第5話 個性豊かな登場人物達と即席パーリィー
そうして俺は次の授業である、戦闘野外訓練……略してお外deプレイに赴く事にした。本来なら科ごとにそれぞれの得意分野を生かし訓練するわけなのだが、今日は『勇者』『賢者』『魔法使い』などすべてが揃う合同授業であった。
これは魔物と戦闘する際の仲間行動の意味も含まれている。勇者は剣などで前衛攻撃を、魔法使いは主に攻撃魔法で後衛攻撃を、そして賢者は回復や戦う仲間の補助魔法の役割を担っている。まぁこの他にも色々あるのだが、面倒なので割愛させてもらうとしよう。……別に今設定考えながら書いてるとかじゃないから勘違いすんなよ。
「おいタチバナぁ~。そろそろ読者への説明は終わりにしねぇか?」
どうやら俺の目の前でスタンバっていたアメリア先生が、俺の読者への地の文説明に対してブチ切れ5秒前のようである。
正直さすがは元勇者と言うべきなのか、現役を退いた今でも雰囲気がヤバイ。パッと見だと髪が長くて美人でスカート短めのビッチビチのお姉さんなのだが、目と口が真剣そのもの。……あと剣デカすぎ問題発生中。
俺は何故刃を潰した訓練用の剣ではなく、実戦用である本物の大剣を持ち出しているのかをそれとなく聞いてみる事にした。
「あの先生……何で両手持ちがデフォの大剣を装備していらっしゃるでしょうかね? い、一応は授業というか訓練なんですよね?」
「うん? ああ……ま、それだけやる気ってことじゃねぇのか?」
たぶんその『やる気』とやらは漢字で書くとこうなのだろう『殺る気』っと。
「それによぉ~一応は『訓練』って体裁だが実際の戦闘にゃ~事故はつきものだしなぁ~。間違って腕や首を飛ばしちまっても問題ねぇだろ? 違うか?」
「(おっほぉ~♪ アメリア先生は訓練の名の元に俺をこの機会に葬り去るつもり腹積もりのようだぞ♪)」
どこでそのスイッチが入ったのか知らないが、アメリア先生は訓練の名の元に俺を葬り去り事故の線で片付けようと画策しているようだ。
「せ、先生! 即席ですがパーティを組んでもいいですか? ってかいいですよね!!」
「おい、待……」
俺はこのままではただ黙って殺られるだけだと思い、アメリア先生の返事を待たず近くにいる生徒達を取り込み即席麺ならぬ即席パーティを結成すべく、普段からよく喋る友達へと声をかける。
「アイ! 今すぐ俺の仲間に……」
「えぇ~やぁよぉ~っ。そもそも遅刻してきたケンジャが悪いんでしょうが!!」
『……マスターどうせだったら、あっちのアメリア側に参戦しましょうぜ♪ それがイイ、それがイイ』
などと幼馴染は自分を棚上げしつつ軽く断わられたしまい、挙句クソワンドは未だ小者感満載で俺のことをアンチフォローされてしまう。
「くっ!? ほ、他に……他にはいないのかっ!!」
『賢者ではダメだ』そうクラスメイトを見限っ……
「ニッ♪」
「……そ、そうだ魔法使いや勇者クラスの中から選べばいいよな!!」
……何か途中変な挿絵描写が入ったが気にするな。あれに関わり合うとロクな事がないのからな。
「おいおい、ケンジャ。どうして一瞬俺と目を合わせた瞬間逸らしてんだよ? 思春期真っ盛りなのか、よっと! んん~っ♪」
「ぶっ! あ、アレックス先生……ちょっお~っ!! 何で首筋に鼻押し当ててんっすか!?」
ただいまアレックス先生が俺の肩を抱き寄せながら、クンカクンカっと首筋あたりの匂いを嗅がれている。
まぁここまで説明補足すれば既にお察しはつくだろうが、アレックス先生は男色家なのだ。ある意味で家繋がりで『武道家』の親戚とも言えかもしれない。昔は前衛防御役として鎧や盾などを一切使わず、己の筋肉のみで味方を守っていたとか。仲間内からは『筋肉防壁』と呼ばれ、体の良い盾代わりに使われていたとか。まぁ本人もドM属性が付いているとか言ってたので、両者にとってウィンウィンっとやや機械チックな関係だったのかもしれない。
「いやいやいや、いつも言ってますけど俺はノーマルですからね!! そもそもアンタ先生なんだから生徒に交じっちゃダメでしょうがっ!!」
「おいおい、俺に服を脱げって言うのかよ? ははっ。ケンジャは相変わらず気の早いヤツだなぁ~♪ ああ、いいぜ……(オマエにだけ特別みせてやるよ……ふぅーっ)」
「(ぞわぞわぞわ)ちょーーーっ!!!!」
俺の返事を聞かず……っというか一切合切の会話が成立せず、アレックス先生はヤル気になったのか着ていた服を脱ぎ始めていた。あと俺の耳元で甘い言葉を囁き、息を吹きかけてきた。……正直、数日はこの悪夢に魘されるかもしれない。
「よっと。ああ、確かに生徒の仲間に先生が仲間に入るのはマズイ……か。なら俺はケンジャの応援をしてやるからな(ウインク♪)」
「ははっ。ええ……そうですねー」
俺は瞳の色と力を無くし、ややレイプ目のようにしながら適当な生返事をする。あとなんかアレックス先生のルビ振り交じりのセリフがおかしいのは気にするなよ。ってかこれを読んでる読者達もそろそろ数話前からのセリフ全部を誤字報告とかしてもいいんだぜ。そしたら誤字修正の名の元に読者からの大義名分を得てヤツの存在ごと消してやるわ!
『…………』
だが読者からは一切の誤字報告が入らず、物語はそのまま進んでしまうのだった。
「あっそれ、け・ん・じ・ゃ! け・ん・じ・ゃ!!」
「もう一つオマケに、け・ん・じ・ゃ~っ!!」
「…………」
アレックス先生が上半身裸で俺の名を叫びながら応援している。しかも何故か左右反転の技術を生かしての挿絵を導入され、アレックス先生は見事な開脚してながら今にも宝物が見えそうになっていたのだ。おい作者、この物語本当に大丈夫なのかよ!!
未だ続くアレックス先生の賢者コールを無視して魔法使いクラスにいるアイの友達である女の子に声をかけることにした。
「おいダリア! 俺の仲間に入れよ!!」
「……うん? ああ、無理無理。だって今忙しいもん……あっこの動画超ウケるー♪」
そう言いながらダリアは一切俺の方を向かず、スマホ片手に板チョコを頬張っていた。しかも何やらネットで動画でも見やがってお楽しみのご様子。
「(ええいチクショーめ!! 何で授業中だってのにスマホ出して遊んでいやがるんだよ!?)」
実はこう見えてダリアもアイに劣らず魔法使いクラスではトップ成績の為か、学園の中でもかなり優遇されているらしいと聞いたことがあった。
基本的にこの学園が設立された目的は『魔王討伐』が主であり、学園を卒業すれば嫌でも魔物と生死をかけて戦うことになるのだ。またそれと同時に緊急時には人手不足のため、学園生と言えども戦場に駆り出されてしまう。だから常日頃から明日をも知れぬ学園生達はその実力に応じて授業などが免除されたり、少々悪い事をしても優遇される傾向にある。
ついでに言っておくと学園の維持や授業料、寮費や食費などそれら費用のすべてはこの世界に住人の税金によって賄われている。それはこの世界の秩序を保っている『世界政府』と呼ばれる機関がそう定めている。
「……ってそんな読者への補足説明はどうでもいいんだよ!! どうせ全部が全部、作者の野郎の後付け設定なんだしな!! ってかダリア今だけでも仲間になってくれるなら、終わった後で『クランチ入りのチョコ』を買ってやるぞ」
「(ピクッ)」
前にアイからダリアは大の甘いもの好きだと聞き、試しにそう言ってみたら動きをピタリと止めこちらを向いた。
「……にふぁいね」
「へっ? あ、ああ分かった二枚だな!」
「んっ」
ダリアは齧っていたチョコを咥えて左指でVサインをしてそう言った。口にモノが入っているためか、やや聞き取りづらかったがすぐさまそれがクランチチョコ二枚を指している事だと気付き頷いた。正直板チョコ二枚程度で『現魔法使いクラスのトップ』を仲間に出来るのもなんだか拍子抜けだが、この際ダリアが仲間になってくれれば心強い。
「……準備を」
そう呟くとダリアの服が光り出すと同時に先程まで学園の制服が魔法使いの衣装へと早代わりしていた。紫色が好みなのか、全体的に紫の布地にこれまた紫色の花などを基調としたドレスを身に纏っていた。
……だが気だるいのか、ダリアはやる気のない感じで髪の毛を弄り出している。
「(こんなんでほんとに魔法使いトップなのかよ?)」
「ふっ……ならばこの俺もキサマのパ~リィ~とやらに参戦してやろうではないか!」
そんな心配を他所に背後の勇者クラスから声をかけられた。
「勇者クラスの……カイルかよ」
ソイツを見る間もなく声だけで誰かを判断できたのだが、一応目に入れることにする。あと何でパーティの部分が外人ばりに発音良いんだよ……。
「なんだ俺では不満なのかケンジャ?」
「…………不満じゃねぇけどさ」
一応このカイルも勇者クラスではトップ成績の生徒だ。だが何かと俺に突っ掛かって来て喧嘩を売ってくるのでいけ好かないヤツ。まぁそれも……
「ああ、アイさん! なんと今日も美しいことか。貴女の美しさは何よりも勝るもの。そう例えるなら早朝の草に貯まる朝露のようにも……」
「そ、そうなんだ……。あははっ……あ、ありがとうー」
カイルのセリフ途中なのだが、ウザいので途中削除することにしよう。ってかカイルのヤツはどんな例えしてんだよ。アイが花でも草でもなく、朝露だって言いたいのか?
まぁ見て判るとおりカイルはアイの事が好きなのだ。しかも毎回毎回歯の浮くようなキザなセリフを引っ提げて絡んでいる。アイにはその気はまったく無いのでいつも困り果てていたのだ。たぶん名乗り出たのもアイにアピールするつもりなのかもしれない。
こうして俺は心強さよりも不安さが勝っている仲間を二人得て、アメリア先生と対峙するのだった……。
不安な即席の仲間を得つつ、第6話へとつづく
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