表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/108

道とおっさん

累計200,000PV達成しました!

これからもよろしくお願いします。 ひゃっほーい!


「タケルヒコ様の道……ですか?」


道。

というのはここでは人生と言う言葉が当てはまるだろう。

私が決めた道は、これからルミさんやサクヤさんに幸せになってもらうこと。

その為に、私にできることをしたい。

それがタケルヒコ様の道とどう繋がるのか。

この人がこれまでどんな人生を送ってきたのか、私は知らない。

知っていることと言えば英雄譚に記されているような内容だけだ。

ただその内容は、もう千年以上前の話。ほとんどおとぎ話に近い。

つまりこの人は、勇者としての役目を終えて尚それだけの時を過ごしているということ。


千年。


言葉にすればほんの僅かではあるが、途方もない。

それだけの時を生きるには、なにか明確な目的が必要だろう。

この人にはそれがあるのだ。千年の時を生きるに値する理由が。

気になる。とても気になる。

いけないことかもしれないが、少しだけ胸が躍った。


「教えて下さい」


サクヤさんの体を借りる、タケルヒコ様に問いかける。


「ん。まあ待て。ここではなんじゃ、場所を変えようかの」


ボロボロになった会場を見渡すタケルヒコ様。


「よろしければ、わたくしの城に、おいで、いただけませんか」


そう発したのは、ヨロヨロとディアノックさんの体を借りて、なんとか膝立ちするユウリシアさんだった。


「ひ、姫様、まだ安静にされては」

「大丈夫、ですわ。おかげさまで、大分回復できましたもの」

「魔王に招かれるとは光栄じゃが……信用できんな」

「……おっしゃる通りだと、っ、思いますわ。でもこのままでは、私の気が治まりませんの」

「うぬの気など知ったことか」

「タケルヒコ様」


ユウリシアさんに対し、高圧的な態度を取るタケルヒコ様。

私はやめてもらいたかったので声を掛けたが、ユウリシアさんは構わず続けた。


「私は知りたい、私のせいで何が起こっていたのか、あの子達がなぜあんなことをしたのか。この四肢を切り捨てても、喉を潰されても構いません。どうか私にも真実を聞かせて欲しいですわ。この通り、ですわ」


地面に頭を擦る。所謂土下座と言う奴だ。

息を切らし、弱々しい声で乞うその姿は、正直見ていられなかった。


タケルヒコ様はただそれを見下ろしていた。

そんな時。

なにもできないでいる私の袖を摘まみ、ルミさんがじっと見つめてきた。

好きだ。


違う違う。これはそういうのじゃない。

ルミさんの言いたいことはわかっているのに何を考えているんだ私は。バカ。

よし、言うぞ。


「ユウリシアさんもあの人達に殺されるところでした。あの人達がどのような存在なのかはこれから伺いますが、ユウリシアさんとなら力を合わせられると思います。どうですか」


問いかけに、タケルヒコ様が閉じていた口を開く。


「お主は甘いのう。儂はまだ此奴らを生かすとは言うておらんぞ。それとも何か、此奴らの為に儂と戦うか?」

「戦いたくありません。だから提案しています。私は、ユウリシアさんとも、タケルヒコ様とも戦いたくありません」

「……我儘な奴じゃな。その甘さと傲慢は身を滅ぼすぞ」

「タケルヒコ様から見て、私には何らかの価値があるのでしょう? だから話をしてくれる。私はタケルヒコ様に協力するつもりです。ですから」

「此奴らを見逃せと? 驕るなよ。確かにお主は使えそうじゃから声を掛けたが、代わりはある。場合によっては此奴らと一緒に始末してもいいんじゃぞ」


空気を震撼させる圧が発せられる。

あー、営業とかクロージングって苦手なんだよな。

もっとうまいこと言えないだろうか。つくづく無能。


「ちょっと待ってよ」


ピンクの髪をなびかせた美少女が間に入る。

私は焦った。威嚇している猛獣の前に出るようなものだ。

いや、猛獣程度であればどんなによかったか。これ以上ない危険だ。

にも拘らず、堂々としてその佇まい。かっこいいです。


「あんたがどんなに偉いか知らないけどさ、さっきから酷いんじゃない。傲慢なのはあんただよ」

「ル、ルミさん!?」


これ以上あった。あろうことか、恐らくこの世界で最強であろうタケルヒコ様を罵倒し始めたのだ。

罵倒というか説教なのかもしれないが。


「儂が傲慢か」

「そうだよ。強さを振りかざして、脅して。あんたが何と戦ってるのか知らないけど、結局やってることはあんたの敵と変わらないんじゃないの」


ひ、ひええ!!

こ、恐い! けど流石だ! 流石だけど恐い! けど流石だ!

いかん、タケルヒコ様と戦うことになったら、ルミさんだけは逃がさないと。

いや待て、この場で戦うってことは、サクヤさんと戦うことになるのか。それも嫌だ。

あれ? これは詰んだのでは? 

どうしよう。なんとか私の命で見逃して貰えないだろうか。切腹するから。


「小娘が知った様な口を」

「あんたこそ、千年も生きてきて何してたの? ずっと戦ってたわけ?」

「そうじゃ。儂は戦ってきた。たった1人で」

「だから千年も生きるはめになったんじゃん?」

「……カカッ」


やばい。やばいです。鳥肌が止まらない。

しかし、ルミさんは少なからず事情を知っているような口ぶりだ。

ここに来るまでになにかあったのだろうか。


「お主は、自分が死なないとでも思っているのか。儂はこの場にいる全員を、消し炭にすることもできるのじゃぞ」


空気が淀む。

冷や汗も、滴る。

信じられない圧力だ。

これを真近で受けて、平気なはずがない。


「やればいい」


なのに。


「やって、また1人で戦えばいい。これまでがそうだった様に。この先千年も、二千年も。戦い続ければいい。たった1人で。永遠に」


引かない。

引かないんだ。


「永遠に……」


タケルヒコ様が、呟く。覇気が薄れる。


ああ。

前に、「殺されてもいいくらい綺麗だ」と思ったことがあったが、あの気持ちは嘘じゃなかった。

今、また、思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ