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ドラゴンすくらんぶる!  作者: 葉月 都
第壱拾
3/94

其之二

少し長めです。

佐久から話を聞いた後、きいが目を見開いて、ありえない、という口調で言った。



「え?マジで?」



パチパチときいが目をしばたかせる。



「ああ。マジで。」



しゅるしゅると器用におそばを食べる佐久。



「ここの地域にいるの?あの子が?!」



思わず大きな声を出してしまうきい。


話の内容は、二十七族生の龍精にはとても重要なことであった。

二十七族生の龍精に課せられる仕事。


その中の一つが、"捜索"なのだが。


佐久が言っているのは、後者の仕事のことである。




「ごちそうさまでした。」



ガタリと音を立てて、佐久は立ち上がった。



「きい、ちょっとおいで。」

「?」



なんとか食べきったきいも、椅子から立ち上がって佐久の後を追いかけた。




きいの言っていた「あの子」とは、龍精として生まれてきた少女の中の一億分の一以下の確立で、この世にやってくる。

その名を、



「封じの姫」



という。

その封じの姫は、『封じ込めの力』という不思議な力を持っている。

"封じ込めの力"とは、何かを封印したり、逆に解いたり。

また、結界を張ったり、別の次元に一つの空間を造りだすことができる。

力の強い封印でも、封じの姫には関係ない。どのような封印でも解くことができるのだ。


その力をなぜ龍精が求めているのかは、後々分かってくる。





「それで。封じの姫がここにいるってなんで分かったの?」



そば屋から出てくると、住宅街の中をゆっくりと進む。

きいは、いまだ疑いの視線を変えない。



「どうやら、あの占いで出たんだと。」



ははは…と苦笑いをして、佐久が言う。



「へーぇ。」



特に気にならない様子で、きいは返事をする。

そのあとも、睦月寮に着くまで話した二人だが、(佐久がそのほとんどであったが)近くなってから佐久が唐突に言った。



「そういえば、きい。今日学校じゃなかったか?」



コロンコロン、とどこかで八時を知らせる鐘がなる。



「あ!」



真っ青な顔をして、きいが走り出す。



「き、きい?!」

「佐久兄、じゃあな!」



大急ぎで寮の中へ入っていくきいを見ながら、佐久はつぶやいた。



「きいって、たまにおっちょこちょいな所があるよなぁ…まあ、そこもイジリがいがあるけど。」



そして、そのまま料の前を通り過ぎて、どこかへ去っていった。





水色チェックのネクタイに黒のジャケット。そのジャケットには緑色のタータンチェックの袖。水色のズボン。

まるで警察官の制服を学生用に直したような制服に身を包み、きいは皐月学園へと向かう。



「あれ?きい。おっはよー!」



教室に滑り込んできたきいを見て、同級生で右隣の席の鳴海なるみが言う。



「ん。」



まだ先生は来ていなかったようで、静かに自分の席に着く。



「どうしたのよ、珍しいじゃん。」

「今朝は用事があったから。」



佐久のようににやにや笑う鳴海に、きいはいやそうな顔をする。


きい達の通う、私立皐月学園には、普通の人間も龍精もいる。確率といえば普通の人9:龍精1、ぐらいだ。

ちなみに鳴海は普通の人間である。




少しすると先生が入ってきた。後ろには、なぜか一人の少女。



「おー、お前ら。今日は新しい転校生を紹介するぞー。」



先生がそう声をかけると、その少女が少し顔をあげて言った。



七橋巴樹ななはしはぎです。よろしくお願いします。」



新緑色の瞳にさらりとした長い金髪。小顔で、少し小さめの身長。

はっきり言って、可愛い系の美少女だった。


ぺこりとその少女が頭を下げると、教室に「よろしくお願いしまーす」という声が響く。

その後、クラス全員が自己紹介している時、きいは思った。



(この子…もしかして…)





巴樹は、きいの左隣の席になった。



「よろしくお願いします、信重くん。」



小さく微笑む巴樹に、きいは小声で気になっていたことを聞いてみた。



「あのさ、七橋。」

「巴樹でいいですよ?」

「それなら、巴樹。あんたって、龍精、だよね。」



あの時感じた不思議な雰囲気。

なんとなく、巴樹の周りで龍の力を感じているのをきいは見逃さなかった。



「あ、え?」



ポカーンと口を開ける巴樹を見て、きいは確信する。


(あ、これ当たったわ。)


図星のようで、慌てふためく巴樹は、きょろきょろと視線をさまよわせる。



「ななな、なんで知ってるんですか?!」



あわわわわ…とあからさまに動揺する巴樹。



「だって、俺もだもん。」



机に肘をついて巴樹を射すくめるように見るきいに、ますます動揺を隠せずにいる。

しばらく脳内がパニックになっていたようだが、しばらくして落ち着いてきたのか、巴樹はたどたどしく自己紹介を始めた。



「えええええ、えっと……わ、私、は、二十七族生の龍精の一人…風龍精です。これから、よろしくです。」



ぺこんとお辞儀する巴樹に、きいは姿勢を正して言った。



「俺も、二十七族生の空天龍、飛龍精だよ。それと、巴樹。敬語はいいから。」



ふっと小さく笑って、きいは立ちあがった。



「んじゃ、よろしく。」



そう言い残すと、男友達の席に向かうきい。

その様子を見ながら、巴樹は思った。


(な、なんだか、大変なことになりそ…)


すると、きいの席を一つ挟んだ右隣の席のから、巴樹に声がかかった。



「ねえねえ、七橋さん!」

「うわぁ!」



そう。鳴海である。



「さっそくきいと仲良くなったね~。」

「え?えと…仲良くなったというか……」



弾けたような笑顔に、たじたじする巴樹。鳴海はきいの方を見て、つぶやくように言った。



「きいね、滅多に女の子と話すことがないんだよ~。女子が嫌いというかさ…。しっかり者のくせに。でも、女子から大人気でさ。いとこの人もかっこいいし。だから珍しいんだぁ、あいつが自分から話しかけるなんて。……七橋さん、きいのこと、よろしくね!」


「ええ?なにがですか?」



くすくすと笑う鳴海に、巴樹はきょとんとして首をかしげる。


(この子、天然かな?それとも鈍感?!)


またもやあわあわとなっている巴樹を見て、鳴海は内心苦笑いしていた。



【ドラすく登場人物紹介こーなー!】


神霊佐久しんりょうさく

二十歳。AB型。身長175、4cm。

四季龍、春龍精。

武器 刀「春花はるか


きいのいとこ。

温和な性格ではあるが、たまにドS並の小悪魔を発揮。

甘党で、辛い物好きのきいとは反発することもある。

佳穂には少し甘い。

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