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守ることとおっさん

更新遅れて申し訳ありません。今回短いです。

台風ヤバイです。

皆さんお気をつけ下さい。


小一時間後。

泣き腫らした顔のルミさんを、後ろから抱いて座っていた。

嗚咽が治まってきたルミさん。大分落ち着いてきた様だ。

まあ、私は何もしていないのだが。


「ねえ、おっさん」

「なんでしょうか」

「おっさんてさ、どんな世界から来たの」


唐突だな。

私の過去なんか聞いても、おもしろいことなどないのだが。

私のいた世界か。


「そうですねー……なんと言えばいいのか。あんまり知らないんですよ」

「どういうこと?」

「私は、色んな人に避けられていて、あんまり人生を謳歌していませんでした」

「なんで?」

「私が普通じゃなかったから……だと思います」

「普通じゃない? どこが?」

「私にもよくわかりません。ただ、他の人と違い、なにかずれているというのは感じていました。それを周りの人達も感じたから、避けられていたのだと思います」

「……あたしは感じないけど」

「それは、今の私と、前の私がもはや別人だからではないでしょうか。前の私はしょっちゅうオヤジ狩りに会う程非力でしたし」

「ふふっ、なに、おっさん狩られてたの」

「お恥ずかしながら」

「でも、似合ってるよね。だって狩られそうだもん」

「私もそう思います」

「それが異世界で勇者やってるんだなんて、ほんと、人生なにがあるかわかんないよね☆」


顔をこちらに向け、悪戯な笑みを浮かべる。

笑ってくれたことにホッとするより先に、可愛いと言いそうになる。

くそ、悪魔的と言うか犯罪的と言うか。取り締まりたい。

あれ? 私はなんでルミさんを抱いているんだ。

この密着率やばくない? 頭が痛くなってきた。


「そ、そうですね」


私は身を捩じらせ、ルミさんと触れないように少しだけ離れる。


「!」


それに気付いたルミさんが、こちらをじとっとした目で睨む。

すると何も言わずにじり寄り、私に背を預けた。


「「……」」


私はもう一度距離を取る。が、ルミさんは負けじと詰めてくる。

そして、密着。


「……あの」

「なに?」


おっと。

今、勇者の経験が反応したぞ。

今の含みのある「なに?」に対しては、何も言わないのが得策だと教えてくれる。

空気を読むのが下手な私にとってはありがたい機能だ。

しかし、こんなところでも反応するとは。

いや、逆に言えば、勇者の経験が反応するぐらい危険な状況だったということかもしれない。

歴代の勇者も似たような経験をしていると考えると、少し笑みがこぼれた。


「? どうしたの?」

「いえ、なんでもありません」


いかんいかん。変に思われただろうか。

でも、ルミさんの調子は大分戻ったようだ。

しかし問題はこれからどうするか。

ルミさんは安全な所にいて欲しいという私の希望。通せるだろうか。

ユーリシアさんと戦いに行く時には断られたからな。

でも状況が変わった。

これから敵にする相手は、申し訳ないがユーリシアさんよりずっと脅威だ。

ここはなんとか、サクヤさんと共に避難して頂きたい。

よし、やるぞ。


「ルミさん。お願いがあります」


はっきりとした口調で言った。ここから勢いで押し切る構えだ。

が。


「やだ」

「……まだ何も言ってませんよ」


出鼻を挫かれたとはこのことだ。


「おっさん。またあたしとサクヤに、安全な所で待っていて、とか言うつもりでしょ」


なぜバレた。

いや、バレようが関係ない。今回は折れないぞ。おっさんは折れない。


「その通りです」

「やだ。ぜぇっったいやだからね」

「しかし」

「おっさん」


ルミさんが体を起こし、私に向き直った。近い。

そして、大きな目を見開いて。言葉にする。



「あたしは、おっさんの宝石じゃないよ」


「傷付けたくないから、大事に箱にしまっておくなんて、そんなの勝手だよ」


「ママもパパも、あたしを想って眠りにつかせたんだと思う」


「でも、辛いよ。苦しいよ。だってママもパパもいないんだもん」


「それなら、最期まで、あたしも一緒に戦いたかった」


「守るけど傍にいれないなんて、そんなの勝手だよ」


「あたしは嫌だ」


「だから、おっさんの言うことは聞かない」


「あたしはこれからもおっさんの傍にいる。おっさんと一緒に戦う。おっさんと一緒に傷付く。おっさんと一緒に、辛いことも、悲しいことも、乗り越えたい」


「それが守るってことだと、あたしは思う」


「あたしとおっさんの、サクヤやエーリンとの楽しい時間を」


「一緒に守りたい」


「だから」


「あたしを守って・・・



























何も言えなかった。

潤んだ、吸い込まれそうなその瞳に。

その気迫に。

彼女の全てに、私は飲み込まれた。

彼女を説得するなんて、無理だ。

私の手に負える人じゃないよ。この人は。

諦めよう。そして、守ろう・・・

彼女の理想を叶え、大団円を迎えようじゃないか。

こんなおっさんでも、やれることはあるはずだ。


私が彼女を守る。


そして、世界を守る。


……後者は無理かもしれないけど。


いや、違うな。


世界を守れなくても、彼女は守る。


うん。これならやれる気がする。違う。やらなきゃダメなんだ。


やるぞ、私はやる。


世界がどうなっても、彼女は私が守る。


それが、私がこの世界に来た意味。


かどうかはわからないけど。


そういうことにしておこう。





戦う意味。何度も確かめる。例えそれが間違っていても。

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