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イブキさんとおっさん


「んもっ!?」


シェリルさんの口を押さえ、空いた手で下腹部を押さえるイブキさん。

まるで殺し屋とか、暗殺者みたいな動きだ。すごい。

しかしスカートの下から手を入れているのはなんともどうして、襲っているようにしか見えない。

いや間違いではないけど。


「んんんんんっ!!」

「イ、イブキさん。シェリルさんが苦しそうですけど」

「話しかけるなクソムシ。すぐに終わります」

「あ、はい」

「んもも!? んもー!?」


下腹部を押さえているイブキさんの手が青白く発光した。

発光が治まると、イブキさんは静かに離れる。

するとシェリルさんは、力が抜けるようにその場にへたり込んでしまった。


「終わりました」


その声を聞いてシェリルさんに駆け寄る。

声を掛けるが反応ない。が、息はある。気絶しているだけのようだ。

シェリルさんの無事を確認すると、気になるのは賢者の石だ。

服の下が今どうなっているのか、気になる。

なんて、スカートの中に視線を送っていたら、


「何を卑猥な目で見ているのですか。気持ち悪い」


イブキさんの容赦ない言葉が突き刺さる。

ぐふっ。効くなあ。

最近そんなふうに言われること少なかったから、余計に刺さるよ。


「あ、あの、シェリルさんはどうなったんでしょう?」

「別に、元の彼女に戻しただけです」

「それはどういう……」

「察しが悪いですね。回収すると言ったでしょう、石は取り除いたと言う意味です。跡も残っていませんよ」

「あ、なるほど」


どうやって回収したのか聞きたいところだが、答えてくれる気がしない。

まあ跡も残っていないなら大丈夫だろう。


「そんなこともわからないなんて、本当にしょうがないクソムシですね。誰の迷惑にならない場所で草でも齧っていればいいのに」


なんだろう。一言加えないと気が済まないのかな。

そんなに私が嫌いですか。


「あ……すみません、訂正します」


そんな私の空気を察したのか、イブキさんから謝罪が入る。

なんだ、そんなでもないのかな。


「貴方に齧られる草が可哀想でした。なので人知れずさっさとくたばって頂けると助かります」


……そんなでもあったよ。


「あの、イブキさんは私のどこが嫌いなんでしょうか」

「全部です」

「え」

「全部」

「ぐ、具体的に言うと」

「1からですか? 1から教えないとわからないんですか?」

「やっぱり結構です」


やばい。イブキさんなら本当に1から100まで言いかねない。

そこまで私のハートが持つだろうか。いや、持つはずがない。

間違いなく自殺するだろう。断言できる。


「はぁ……。とりあえず、その小娘を連れて行ったらどうです? 私はサクヤ様達と合流します」

「そ、そうですね」

「……小娘には、二度と石を作らないように言っておいて下さい。どうせ貴方が余計な知恵を与えたのでしょう?」

「も、申し訳ないです。でも、そんなに危険な物なんですか?」

「チッ」


舌打ちしたよこの人。

すんごい目で見下されてる。

よっぽどのことなのか。


「クソムシと同程度の脳みそしかない貴方の為に掻い摘んで説明してあげます。あれは学習する魔力の塊。擬似生命。育て方を誤るとくそ面倒です。今回のは赤ん坊の様な物でしたが、悪い子に育てば旦那様にご迷惑が掛かるかもしれません。くれぐれも注意して、二度と石を生み出さない様にして下さい。以上です。理解できたなら、さっさと小娘を連れて行きなさい」


なるほど、わからん。なんて言える筈もなく。

わかったふりをして頷くことしかできなかった。

シェリルさんには悪いが、とりあえず作るのは自粛して貰おう。

シェリルさんを抱き上げ、路地裏を後にした。


















シェリルさんのラボ。

相変わらず、というか前よりとっ散らかっている。

ベッド――なんて気の利いた物は見当たらず、あっても宝探しをするような物だ。

とりあえず目に付いた椅子をパッと片付け座らせ、目覚めるのを待つとする。

イブキさんとは、家で落ち合う約束をして別れた。

今日は王都に泊まることになる。

家の場所はロッテ様から許可をもらった、というか頂いた土地があるので、そこに置かせて貰う予定だ。

最初は一等地にお屋敷を立ててくれると言われたが、丁重にお断りした。

別に王都が嫌いな訳ではないが、お屋敷なんて、小物の私にはなんだか落ち着かない。

代わりに家を置ける土地を見繕って頂くことで落ち着いたという訳だ。

パーティの皆には場所を伝えてある。いつ帰ってきても良い様に早めに家を出しておかないと。

それにご飯も用意しておこう。心を込めてね。

何を作ろうかな。


「ん……んん、んに?」


なんて考えてたらシェリルさんが起きた。


「おはようございます。シェリルさん」

「あーおはよー……」

「体調はどうですか」

「んーだいじょ――!?」


ペタペタと体を触るシェリルさん。

そして椅子から飛び起きると、勢い良くスカートを捲り上げた。

もちろん。丸見えだ。


「シェ、シェリルさん!?」

「ない!? 石がないよ!? ねえ!?」

「それは、とりあえずスカートを下ろしてください!」

「でもシェリちゃんのぽんぽんが!!」

「説明! 説明しますから!」

「――なーんてね、わかってるよ」

「へ?」


パッとスカートを離すシェリルさん。

ほふう。ひとまず安心。


「あの女の人が持っていっちゃったんでしょ? それぐらいわかるよー。でもあの人って誰なのかな? かな?」

「えっと、あの人は初代勇者様のメイドさん……でしょうか?」

「ふーん。じゃあ石のこと知っててもおかしくないかな?」

「そうなんですか?」

「あれ? おじ様知らないの? あの本書いたの、多分初代勇者様だよ」

「げ」


そうだったのか。

流し読みしかしてないから気付かなかった。

つまりタケルヒコ様の私物をあげちゃったのか、まずかったかな?

もしかしたらイブキさんはそれについても怒っていたのかも。


「それで、なんか言ってたかな? かな?」

「あ、あー……もうあの石は作らない様に、と」

「だよねー。そりゃそう言うよねー」

「やっぱり危険な物だったんでしょうか」

「危険じゃないって言ったら嘘になるねー」

「そ、そうでしたか。その様な物とは知らず申し訳ありません」

「いいよいいよ。というかシェリちゃんは感謝してるんだから。……まああれはシェリちゃんも完全に納得できる出来じゃなかったしね」


なんだろう。こう、目の中に燃える闘志の様なものを感じる。

これまた作る気満々だよね。


「あの、また作るのはやめた方が、イブキさん――あのメイドさんすごく恐いですし」

「大丈夫大丈夫、よーは賢者の石じゃなければいいんでしょ? 石を作って思ったんだ。すんごい楽しかったけど、誰かの後追いばかりするのは性に会わないなーって。だからシェリちゃんは、賢者の石を超える……大賢者の石でも作ろうかな!」


あくなき探究心とでも言うのか。

イブキさんが聞いたら怒りそうな気がしないでもないけど。

不安感が募る。やっぱり止めるべきか。


「ん、おじ様は心配しなくていいよ? 大賢者の石ができれば、きっとあのメイドさんに奪われる様なへまは起こらない。そういう物を作るんだー」


私の思いを察してくれる。

すごい自信だな。

こういう前向きなところって素敵だと思う。

応援したくなっちゃうんだよな。

その気にさせた原因は私にある訳だし、できるだけフォローしよう。


「わかりました。ただ、体は大事にして下さいね」

「だいじょーぶ。ちゃあーんと処女は取っておくから」


……どうしよう。ものすんごい不安。


なんたらと天才は紙一重。

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