第3話 幼馴染は新種の魔物?
レンガが敷き詰められている街中をオレとアイはお手手繋いで仲良く駆け抜けていた。
「賢者のせいで完全に遅刻しちゃったじゃないの! 責任(生涯掛けてね)……ち、ちゃんと取りなさいよね!」
「分かったからちゃんと(この遅刻の)責任くらい取ってやるから!! それより急ぐぞ!!」
何故だか分からないがアイは走っているにも関わらず、顔を真っ赤にさせ下を向きながら俺に手を引っ張られ急ぎ学校へと向かって行った。そしてアイが握る右手が先ほどよりも少しだけ強く握られると、何だかそれがちょっとだけ心地良かった。
「はぁはぁ……ち、ちょっと待てよアイっ! オマエ……は、速すぎだよ(ゴクリッ)。走るの速すぎだってばぁ~っ」
俺は犬の体温調整ばりに『はぁはぁ』と息もセリフも絶え絶えに、いつの間にか立場を逆転させている幼馴染にそう抗議した。
「私が速いんじゃなくて、ケンジャの体力がないのが悪いんでしょうがっ!!」
先程までは俺がアイの手を引っ張っていたのだが、俺の体力は学校成績で『C判定』。対してアイは『S判定』であり戦力の差がモロに出てしまっていた。
如何せん勢いだけならまだオレの体力にも出番はあっただろうが、長丁場どころか中丁場の時点で個々の能力差がはっきりと出てしまう。これだからチート能力を持つと言われるメインヒロインわ!! そろそろ主人公である俺のほどほど能力を見習えってんだ!
※中丁場=『オレ者賢』独自の語句。学校までの登校路なので、長くはない。登校シーンだけで2話も割いてるけど……
作者>Q.件先生長くはないよね? 読者>A.件先生超長いっすw
っとまぁなんやかんやの出来事があり、俺達は……
「さぁ~てっ、学校に着いたわよ!! ってケンジャいつまで地面とお友達になってるのよ?」
まだ説明の途中なのにアイがセリフを言いやがった。あんま小説の摂理を無視すんなよな。下手すりゃ作者の野郎に干されるぞ。……まぁすっごい今更感半端ないけどね。
「…………」
俺はは途中から散歩に行きたくないペットを飼い主が無理やり首のリードを引っ張り、引きずりながらに強制お散歩をさせた時の如く『ズサズササササッ!!』っと摩擦で火が出んばかりの勢いで地面を擦るようにアイに手を、いや体ごと引きずられながら学校まで連れて来られた。実はその間にも電気抵抗のΩのようにささやかながらに記号みたいな口真似をしながら抵抗を試みたのだが、走るのが速いせいかまったくもって付け入る隙がなかったのだ。
そんな幼馴染のおかげか(実は既に大遅刻しているわけだが)いつもよりも少しだけ早めに学校へと着いたのだった。だがその代わり俺の服と体はお堅いレンガを敷き詰められた舗装路の餌食となり、ボロッボロッ状態だった。
「ちゃんと聞いてるのケンジャっ? って何でそんなボロッボロッの捨てられたボロ雑巾をさらに数年放置されて風化してしまったような姿はっ!? い、一体誰がケンジャをこんな姿に……もしかして魔物っ!? 魔物に襲われたのね!! 私のケンジャになんてことを……ゆ、許せないわ!!」
アイはそんな長いセリフを一息で言うと、何故だか野生になりつつ盛大な勘違いを始めた。そんなアイに対して俺は苦言を示すかのようにこんなことを投げかける。
「俺は……幼馴染という『魔物』にこんな姿にされたんだよ……」
っと笹屋本店くらいささやかながらの抵抗よろしく、また嫌味も含めるようアイにそう言ってやった。
※笹屋本店=『ただい魔!』独自のお店。パンダさんの為に毎日『笹』を供給しております!
「オサナナジミ……ね。私は聞いたことない名前ね。そんな名前の魔物なんて初めて聞いたわ……もしかして新種の魔物かしら?」
アイはアゴに右手の指を当て、可愛らしげに首を傾げていた。もはや俺にはその答えが本物のボケなのか、はたまた解ったうえでそんな風に恍けているのか、よく分からない。
『マスター……幼馴染という『魔物』はですね…』
「えっ? 何シルヴィ? もしかしてオサナナジミについて何か知ってるの!?」
「(お~魔法の杖もさすがにこの主の蛮行は見るに耐えなかったか! うんうん、主に言ってやれシルヴィアよ!!)」
俺はようやく味方を得た気分になり、シルヴィア先生を応援しようと思ったのだが…、
『……この男がオサナナジミという『魔物』だったんです! (声だけドヤ)』
「えーーーーっ!? ケンジャが魔物だったっていうのシルヴィ!?」
ワンドは声だけでドヤ顔(ある意味ドヤ声)を決めつつ、対して言われたアイは戦後最大に驚愕していた。
「俺は主人公どころか、『魔物』扱いなのかよ……」
うん、前々からシルヴィアに嫌われてる嫌われてるとは思ってたけど、ここまでだったとは……。
※戦後=去年アイパパが魔王を倒して以来を指す。
『そうですそうです! この男は魔物…いや間男です! ある意味では『間王』の親戚みたいなものです!! (声オンリーのドヤ顔)』
「そ、そんな……け、ケンジャが……ケンジャが! ……魔物で間男で、しかも……『魔王』だったなんて」
「(あのさ、そろそろオレもツッコミ入れてもいいよな? あと、アイ。その顔はメインヒロインが絶対にしてはいけない顔文字表現だぞ)」
俺はもうコイツらのボケに対して付き合いきれず、また件が長いと読者からクレームを付けられることを恐れ戦き、本邦初であろう人とワンドのコラボダブルツッコミを入れることにした。
「オマエらいい加減にしろよな! 適当な会話ばかり取り入れやがって!! あと言葉のマジックが酷す……」
小説界の常識をぶっ壊す(予定)で話題な奇才scarletが放つ最新作『幼馴染は魔王様♪』……あなたは世界を救ったワンドの活躍をしかとその目に焼き付けることになるだろう。近日公開予定!! カミングスーン♪
※そのような作品は存在・執筆はしておりませんのであしからず。 by作者より
「……だっ!!」
何かさ、今俺が人とワンドのコラボダブルツッコミしている最中に架空の宣伝入らなかったかい? どうやら俺のせっかくのダブルツッコミは作者の野郎に邪魔をされ不発に終わってしまったようだ。
「さぁ~て、そろそろ本編を進めましょうかね♪ ね、シルヴィ♪」
『イエスマスター♪ 読者からクレーム付く前に、こんなモブ男は放って置…いえ捨て置いて学校の中へ入りましょう♪』
「…………」
アイとそのワンドは地面とお友達になっている俺を置いて、いや捨て置いてさっさと学校の中へと入って行ってしまった。
その途中、
『今日の日替わりランチなんだと思うシルヴィ?』
『ワタシは何でも好いですが、デザートにバニラアイスがあると嬉しいです♪』
『もう(笑)まぁ~たバニラなの? チョコクッキーも美味しいんだよ♪』
『それは解っているのですが、その他の武器と好みが被ってしまうので……』
『も~う、なによぉ~、好みが被るてぇ~、どっかの作品から乱入してくるって言うのシルヴィは? ほんとおかしな子ねぇ~♪』
『いえ、マスターこれは大切な事柄なのですよ……』
などと楽しげな会話をしていた。
「もしかしてさ……主人公っていらない子なのかな? (きょろきょろ)」
俺はさながら捨てられた子犬のように、雨風を凌げるダンボールはないかと周囲を見回してしまうのだった。
※いりますいります(笑) これからあなたのほどほど能力で、魔王に! いいえ、世界に立ち向かうのです!! by作者よりの超激励
もしお読みになって面白いと感じていただけたら、『ブックマーク』や下記にある『評価』などをしていただけたら励みになりますのでどうぞよろしくお願いします^^