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釣られた初代とおっさん


夜中、私がルミさんに確認しにいった時はタケルヒコ様からの返信はなかったと聞いた。

正直「くだらない」と無視されたのではないかと思ったが、そんなことはなかったらしい。

これまで会いに来ず、会いに来させなかったタケルヒコ様だ。

イブキさんの行動に怒るにせよ、それだけイブキさんを想っているということだろう。

やっぱりルミさんはすごいなあ。

しかしなんと答えるべきか。

事情を話すか? いや、ここは答えない方がいいのか?

当人達にお任せするべきか。だめだ、わからん。

うん。わかんない時は下手に動かない方がいい。母もそう言っていた。


「イ、イブキしゃんですか? さ、さー? 特には変わった様子はないれ、ないです」


ヘタクソか!!

タケルヒコ様も大概だが私も相当だな。

だめだ。めっちゃ疑わしい目で見られてる。

これはアウトか。


「……そうか、ちとこの辺りに悪い虫(・・・がいると聞いたのじゃが。知らぬか」

「わ、悪い虫ですか」

「ふむ。知らぬのなら、まあ良い」

「ち、ちなみにその悪い虫を見つけたら、どうなさるんです?」

「そうさのう。二度と悪さができぬよう、手足をんどくかの」


こっわ! やばいよ、事実上死の宣告だよ!

サクヤさんの時もそうだったけど、この人の思考はすぐ「死」へショートカットする。

悪即斬の精神。いや、疑即斬? 嫌即斬?

でもそれだけ大事ってことだよな。ポジティブにいこう。


「イブキは中か?」

「は、はい。多分ルミさんと一緒にいます」

「そうか。ではイブキに直接聞くかの」

「あ、わ、私も付いていっていいですか?」

「好きにせい」


屋根から飛び降り、宿屋へと入る。

食堂に2人の姿はないので、階段を上がり、ルミさんの部屋の前へと移動する。


「ここがルミさんの部屋です」

「そうか」ガチャ

「え」


『タケルヒコ様に会ったら、イブキさんはいったいどんな反応をするんだろう』とか『もしタケルヒコ様が怒ったら、ルミさんや私もタダでは済まないかも』とか、ドギマギしている私をよそに躊躇なく扉を開けるタケルヒコ様。

女性の部屋に入るのに、堂々としすぎてウケる。ある意味尊敬っす。

私も続く。

中に入ると2人は――ベッドで仲良く寝ていた。

やや目にクマがある。きっと朝方まで起きていたのだろう。

可愛らしい寝息。ちょっと起こすのは忍びないな。


「イブキ。起きろ」


なんて発想はタケルヒコ様にはなかったようで。ある意味尊敬っす。

と、声に反応してイブキさんが顔を上げる。


「ん……え……あ、だん、旦那様?」

「うむ。久しいの」

「あびっ!?」


飛び起きてベッドの上に正座するイブキさん。


「◎△$♪×¥●&%#!?」


なんて?


「なに、少し手が空いたのでの」


あ、通じるんだ。


「あ、かっ……左様でございましたか」

「う、うむ」


沈黙。

なんだこの空気。

なんとも、気まずい。


「んぁ……なぁに」


その空気を感じたのか、ルミさんも目が覚めたようだ。


「あれ? タケさんじゃん。やっほー☆」

「おう」


タケさん? 昨日までタケルヒコさんと呼んでた筈だが。夜の間になにがあった。

……タケルヒコ様は気にしていなさそうだしいいか。


「んん? なになに、もしかしてブッキーに会いに来たの?」

「……イブキにというか、ちと皆の様子を見にな」


ブッキー。

イブキさんのことなのはわかるけど、なぜタケルヒコ様はつっこまないんだ。

まるで動揺が見られない。素直に尊敬する。


「ふふ~ん」

「……なんじゃ」

「べっつに~☆」


ルミさんのしたり顔。可愛すぎて吐血きそう。あ、ちょっと出た。


「んん! まあその、なんだ。調子はどうじゃ」


誤魔化すような咳払いの後。イブキさんに問い掛ける。


「わ、私は! とてもよい調子がいいでございまする!」


だがタケルヒコ様と違い、イブキさんは平静を保てていない。

当然か。あれだけ会いたがっていた人が突然現れたのだ。

頭の中は相当掻き回されているであろう。目がぐるぐるしてるよ。


「ん。なんだ。儂に話すことがないか」


お、おう。

流石タケルヒコ様。ズバッとくるな。

いったいここからどうするつもりなんだろう。

もちろんこういうパターンも考えてあるんですよね?


ルミさんをチラと見る。


と、後ろ頭に手を当て、ペロっと舌を出すルミさん。その額には汗が滲んでいる。


これ考えてなかったやつだわ。



























いやなんでやねん!


来るかもしれないと予期していながらその先は忘れてましたって!


さっきのしたり顔はなんだったんですか! テヘペロ顔も可愛いなあちくしょう!


いやーやばいよ。そりゃイブキさんも困惑する筈だよ。

ど、どうするイブキさん。


「は、話し」

「そうだ。その、お主に好いた者がいるとか……いないとか」


うわーお。飛ばしてくるなあ。マジウケる。


「好い、私の、好きな、人」


「私の、好きな人、は」


「この世の誰より強く、長い黒髪を靡かせ、鬼神の如く、天を駆けられます。凛々しく、雄雄しく、揺るぎのない信念を持って、成すべきことを、成そうとされて。私は、大したお力になれません。そんな私を、いつも、いつもお傍に置いて下さいました。そして、私に、私だけに微笑みかけてくれたんです。私は、私は、そんなだ――」


これ完全にタケルヒコ様のことだよね。完全に告白しちゃってるよね。


「わかった。もうよい」


そんなイブキさんの告白を、制止する。


「お主の心中、良くわかった」


タケルヒコ様が踵を返す。


「邪魔をした」


その足で、部屋を後にした。

遅れて、私もついて歩く。

部屋を出る際、ルミさんと目が合う。ルミさんはビシっとポージングを決めた。


廊下。階段。道なりに歩く。

私は思う。

結果。悪くない。

戦いが始まるんだ。わだかまりはないほうがいい。

タケルヒコ様が想いに答えるかはわからないが、タケルヒコ様が見放すこともなければ、イブキさんが傍を離れることもないだろう。

これでよかったのだ。

なんて、締めておくとしよう。



























「はぁ……」





ん?

気がつけば、食堂か。

しかし、誰もいないな。

じゃあ、今の溜め息は。






「これが反抗期か……」






めっちゃうなだれてるううううううううううううううううう!?!?!?


ていうか反抗期って、イブキさんか、イブキさんのことか!? 違うよね!?


い、いったい何を言ってるんだこの人は。


「ヨシオ、こういう時はどうすればよいのかのう」


「え、いやー、意味がよくわからないと言うか、反抗期って今は関係ないんじゃないかな~なんて」


「関係ないことあるかぁ!! 儂のめいがありながらどこの馬の骨ともわからぬ男にうつつを抜かすなど、儂に対する不満、反抗精神が大いにあると見た! くそ。今までイブキを外に出したことなんてなかったからのう。その弊害か。しかしなんだあの言い様は、完全にべた惚れではないか。イブキなら問題ないと思っておったが、信じて送り出した娘が寝取られるなんてまったく予想しておらなんだ。いったいどうすれば……なあどうすればよい!?」


「わ、私は1人身ですし、経験がないと言いますか」


「はぁ。使えんのう」


えー。

なんか腑に落ちない失望を受けている。

しかしこれは。これはまさか。まさかこれは。


「やはりそいつ、見つけ出して殺すしか……」


いやアンタのことだよ!?


だめだ! 完全に勘違いしている!


どどどどうすれば! どうすればいいんだあああああああああ!?




次回。所変わって。

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