの世界のことで手一杯のため、そちらに残った美空のことをお願い。あなたが守ってあげて。具体的には、私と彩花がいなくなったことで退屈になった彼女を、孝太郎のエンターテインメント性を持ってして楽しませてあげて。私には具体的なことなんて、何一つとして分からないけれど、二人で買い物とかすれば、なんやかんやでこちらの世界とか、その他諸々に、平和が訪れるんじゃないかしら。私にはよく分からないけれど。じゃあ、後はよろしく』
「ますます意味が分からん」
メッセージの文面を鴬谷に伝える。彼女は何やら、困ったような恥ずかしがるような、そんな笑顔で聞いていた。
「……だってさ」
「もう、響子ちゃんってば……」
「何か言ったか?」
「い、いや!別に!何でもないろ」
「そうか。何でもないろか」
「か、からかわないでよう……」
台詞を噛んでしまった鴬谷をいじると、彼女は恥ずかしがるように手で顔を覆った。ごめんごめん、と軽薄に返事をすると、鴬谷も次第に笑みを滲ませた。
「じゃあ、その…… 買いたい物があるから、付き合ってくれると、助かるかな」
「おう。荷物持ちでもするよ」
俺のエンターテインメント性など微々たるものではあるが、任命されたのでは仕方ない。
彼女の退屈を紛らわす、壮大な旅に出よう__
……という大げさな台詞選びは、雨地の影響を受け過ぎかな?




