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加藤未来
先ほどの浮遊感は一体…
お兄さんや、小鳥遊さんは無事なのでしょうか?今日こそ、小鳥遊さんの本性を教えてもらおうと思ったのですが…
さて、まずは状況確認ですね、「お兄様」の方が未知の事象に遭遇したらまずは落ち着いて周囲を見るべしと仰ってましたから。
えっと……真っ白ですね。何から何まで。
クラスにいた皆さんも、あっちには先生方もいらっしゃいますし。
「未来さん大丈夫かい?」
おや、この声は柳生次郎君ですね。彼は正義感あふれる良い方なのですが……お兄さんに何故か毛嫌いされてますね。
「えっと……その、大丈夫です…」
お兄さんや小鳥遊さん以外の方と話すときは、どもってしまいます。ごめんなさい。人は信用できないんです……
また、お兄さんが柳生君に何か言ってますね。チーレム野郎?サブカルチャーには疎いので…
「お兄さん、あっち……誰かいます」
「おぉ、本当だな、妹よ。あの3人?2人と1個?浮いてるな。どういう理屈か気になりますな!ね、小鳥遊さん!」
「え?恭一君、そこでこっちに振る?まあ、あれだよね。厄介ですよね、浮いてるって」
小鳥遊さんは、時々変な返答をしますよね、何故か。いつも感じる親近感とかはこのあたりがヒントになっている気がするんですけどいつか教えてもらえるといいですね。
「大丈夫でしょうか……お兄さん」
「うーん、まあ、いざとなれば恭弥を出すし大丈夫じゃないかな」
「なら、安心ですね」
「恭一君、未来ちゃん、時々聞く恭弥君って誰?」
「あ。それはですね……」
応えようとしたところで、浮いてる人たちの中の女の人が話し出します。金髪美人さんですね、しかも、羽が生えている。こすぷれ?とかいうやつでしょうか。
「召喚に応じていただきありがとうございます、使徒の皆様方。私は、善神ジャスティア」
次は左のおじさんですね、ワインレッドの髭がお似合いですね。
「我は悪神エヴィル、貴様らにはこれから異世界、ゴッヅガーデンで我々神に代わって代理戦争をしてもらう」
最後は、右の箱?球体?絶えず形を変えている黒い物体です。
「コンニチハ、ボクハ、コントンシン(混沌神)カオス。ジンエイハ、ゼン・アク・コントン。ツマリ、ココニイル、サンニンノカミガ、アラソウ。マア、クワシイセツメイハ、ジンエイニワカレテカラ、タントウノ、カミニ、キイテクレ」
みなさん、圧倒されてて一言も話しませんね。お兄さんも、お口をあけてぽかーんとしてますね。
おや、今度は陣営ごとに別れての詳しい説明ですか。
そうして私たちは、また浮遊感を味わうのでした。
加藤 恭一
いきなり、転移させられてからの代理戦争をやれって言われたでござる。え?人殺すの?いや、勘弁してくださいよマジで。俺の専門じゃないですって。
「では、各陣営に別れましょうか」
あぁ、天使っぽいお姉さんの陣営になりたい、あわよくばあの羽に触りたい。箱は…まあ、無理かな。無機物だし。おっさんは……俺が衆道のフラグは立てない方針で行ってます。
うわ、また浮遊感、お昼食べてたら絶対リバースしてたな、ヒーローならぬゲーローってね。我ながら面白いね、うん。お、そろそろ着地しますね。
「コレカラヨロシク、コンカイハ、フタリ、イヤサンニンカ。マアイツモドオリダナ」
箱だったか――、お兄さん泣きたいです。よりによって、俺と未来ちゃんの2人?学校全体で1200人+教員だぞ?いや、無理ゲーだろ!
「混沌神様、よろしいですか?」
未来ちゃーん、さすがですね。お兄さんのヘタレっぷりを許してください。
「ナンダ」
「先ほど3人と仰いましたが、あともう一人はどなたでしょうか?あと、陣営はどのように決定されるのですか?」
「ソンナコトカ。モウヒトリハ、スグニクル。ジンエイハ、ソノニンゲンノホンシツガドコニチカシイカデ、キマル。チナミニコントンハ、ドコカコワレテルヤツラダ。ワカッタカ、イゾンショウ」
「おいこら、未来のことを依存症といったか、箱野郎。未来はな!ただ、お兄さんにべったりな、甘えんぼさんなだけだ!」
「お兄さん、足が震えてますが大丈夫ですか?」
「ダマレ、ニジュウジンカク。モウヒトリノホウヲダセ。ソッチノホウガ、ハナシガツウジヤスソウダ」
「言い合いをしても始まらないと思うよ、恭一君」
「おや、小鳥遊さんじゃないですか、いらっしゃいまし。底辺陣営へ」
「お兄さん、そういうのはあんまり言うもんじゃないと思いますよ、本当だとしても」
「君たち、諦めてるね。せめて、楽しんでからじゃないと死にたくないし、頑張ろ?」
「そうですね、私はお兄さんと一緒に死にたいです」
「そうだな、俺も未来と一緒に死にたいよ」
「オイ、オマエラ。アキラメルナ、カコニハ、コントンガカッタレイモアル。トリアエズワタシハ、ジュンビスルコトガアル。ソレマデマッテイロ」
「妹よ、お兄さん聞きたいことがあります。あいつ、さっきまではボクとか言ってなかったか?」
「おにいさん、そこはあまり突っ込んじゃいけないところだと思いますよ」
「そうなのか、いるよね、ああいうやつ。人前に出ると物腰やわらかだけど、身内になると途端に厳しくなる奴。ああ、いやだいやだ」
「二人とも、それくらいにして、お互い改めて自己紹介しない?秘密にしてることとかあるでしょ」
おぉ、さすがは保健委員、状況判断が良くできますな。ロリ巨乳のくせにやりおる。
「それじゃあ、あたしからだね。改めて、小鳥遊ゆかりです。趣味は料理、というのは嘘で趣味は殺し合い。好きなことは血を見る事。保健委員になったのも血を見たかったからだけど、いやーだめだね、滅多に怪我する奴なんていない。まあ、そういう事だから、よろしく!」
この娘、随分楽しそうに言いますね。まあ確かに、夜に光る赤目と闇に紛れる黒髪なんてぴったりだからね、そのポニテももしかして動きやすいからですか?それに、その立派な山脈があると動きにくくないですか?いやーお兄さん、不安になってきましたよ。仲間に殺されるなんてないよね?
「大丈夫、恭一君と未来ちゃんは殺さないよ」
「え、なんで心を読まれた?俺って、結構顔に出るタイプ?」
「まーねー、わかりやすいよ」
「では、次は私ですね。加藤未来です。小鳥遊さん、ようやく本当のことを言ってくれてましたね。話している時の小鳥遊さん輝いていましたよ。では、えっと、好きなことはお兄さんと一緒にいること。お兄さんと一緒なら大抵のことは乗り越えられる気がします。あとお兄さんの笑顔も好きですし、お兄様の凛々しい顔も好きです。お兄さんが私を気遣って、ギャグで笑わせてくれようとするその心遣いが好きですし、お兄様のなんだかんだ言いながら、いつも私を見ていてくれる、そんなところも大好きです」
「妹よ、そんなに言われると照れてしまうではないか。もっと言ってくれてもいいんですよ!」
「うん、まあ、わかってはいたけど、未来ちゃん恭一君に依存してるね」
「まあ、否定はしません」
「じゃあ、最後は俺かな。小鳥遊恭一です。未来と髪色と目の色も違うけど、両親が国際結婚してるわけだから、決して義妹と言うわけではない」
「確かに、恭一君黒髪黒目だけど、未来ちゃんは銀髪蒼眼だからね」
「趣味?好きなことは……未来が元気ならなんでもいいですとも、うん。それと、二重人格者でもある。まあ論より証拠、実際変わればわかりやすい」
そういって、俺は自分の中に意識を集中する。