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更新遅くなり、申し訳ありません。

気付けばもうすぐ累計200,000PVです。

待ってくれている皆さんに楽しんで頂けるようおっさん頑張ります。


突如会場に姿を現れた黒髪の美少女は、勇者ヨシオのパーティに所属している人物。

もちろんヨシオにとっては見慣れた顔である。

だがその雰囲気は明らかに別人、その拭いきれない違和感が、それが誰であるかを物語っていた。


「タ、タケルヒコ様」

「おう。ボロ布のようじゃな。ざまあないのう」


「かっかっかっ」と、美少女らしからぬ笑い方をしたのは、サクヤ――の体を借りる初代勇者タケルヒコ――である。

ヨシオは反論しない。

この人物には、魔大陸に渡るのは力不足だと言われ、仲間を集めるように言われていた。

結局は己の甘さにより敵の策に落ち、この体たらくだ。

ヨシオは自分を恥じるばかりだった。


「……タケルヒコ様は、どうやってここに?」

「なんじゃ、儂が来たのが不服か?」

「いえ、そういう訳では」

「簡単なことじゃ。魔王が作った道を掘り返したに過ぎん」

「道?」

「転移魔術。あれはな、あらかじめ設定しておいた座標と繋がる空間を切り取ると言うものじゃ。空間は切り取ると勝手に元に戻るのじゃが、元に戻るまでにはある程度時間がかかる。それまでの間なら、設定された座標を割り出すのは難しくない」

「つまり、ユウリシアさんの魔術を利用したと?」

「端的言えばそうじゃな」


ヨシオは思う。絶対にこの人物が言うほど簡単ではない。

又、自身は転移直後はめまいや嘔吐感に襲われていたと言うのに、この人物はなんでもないような顔をしている。

ヨシオは改めてタケルヒコの底知れぬ強さを感じ取っていた。

そんな時、また空間に歪みが発生した。


「お、きおったか」


タケルヒコが呟くと、程なく空間からもう1人、少女が現れる。

ピンク色の髪。普段はポンポン頭だが、寝ていたのだろう、髪を下ろしている。

それにより、普段とは違った雰囲気を醸し出していた。

そんな少女。


「う、気持ち悪い……」

「ル、ルミさん!?」


呼び掛けに反応し、ルミエールは青ざめた顔をヨシオに向ける。

ヨシオの姿を目にしたルミエールは、即、ヨシオの下まで走り。


「ひどい傷じゃん! 大丈夫!?」


無事を確認するように、ヨシオにすがる。

その真剣な、不安混じりの眼差しを受けたヨシオは、即座に出し渋っていた回復魔術を掛けた。

ヨシオの傷が癒える。


「だ、大丈夫ですよ。ほら、もうなんともありません」

「ほんとに? ほんとに大丈夫? ちゃんと生きてる?」

「生きてます、生きてます」


身振り手振りでアピールするヨシオ。

傷が完治した姿を見て、ルミエールはホッと胸をなでおろした。


「……急にいなくなるから、心配したじゃん。バカ」


安堵と喜びを誤魔化すような言葉。

ヨシオは口元が緩むのを感じた。


「私もいますよ!」

「あ、はい。どうも」

「反応薄くないですか!?」


ルミエールの胸元から無駄に誇らしげな顔で飛び出してくる妖精族を見て、ヨシオの口元はそっと引き締まった。


「すみません。ご心配をお掛けしました」

「ほんとだよ! ……こんなことなら一緒に寝てればよかった」

「まったくヨシオさんは困ったものですね!」

「お主ら、いちゃつくのも大概にせい」

「ぴゃあ!」


見かねたタケルヒコが口を出した。

それに合わせて、エーリンはルミエールの胸元に隠れる。


「い、いちゃついてないんですけど!?」

「うるさいのう。少し静かにしておれ」


ルミエールは顔を赤くして答えるが、相手にされない。


「ま、まあまあ。あの、タケルヒコ様、サクヤさんは?」

「今は眠っておるよ。まあそこらへんの話は後じゃ、まずは……」


タケルヒコは、ヨシオの後ろに隠れる様にしていたディアノックと、ディアノックに抱えられたユウリシアを一瞥する。が、


「彼奴らを片付けんとな」


すぐに殺気を漂わせる4人に視線を向けた。


「片付ける? それは我輩達に言ったのか?」

「そうじゃ」

「ガッハッハッ! 初代殿は状況が読めておらぬようだな! こちらは4人! 対してそちらはまともに戦えるのは初代殿とその女子だけ! 加えてその体では本来の力が出せぬのであろう? そんな状態で我輩達の相手をしようなどと、断じて、断じて笑止!」


大口を開けて笑うバサラガ。

それを見て、タケルヒコはポリポリと頭を掻いた。


「うぬら、儂が誰かは知っておるようじゃが、儂のことは誰に聞いた?」

「ふむ! それは言えんな!」

「まあ大方予想はついておるが、可哀想にのう」

「? 何の話だ?」

「確かにこの体では儂本来の力は奮えん、それは間違っておらん。じゃが情報不足じゃて」


タケルヒコの周りにある会場の破片や小石、サクヤの髪が、湧き出る魔力にあわせて巻き上がった。



「小童共、儂を誰だと思うとる。にわかでは相手にならんわ」



会場に蔓延したタケルヒコの圧に、4人だけでなくルミエールやディアノックの体さえもビリビリと震えた。






























「あ、ちょっと待ってもらえますか」


そんな中、1人だけ緊迫感を感じていない様な、間の抜けた声がした。


「おい、今いいところだったじゃろ、儂がかっこよく決めたところだったじゃろ。ぶち壊しじゃぞおい」

「あ、そうでしたか。すみません、よくわからなくて」

「はぁ……それでなんじゃ」

「あの、ルミさんはともかく、私も頭数に入れて頂いた方がいいかと。むしろルミさんは入れない方向で」

「……傷は癒えたようじゃが、それでも・・・・じゃろ」


確かに傷は癒えた。だが万全とは言い難い状態。それはタケルヒコを含め、傷を負わせた4人には周知の事実だった。が、


「私って、好きな子の前ではりきる子供みたいなもので」


「だから、今」


「強いですよ」


「さっきまでの倍は」


おっさんがのたまった。

「こいつは何を言っているんだ」という思考がその場にいる――1人を除き――全員に過ぎった。

だが、先程までどこか頼りなかったおっさんの、そんなおっさんだった筈のはっきり堂々として声が、態度が、漲る魔力が、冗談ではないと知らしめる。

いつしかタケルヒコの殺気が粛々と治まる。

場を支配していたタケルヒコの圧は消え、奇妙な空気と注目がヨシオに集まった。


「かっかっかっ! おもしろい! おもしろいのう!」


静まり返っていた会場に、少女の笑い声が木霊する。

一頻り笑うと、4人に向かってこう言い放った。


「だそうじゃ。うぬらはどうするぞい。初代と8代目・・・の共演じゃ、なかなかお目にかかれるものではないぞ? かかっ!」


堪えきらずに漏れ出た涙、それを拭いながら問いかける。

4人は答えない。


「あの、タケルヒコ様、間違えてます。私は7代目です」


と、小声のヨシオが口を挟んだ。


「ええんじゃよ、お主は8代目じゃ」


ヨシオは首を傾げるが、ヨシオはタケルヒコのある変化に気付いた。

それは、これまであった壁が薄くなる様な親近感だった。

故にそれ以上の追及はしなかった。


「さあさあどうするぞ。 やるか、やらんのか」


血が騒ぐ。というのだろう。

バサラガのそれは、この世界で一二いちに

いや、最強かもしれない存在を相手に、臨界点を突破していた。

ならばこう答える。


「もちろんや「やりません」


その答えを遮ったのは、いつになく真面目な声色をしたピエロだった。


「やりません。撤退です」

「ヘルムート!? 臆したか!?」

「だめですよバサラガさん。が出てきたら撤退する、これは決定事項だったはずです」

「しかし!」

「うるさいですよ。死にたいんですか」


ヘルムートの圧。それは文字通り。有無を言わさずというものだった。


「っ……」

「安心なさい。いずれ機会は来ます。今は退きましょう」

「……わかった」

「お? お? やらんのか? もったいないのう? 儂とれる機会なんてないやもしれんぞ? 今なら出血大サービスじゃ! 記念に一発殴らせてやるぞ?」

「! このっ!」

「安い挑発で~すね~。格を下げま~すよ?」

「かかっ。儂はうぬらが思っておる程、大した人間ではないよ」

「タケルヒコ様。サクヤさんを殴らせるのはダメですよ」

「「……」」




「お主は本当に空気が読めんのう」


「ではまたの機会に」




上空から、漆黒の飛竜族ワイバーンが4体舞い降りる。

4人はそれぞれ飛竜族に飛び乗ると、そのまま夜の闇に溶けていった。


「……行ったか」


タケルヒコは、夜空を見上げて呟く。


魔人族ディーマン竜人族ドラグーン邪仙バンディミット戦魔族バトルノートか。なかなか粒揃いじゃのう」


そう呟いた後、隠れるようにしていたディアノック達に目を向ける。

ディアノックの体が震え、ガシャっと金属音が鳴った。

その視線を遮る様に、ヨシオは割って入る。


「……儂としては、憂いは絶っておきたいところなんじゃがのう」

「私は、あの子が悪いものとは思えません」

「良し悪しなど見方によって変わるものじゃ。肝心なのは良いものを悪いものとする覚悟じゃ」

「よくわかりません」

「阿呆。ちょっとは考えんか」

「ただ」


ヨシオはルミエールを見た。少しだけ。


「私は、私の道を見つけました」


それがヨシオの答えだった。



「……あいわかった。ではお主の道と儂の道」



「どう交わるか」



「その話をしようかの」




戦いの終わりは物語の始まり。

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