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加藤 恭一
さあ、やってきました。モンスター創造のお時間です!
え?恭弥?あいつは……いいやつだった……。というのは冗談で、奴には戦闘指揮全般をやってもらおうと思ってるし、なるべく制作関係は自分でやってしまおうと思ってね。
それじゃあ、まずは、未来ちゃんと小鳥遊さんを護衛してくれるモンスターを作っていこうかな!
魔力残量から考えても、そこそこのモンスターは創れそうだし、少し奮発して幼竜にしよう。
「ダンジョンクリエイト、モンスター創造!」
そういうと、創れるモンスターの一覧が表示される。そこから、幼竜の項目を開く。そうして選ぶのは、ヘヴンズドラゴンとヘルドラゴンに2体。ヘヴンズドラゴンは、白銀の鱗が特徴の4足歩行で翼のついている竜。ヘルドラゴンは、ヘヴンズドラゴンの鱗の色を漆黒に変えた竜だ。どちらも幼竜ということもあり、人間の赤ん坊くらいしかない。
モンスターと種族が決定したところで、いよいよ、職業選択。まさか、モンスターも職業を持てるっていうのは驚きだ。ゴブリンの侍とかね、なんかシュール。マスターヨー○……これ以上はファンの方に怒られそうだからやめておこうと思います、はい。さて、話を戻して、どっちも職業は結界師にする。まず、守ることが目的のモンスターだから、攻撃より防御に特化した職業がいいよね。そうして、決定すると光の球が出現しモンスターの創造が始まる。………意外と長いね。ところで、俺を護衛してくれるモンスターは……いや確かに、ダンジョンマスターだから守りは厚いけどさ、やっぱほしいよね。できれば、幼女か秘書っぽいお姉さん希望。
光の球が収まると、そこには、2匹の竜がいた。2匹は、やはり、俺のことを主人だとわかるようで、「きゅぅきゅぅ」と鳴き声を上げて、飛び回っている。
なにこの子たち、かわいくないですか?あっちの世界では、あんまり動物が懐いてこなかったからわからなかったけど、破壊力抜群ですな、やはり幼竜を選んだのは正解だった!
次に作り出すモンスターは、ダンジョンの侵入者の妨害をするモンスターだ。こいつらは、とにかく、相手にまとわりついて武器防具を腐食させる、もしくは荷物を奪い取ることを目的としたモンスターだ。そして、魔力の温存のためにも同時にダンジョンの保守管理もできるモンスターが良い。そう考えた時に最適なモンスターはスライムである。その中でも特にアシッドスライムと呼ばれるモンスターが適切だろう。そしてここで終わらせないのが恭一流!それは、魔力の過剰注入だ。モンスター創造の際に、ダンジョンマスターの魔力を過剰に注入することにより、生まれてくるモンスターにボーナスがつく。そして、ここでつけるのが、過剰分裂。スライムは増える際、アメーバのように分裂するのだが、その分裂のサイクルをとにかく早めるのだ。
そうして、誕生したのが黒ずんだスライム、オーバーディバイドアシッドスライム、名前長い。中では酸がぼこぼこと音を立てている。熱濃硫酸ですか?しばらくすると2匹に分裂した。どうやら、10分に1回程度分裂するようだ。早いね……。そのうちニートオーバーディバイドアシッドスライム増えるんじゃなかろうか……。まあ、そいつらの処遇はその時に考えよう。決して先送りじゃない。適切な時を待っているだけだ。1匹をダンジョンに送り出し、1匹を分裂用に手元に置いておく。
よっし。これで準備が整った。早く、2人とも帰ってこないかな?
小鳥遊 ゆかり
さて、と。やりますか。
「未来ちゃん、モンスターが前の木の後ろに3匹隠れてる。後ろに下がってて、いつでも回復魔法打てるように準備しておいて」
「はい、了解です!ゆかりさん」
こっちから、仕掛けるのは未来ちゃんとの距離が離れることになるから向こうから出てきてもらう必要がある。そういうわけだから、足元に落ちている石を木に向かって投げつける。
「そこにいるのはわかってるから、早く出てきなよ。って言っても言葉は通じないかな?」
そう言うと、木の後ろからあたしの2倍以上あるヒト型のモンスターが出てきた。うーむ、これは俗にいうオーガってやつかな?まあ、変な形態のモンスターに出てこれるより、ヒト型の方がやりやすいからいいか。
「アイて、フタリ。いツものヨうにいくゾ」
「オんナ、ヒさシブリ、オデ、うしロのヤつほシい」
「じゃア、マえノモラう」
「うわぁ、下種っ……」
「ゆかりさん……倒しましょう、直ぐに」
えっと、右から槍、棍棒、剣か……
この構成なら、そんなに難しくないかな……
そう考えて、解析(体幹)を発動する。このスキルは相手の体幹を、視覚化するスキルだ。これによって、相手の次の行動をある程度予測することができる。
そうやって見ていると、いよいよ棍棒持ちのオーガが襲い掛かってきた。
オーガが、右足から踏み込んでくる。この調子なら、あたしには左足で踏み込んでくる。その後ろ、右側に槍、左側に剣だ。なるほど、棍棒で圧力をかけつつ、左右に避けたところを仕留めるのか。
あたしは、敢えて前に踏みこむ。相手の左足側つまりこちらの右側だ。そして、同時に左側に体を出す。棍棒が驚いて踏み込みが浅くなり、槍持ちが槍を突き出す。
棍棒の重心が若干後ろにずれている。あたしは、侍のスキル体術を使って、棍棒の重心を崩し槍持ちと接触する。幸運にも、槍は突き刺さらなかったみたいだ。ちょっと残念。
剣持ちは、あたしが右側に行ったのをいいことにそのまま未来ちゃんの方に走っていく。あちゃー未来ちゃん座っちゃったよ。まあ、初戦闘だししょうがない面もあるとは思うんだけどね。いままでも、お兄さんに全面的に守ってもらってたようだし。
「未来ちゃん、足元の石!モンスターに投げつけて!顔を狙う感じで!」
「は、はい!」
そういって、未来ちゃんは咄嗟に足元の石を投げつける。
お、顔に当たった。ビギナーズラックってやつかな?
これで、追いつける。
剣持ちは、左手で顔を隠して尚且つ体を若干ひねっている。剣を持っている右手が自由になっている。
あたしは、その右手をつかんで、体のひねりを利用してそのまま、剣持ちをうつ伏せに地面に押し付ける。右手を捻れば、剣を落とすからそれを奪って剣持ちの首を落とす。あぁ、血だ。興奮してきた。動悸が早い……息が上がる……。あ……後でパンツ洗わなきゃ……
と、そこで強い衝撃が体に走る。どうやら、棍棒が殴ってきたらしい。復帰早いね、いいね!
「ヒール!」
「未来ちゃん、ありがとう!」
いけない、未来ちゃんの後ろに飛ばされちゃった。あたしの手には、剣がある。ちょっと、体の大きさに合わないけどこれで十分だよね。
「よクも、ナカまヲ!」
「まテ!おチツけ!」
あぁあぁ、棍棒さん、興奮したらいけないって。ほら、そんな風にまっすぐあたしに突っ込んで来たら、直ぐに「死んじゃうよ?」
次の瞬間には、棍棒持ちの足はなくなっている。早い?そりゃそうだ。あたしの一番慣れた戦い方だからね。
うつ伏せの棍棒持ちの首を、同じように落とす。残りは槍持ちだけだ。
と、そこで、槍持ちが逃げ出した。うん、正しい判断だと思います。
「おえぇぇええええぇぇぇええ」
「あー、やっぱり、未来ちゃんはいちゃったか。まあ、あたしも最初のころは吐いたからね」
「ごめんなさい……。その……ごめんなさい……」
「ううん、いいって。あたし疲れちゃったし、今日は帰ろっか。そろそろ、ダンジョンも出来上がってるでしょ!そうだ、それより未来ちゃんレベル上がった?槍持ちが逃げたら、なんか天の声みたいなのでレベルが上がりましたって……」
「あ、はい。私も上がりました」
「ほほう、戦闘補助でもレベルって上がるんだね」
「よっし、帰ろっか!」
「はい!」
あたしたちは、最初にこの世界に降り立った場所に向けて歩き出した。