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和解とおっさん

更新遅くなりました。

申し訳ありません。


「母親と同じ眼をしておる」


ん。

母親と言ったか?

そうか。タケルヒコ様ならルミさんのお母さん、4代目勇者のことを知っていても不思議じゃない。

むしろ当然と言えるだろう。


「儂は勝てぬと思うか?」


その問いかけは、既に何かを察している様に見えた。


「わからない。でも、自分を変えられない人に、世界を変えられる訳がない」


タケルヒコ様が固まってしまった。

それは、そうだろう。

私は殺されてもいいとすら思えたのだ。

タケルヒコ様にだって、何かしらの影響を与えたに違いない。

もうこの場を支配しているの彼女だ。

私には到底できないことをやってくれた。


まったく、あなたという人は。

本当に。


「すまんかった」


そんな感心を寄せていると、そんな声が聞こえた。

少し驚いた。

私が危うく殺されそうになった時は、素直に謝ってはくれなかったのに。

美少女になら謝れると言うことか。……違うか。


「お主の言う通りじゃ。儂は傲慢で、愚かであった。あの時手を取っておれば、こうはならなかったやもしれぬ」


あの時、とはいつのことか。

千年も生きているのだ。後悔することは1つ2つではないだろうけど。


「儂から願う、話を聞いてくれ。その結果、儂に協力せんでも咎めはせん。頼む」


真剣な眼差し。

今にも泣きそうにも見える。

サクヤさんの顔なもんだから、余計くるものがある。


「聞くよ。聞く聞く! だってサクヤの大好きなおじい様だもん。理由はどうあれ、おっさんの事も助けてくれたじゃん。聞かせてよ! あ、でも嘘つくのはなしね☆」


「……すま「だめだめ☆ こういう時は謝るんじゃなくて、ありがとうって言うんだよ☆ ね、おっさん?」


唐突な振り。

でもちゃんと話は聞いていたぞ。


「そうですね。そうだと思います」

「……ありがとう」


タケルヒコ様が微笑み、呟いた。

サクヤさんであれば見られない表情だと思う。


「じゃあどうする? シアのお城に行く?」


ルミさんがユウリシアさんを見るが、タケルヒコ様は首を横に振った。


「だめじゃ。どこに奴らが潜んでおるかわからぬ」

「っ」


ユウリシアさんが口惜しそうに唇を噛む。

が、これはタケルヒコ様の言う通りだ。

八雷神。魔王軍の幹部。それが確認できているだけでも既に半数が離反しているのだ。

他の八雷神や、その部下の人達も信用できない。

そんな人達がいるであろう場所にのこのこと出て行けない。


「じゃから、儂のアジトに招こうと思う」

「アジトですか」

「そこならばひとまずは安全じゃて」

「転移魔術、ですか?」

「うむ。さっそく飛ぶが」


タケルヒコ様はユウリシアさんに近寄り手を翳す。と、手の平から光が漏れ、ユウリシアさんの傷が癒えていった。


「そのままでの転移は辛かろう」

「あ、ありがとうございますですわ」

「お主にも掛けておこうかの」


そう言われたのはディアノックさんだ。

が、


「い、いえ、拙者は結構でゴザル。回復魔術は効きません故」

不死族アンデッドに回復魔術が効かないことぐらい知っておるわ。じゃからこれじゃ」


【ダークバースト】


「おお、おおお!」


ディアノックさんの体、もとい鎧の傷が見る見る塞がって行く。

やがて体から漏れていた黒い煙のようなものも出なくなった。


「タケルヒコ様。今のは?」

「不死族はその特性上、自動回復と言う能力を持っておる。が回復魔術を受け付けないんじゃ。場合によっては逆にダメージを喰らうまである。今掛けたのは闇魔術で、此奴の魔力を増幅させた。それにより回復力を高めたと言う訳じゃ」


なるほど、そういうこともできるのか。

いやはや、タケルヒコ様はなんでも知っているな。


「姫様だけでなく拙者にまで配慮して頂き、感謝! 感謝でゴザル!」

「うむ。では行くとするかの。皆、近う寄れ」


「おっさん」


ルミさんから声が掛かる。と同時に心臓が跳ねた。

なぜならルミさんが手を繋いできたのだから。


「ル、ルミさん」

「行こ、おっさん」


そう言ったルミさんの顔は明るかった。

でも、握られた手は微かに震えている様に感じた。


「行きましょう」


強く、その手を握り返した。

ユウリシアさんの時と同じように陣が現れ、その光に飲み込まれる。


すぐに視界が明ける。

不快感が込み上げてくるが、ユウリシアさんとの時より幾分マシだった。

辺りを確認する。ちゃんと皆いる。

ここは……森かな?

薄暗い、じめじめとした森の中の様だ。

辺りにはアジトらしき建物などは見当たらない。

そんな風にキョロキョロとしていると。


「ここにアジトはないぞ」


タケルヒコ様が言った。


「そうなんですか?」

「言うたじゃろ。転移魔術を使うと空間に歪みが生じ、その歪みから座標を特定できると。つまりもしあの場に儂ら以外の誰かがおったならば」

「あ、ここの位置がバレてしまうと」

「そうじゃ。じゃから直接アジトには飛ばず、ここを中継した。歪みが消えるまではここで待機して、それからもう一度転移する」


なるほど。わかりやすい。

アジトの位置がバレたらまずいしね。


「小一時間で歪みは消えるじゃろう。それまではゆっくりしておれ」

「ちなみに、ここはどこですか?」

「詳しくは言えんが、まだ魔大陸じゃよ」


え、じゃあ魔族さんとか魔獣さんがうじゃうじゃいるのではないか。

そんな所でゆっくりしろと言われても。


「安心せい。結界を張ってあるから、魔獣は襲ってこんよ。それに、ここは魔族でもおいそれと踏み込めぬ場所じゃ」


考えを読まれた。エスパーか。

しかしどうやらここはかなりの危険地帯だ。そこが逆に安全とは、強者だから言えることだろう。

もう驚かないぞ。


「あの」


声に振り向くと、ルミさんよりも小さな少女、そして後ろには大きな鎧。の2人がいた。


「申し訳ありませんですわ!」


少女が頭を下げ、鎧もそれに続く。


「私のせいで、あなた方にひどいことをしてしまいましたわ」

「ユウリシアさん……」

「私、本当は違和感を感じていましたの。あなた方があまりに優しいから、聞いていた内容と違うなって。でも、結局愚かにもあの裏切り者の言うことを信じてしまった。私がもっとしっかりしていれば」

「それはもう水に流しましょう。私は気にしていませんよ。むしろ今は、こうしてまたお話しできるようになってよかったと思っています」

「勇者さん……」

「流石は勇者殿! なんと言う心の広さ! さしもの拙者も感服でゴザルよ!」

「ディアノックさん、その喋り方はなんなんですか」

「いやはやこれは失敬、しかし興奮するとどうにも出てしまうのでゴザルよ!」

「なるほど、キャラを作ってた訳ですね」

「部下に示しがつかんので冷厳な武人としての顔を作っておりましたが、やはり拙者はこの方がいいでゴザル」

「ふーん。不死族ってもっと暗い奴を想像してたけど、あなたみたいな人もいるんだね☆」

「オヒョww。美少女に声を掛けられるとは、拙者はやはりモテるでゴザルなー!」

「え、なに、キモいんですけど」

「デュフww。キモい頂きました! もっと罵ってくれても拙者は一向に構わんでゴザルよ?」

「ディアノックさん。殴りますよ」「ディアノック。いい加減にするですわ」

「サーセンした」


よかった。晴れてユウリシアさんと仲直りできた。

とても嬉しいことだが、まだ国同士の問題がある。

事情はどうあれ、魔王軍は王国や帝国に侵攻したのだ。当然犠牲者もいる。

ごめんで済まされる問題ではないだろう。

ユウリシアさんの事情をしっかり確認して、ロッテ様やアウストウラ様に弁明できればいいのだが。

魔王さんと仲良くなっても、まだまだ大変だ。


それから、ユウリシアさんはルミさんとお喋りをして過ごした。

私はと言うと、ディアノックさんにユウリシアさんが如何に可愛いかを延々と聞かされた。

愛は伝わってきたが、ちょっとキモかった。


しばらくして、


「よし。そろそろ行くかの」


タケルヒコ様から声が掛かる。


私達は、もう一度光に飲まれて行った。



次回。アジトにて。過去話。

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