其之零
あらすじという名のプロローグです。
書いていて分からなくなりました笑
「其之一」から後を読んでいただいた後の方が、意味がよくわかります。
昔々あるところに、風華という巫女がいました。
彼女は、家である神社を、一人の姉とともに守っていました。
彼女の神社がある都の人々も、風華をとても良くしてくれました。
そのため、風華は毎日をとても幸せに暮らしていました。
ところがある日。
風華の住む都を、深く、濃い"闇"が覆いつくしてしまいました。
この"闇"は、人々の"負の感情"から出来たものです。
そして、この"闇"は、多くの人々の力を吸い取り、大きな大きな"負の感情の塊"を造り出しました。
風華は悲しみました。
愛した都、人……………そのすべてが"闇"によって壊されてしまったからです。
"闇"が造り出した"負の感情の塊"は、人々の力を吸い取ることで、人の形に変化しました。
それは、まさに悪魔のようでした。
そして、わずかながら生き残った人々は、"負の感情の塊"のことを、こう呼びました。
闇から生まれた異端児、【黒の御子】と…………………
黒の御子は、正の感情というものを持っていません。
冷酷無比で、無表情。
まったく人を殺すことに罪悪感を感じていません。
殺した人に詫びることもありません。
なにも、感じていないのです。
風華は、彼を"封じる"ことを決めました。
自らが持つ不思議な力、"封じ込めの力"を駆使して。
正直、黒の御子との闘いは楽ではありませんでした。
黒の御子の方が上なのか、風華の方が上なのか、はたまた互角なのか……………………………………………………。
ですが、どれであろうとも、結果は同じです。
風華が勝ったのです。
黒の御子は、半永久的に封印されました。
ただし、風華には一つ気がかりがありました。
それは、黒の御子がかけた"呪い"です。
その呪いは、【この戦いにかかわった者すべてと、また再び会いまみえ、同じ戦いをもう一度繰り返す】というものでした。
だが、都の人々は喜びました。
風華は、その功績をたたえられ、高い位に就かないかと誘われました。
でも、風華はそれを断りました。
なぜなら、風華にはわかっていたからです。
黒の御子との戦いで、風華は自分自身の力を使い果たしてしまったこと、
そして、もう、自分に残された時間は少ないということも。
風華は、最後の力を振り絞り、とても難しい儀式を行いました。
それは、来世にまで自分の力が受け継がれることを知り、黒の御子との確実な戦いを見越しての、大きな大きな仕掛けでした。
風華は、その儀式を成功させると引き換えにするかのように息を引き取りました。
二十歳という若さでした。
都の人々は、それをとても悲しみました。
風華の葬儀は、三日三晩行われました。
日ノ本全体が、風華の死を悲しんだのです。
そして、都の人々は、風華のことをこう呼びました。
封じ込めの力を操る巫女、【封じの姫】と。
時は流れ、2001年某月某日。
オギャァ!オギャァ!オギャァ!
「まぁ!可愛い女の子ですよ!!」
ある病院で、新たな命が土の中から芽吹いた。
生まれたばかりの赤ん坊を抱き、母親らしき女性は、涙を流して言った。。
「ありがとう………ありがとう!……………生まれてきてくれて、本当にありがとう!!
私の可愛い我が子、【巴樹】!!!」
そして、その年の別の日。
オギャァ!オギャァ!オギャァ!
「まっ!可愛い男の子だことっ!華波さんっ、男の子ですよっ!!!」
「本当に?!ああ、生まれてきてくれてありがとうね…………あなたににて、イケメンに育つといいわね!」
別の尊い命が、大きく芽吹いた。
「ああ……………いい子に育つといいなぁ!……………【葵】、よろしくな!!」
物語は、ここから始まる。
甘酸っぱくて、でも少し悲しく寂しい、
"運命"という縛りに束縛された、この二人の男女。
今、日本を震撼させる、光と闇という相反する二つの力が交わる時、この二人は交わることになる。
会わなければならないという運命と、想わなければならないという運命、
通らなければならない運命は、今、ここにある。
避けては通れない道。
避けることはできないのだ。
運命に沿うか、運命に逆らうか、はたまた……………………
それは、彼らたちにしか、分からない。
龍の力が交わる時に、強大な力は発せられ、運命をも変えてしまう。
その強大な力とは、一体なんなのだろうか。