表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/108

恋の駆け引きとおっさん

更新遅くなり申し訳ありません。

胃腸風邪からのインフルというコンボにダウンしていました。

失礼致しました。


「ルミさん!」

「ひゃっ」


ルミさんの部屋の扉を勢いにまかせて開けた。

つい開けてしまった。

中にいたルミさんは、ちょうど寝間着にお着替えしている真っ最中だった。


「う、うわああああ!」

「おっさんが叫ぶな! 早く閉めてよ!」

「すみません!」


扉を閉め背を向ける。

一瞬で爆発しそうになった心臓を押さえ、息を整える。

脳裏にたわわなアレが浮かぶのを抑える為、マッチョな男性の方々を想像する。

ゴングさんやシーガンフさん、ゲルトさんが微笑んで肉体美を披露している絵面が浮かんでくる。

……よし。治まったかな。


「もういいよ」


室内から声がした。

私は恐る恐る扉を開け、顔を覗かせる。


「あの、怒りましたか?」

「別に怒ってないよ。ちょっとびっくりしただけ、次から気をつけてね」


そう言ってくれるが顔が赤くなっている。悪いことをした。気をつけよう。


「んで、どったの急に」

「相談がありまして、イブキさんのことなんですが」

「相談?」

「実は――」


イブキさんとリンケージのことを話す。

イブキさんはタケルヒコ様の態度に不満、というか寂しさを覚えているようだった。

そこには何か、主従とは違う関係が見えたような。

いやおっさんには経験ないからわからんのだが、だからこうして助けを求めているのだ。


「ふーん。それであたしのとこにきたんだ」

「ルミさんなら、いいアドバイスが頂けるんじゃないかと」

「それってあたしが経験豊富そうだからってこと?」

「? 違うんですか?」

「違うし! 前にも言ったけどあたし処女だし! だからその、あたしもしたいけど、恋愛経験とかないし……」


顔を赤らめてチラチラ見てくるのくっそ可愛い。……じゃなくて。

そうか。処女だとは聞いていたが、恋愛経験もないのか。

ルミさんの周りにはロクな男がいなかったのかな。

いや、余計な詮索はやめよう。

しかしこれは誰に相談したものか。サクヤさんは箱入り娘だし、エーリンさんはアホだし。

うーん。


「ちょっとおっさん。もしかして誰に相談しようか悩んでる?」

「え? それはそうですが」

「ちょいまち☆ 恋愛経験ないとは言ったけど、女心がわからないとは言ってない!」

「な、なんですってー!? そ、それはつまり」

「あたしに任せていいよ☆」


目の横でVサインを作り、ばっちり決めポーズを作るルミさん。

なんと頼もしい! なんだかわからんがすごい自信だ! 処女でもギャルはギャルということか!

ここはルミさんのカリスマに任せよう。


「では早速イブキさんの所へ行きましょう」

「おっけー☆ ぜんそくぜんしーん☆」


ルミさんと一緒に、部屋へ戻る。

と、イブキさんは私が部屋を出た時と同じ状態で佇んでいた。


「イ、イブキさん。お待たせしました」


声を掛けるが、反応がない。めっちゃ恐い。

すると、怯える私を見かねたルミさんが声を掛ける。


「イーブキさん☆」


顔を覗き込み、明るく接するルミさん。

イブキさんの体がビクっと震え、段々と目に光が灯る。


「……ルミエール様」

「こらこら、そんな顔しちゃせっかくの美人が台無しだよ☆」

「私など、旦那様の眼中にもありません……」

「いーや! そんなことあるはずないよ!」

「ですが」

「いーからあたしに任せて☆ ぜったい大丈夫だって! ちょっとリンケージ貸してね?」


ルミさんがイブキさんのリンケージを操作する。

何やらメッセージを送るようだ。気になる。

イブキさんも少し落ち着かない様子だ。


「でーけた☆」


でけた。できたか。

リンケージがイブキさんに返される。

ルミさんの仕掛けを確認するイブキさん。私も後ろから覗かせて貰う。


『イブキ:突然ですが旦那様。私、現地で素敵な殿方とめぐり会いました。つきましてはしばらくお暇を頂けたらと思います。宜しくお願い致します』


「」


私もイブキさんも言葉が出ない。

これは、マジか、もう送ってるし。なんてこったい。

これはいったいどういうつもりなのか。

イブキさんが硬直したままなので、私が切り出そう。


「ルミさん、これはいったい」

「恋は駆け引きってね☆ このメッセージを見ればタケルヒコさんも黙ってないっしょ。間違いない☆」

「いやそもそも恋なのかも疑問なのですが……」

「イブキさんはマジかまちょなんでしょ? それはもう恋だし!」

「かま、ちょ?」


なんだかわからないが、やはりすごい自信だ。ルミさんがそう言うならそうなのかもしれない。

強行的ではあるが、タケルヒコ様がイブキさんを気にかけているならこのメッセージを見て黙ってはいないだろう。

……ただ、当事者であるイブキさんが固まったまま動かないのが不安すぎる。


「イ、イブキさん?」


反応がない。まるで屍のようだ。

仕方がないので軽く肩を叩――ぐぼう!?


腹部にずっしりと圧が掛かる、イブキさんの拳。

ちょー痛い。思わず膝をつき、腹を抱える。


「はっ。私は何を」


なんか無意識だったっぽく言っているが、私にはわかるぞ。

拳に行き場のない怒りの様なものが乗っていたから。

明らかに私だとわかってて殴ったね。


「申し訳ありませんク……ヨシオ様」


はい今クソムシって言おうとしたー。

ルミさんがいるから体裁を保とうと修正しましたな。


「お、おっさん大丈夫?」


ルミさんが丸まった私の背を優しく撫でてくれる。

これは……うん。いい。とてもいい。痛みがどこかに抜けていく。

ヒールいらず。


「ありがとうございますルミさん」

「大丈夫?」

「へいきへっちゃらです」

「本当に申し訳ありません」

「いいんですよ。そういう時・・・・・もありますよね」


イブキさんもあのメッセージにショックを受けたのだろう。

ここは穏便に。ルミさんに撫でて貰えたし。


「それで、その、このメッセージのことですが、私は旦那様にこのような感情は抱いておりません」

「好きじゃないってこと?」

「好きとか嫌いとかそういうことではなく。私と旦那様は主従の契りを交わした関係で」

「でもちょー好きなんだよね?」

「いえ、ですから」

「今までずっと一緒にいたのに急に会えなくなって、その寂しさを埋めるように毎日連絡してるけど向こうはなんだか素っ気なくて、寂しいのは自分だけなのかなって不安になって、そんな中仲良くやってるおっさんに苛立って、どうしようもなく苦しいんでしょ? それはちょー好きってことだよ」

「」


イブキさんがやり込められている。たじたじじゃないか。


「で、ですが! だからと言ってその気持ちを旦那様にぶつけるなんて!」

「なんで? 旦那様だろうがなんだろうが結局男と女でしょ。そんなくだらないことで遠慮する必要なんてないよ」

「」


つ、強い。

有無を言わさぬ説得力。

そう言えばルミさんの両親は勇者と魔王だった。

確かにその関係に比べれば多少のことは些細なことかもしれない。

この世界では重婚も結構あるようだし、タケルヒコ様は今は1人身。問題ないのかな?


「とにかくこれでタケルヒコさんの気持ちがちょっとはわかるでしょ。その先はどうするかはイブキさん次第だよ。誤魔化すならちょっとした悪戯とでも言えばいい」

「……わかりました。お気遣いありがとうございますルミエール様」

「ううん、偉そうなこと言ってごめんなさい。ただ私も、気持ち、わかるから。後悔して欲しくないなって☆」

「……はい」


……なんとかまとまったようだ。どうなることかと思ったが、流石はルミさん。

私にできることはサンドバック程度だったな。


「うんじゃ! あとはタケルヒコさんの出方を待つってことで、イブキさん今日は私の部屋で寝ようよ☆」

「良いのですか?」

「ただ待ってるだけだとまた不安になるでしょ☆ もうちょっとお話ししよ☆」

「ありがとうございます」

「おっさん、そういう訳でまた明日ね~☆」

「失礼します」


部屋を出ていこうとする2人。

いいなー。私もお呼ばれしたい。

なんてアホなことを考えていると、外に出かかったイブキさんが戻ってくる。

完全に間合い(・・・に入る距離まで詰められた。


(殴られる!?)


と思ったが。そんなことはなかった。

イブキさんは小さな声で言った。


「あの、貴方もありがとうございました。一応言っておきます」


そう言うと、部屋を出て行った。

一応、ね。

だが普段クソムシ呼ばわりしている私に言うだけに、多少は感謝してくれているようだ。

口が悪くても、悪い人ではない。

なんだかタケルヒコ様に似ている気がする。ずっと傍にいるとそうなるものかもしれない。




































朝。

宿屋の屋根で日に当たる。

よく寝た。訳ではないが、体を伸ばし気持ちのいい風を感じる。

以前偶然屋根に登ったことがあるが、あれから屋根の上って結構気持ちがいいって知った。

朝日を1番に浴びれるしね。ちょっと健康的? なんだか戦いのことも忘れちゃいそう。

……いかんいかん。油断大敵。

あのおっさんみたいにいつどこで敵が来るかわかったもんじゃない。


ふと、体が動く。


ひねり、回転させ、ステップして、屋根を大きく移動した。

移動した後に攻撃されたと気付く、そんな速さ。

殺気を伴わない攻撃。

修行する前の私なら、避けきれなかったはず。

いや、ひとまず感動は置いといて、相手に集中しよう。

誰だ。あのおっさんか。


攻撃のあった方向を見るが、見当たらない。

気配を探る。どこだ?


「こっちじゃ」


後方からした声に思わず体が震える。

だが、聞き慣れた声。振り向けばすぐに正体がわかる。


「タケルヒコ様!?」

「おう。相変わらずしょぼくれた顔じゃの」

「タケルヒコ様もお元気そうで」

「うむ。修行の成果は出ておるようじゃの」

「ありがとうございます。しかし急にどうされたんですか」

「いやなに、十三使徒とも見合ったようじゃし。少し様子を見にな」


びっくりした。

何か怒られるのかと思ったけど、そういう訳じゃなさそうだ。

……ん? なにか落ち着かないというか、タケルヒコ様がそわそわしてる。


「どうかされましたか?」

「ん。いやなに。他の者の様子はどうかと思っての。息災か?」


なんだか歯切れが悪い。

本題に入りたいが入れない。そんな感じだ。

いや、タケルヒコ様が人の顔色を気にする必要があることなどあるのか。ないだろ。

思い過ごしか。


「ええまあ。みんな元気ですよ」


正直に答える。特に変わった点はないし、みんな元気だ。

しかしその答えに、タケルヒコ様は納得がいってないようだった。

そして私も気付く。タケルヒコ様の目的。




「そ、そうか。あーちなみにの、わかれば、わかればでいいんじゃが。イブキの様子はどうだ? 何か変わったことはないかの?」




つ。


つ、つ。


釣れたあああああああああああああああああああああああああああ!?。




そんな餌に釣られる勇者。

千年生きても恋愛経験豊富な訳ではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ