マイホームとおっさん。
「♪~」
『クロース』の町に戻ってきた私は、鼻歌を歌いながらせっせと芋を作る。
ご機嫌なのは、もちろんルミさん達の一緒に居られるからだ。
「よおし、いくよー……そりゃ!」
軽く周りを堀った芋の葉を持ち、上げる。
とたくさんの『ジャーモ』が顔を出した。
「おおー、嬢ちゃん上手だな」
「へへん、うまいでしょ?」
農夫のおじさんから褒められるルミさん。
サクヤさんは――
「い、いきま~す」
――持ち上げようとした時、葉は音を立てて千切れた。
同時にサクヤさんが尻もちをつく。
「ひゃいん!」
「「あはは!お姉ちゃんへたっぴー!」」
近くにいた子供達から笑われるサクヤさん。
「一緒にやってみよサクヤ、こう根本を持って……」
「ひ、ひゃい!」
「いくよ、せーのっ」
「え、えい! あ! と、とれましたあ!」
「イエーイ!この調子でいこー!」
土にまみれても輝いている2人。
その可愛さもあってか、町の人達、とりわけ子供達に人気。
やっぱりいいなあ。
「ヨシオさん!私お腹が空いてきましたよ!『ジャーモ』料理なんてどうですか?」
……この人は相変わらずだ。
でもそんなことも気にならない程穏やかな心持ちだ。
「そうですね。あとで何か作りましょうか」
「ほんとですか!?うおっし!」
ガッツポーズはいいけど「うおっし!」って。
中身があの女神様だと思うとなんかやだ。
「おっさーん!次の畑行こー!」
「わ、私はちょっと休憩させてもらいましゅ……」
元気いっぱいのルミさん。
サクヤさんは慣れない動きで疲れてしまったようだ。眼がうずまきみたいになっている。
「わかりましたー。サクヤさんは休んでて下さいね」
「ありがとうございましゅ~」
「サクヤさんは私が見守っていますね!」
「なに体よくサボろうとしているんですか。子供達の遊び相手でもしてあげて下さい」
「嫌です!ちっちゃい子は加減を知らないから羽根を毟られそうになるんですよ!?よだれでベトベトにされたり!」
「子供は時に残酷なものですよ」
「ちょー!?」
エーリンさんの羽根を摘まんで子供達のいるところに持っていく。
「みなさん、小さいお姉さんが遊んでくれますよ」
「「わー! 妖精のお姉ちゃんだー!」」
「鬼!悪魔!魔王!」
「ははは、勇者です」
子供達の輪にエーリンさんを放り込む。
途端に揉みくちゃにされるのを確認して、ルミさんの待つ畑へと足を運んだ。南無。
日が暮れる頃、畑仕事を終えた私はルミさん達を連れて町外れまで足を運んだ。
「ヨシオ様、どこに行くんですか?」
「それはお楽しみと言うことで」
「おっさーん、まさか人気のない所へ連れ込んで何か企んでるー?」
「うわ!ヨシオさんケダモノですか!?」
「い、いえ、決してそのようなことは」
「冗談だよ☆ノリが悪いぞおっさん☆」
「す、すみません。あ、ここです」
2人と1匹を招いたのは、何もない空き地。
当然招かれた2人は首を傾げている。
「インベントリ」
浮かんだ来た文字を操作し、目的の物を出す。
すると何もない空き地に、ぽんと家が現れた。
以前作ったログハウスよりも大きく、4、5人でも問題なく住める大きさだ。
そう、これが私の見せたかった物。
私達の家だ。
「え、これって」
「ふ、ふわあ」
「おっさんが作ったの?」
「はい。これからも旅を続けるなら必要かなと思い、お2人に野宿させるのは心苦しいので」
「えっへん!驚きましたか!」
「エーリンは知ってたんだ」
「もっちろんです!魔王軍を退けてから、ヨシオさんが夜なべして作ったんです!」
「エーリンも一緒に?」
「私は夜はアレなので寝てました!」
「そうだよね。知ってた」
「勇者様が、私たちの為にい、か、感激ですう、えぐっ」
「サクヤさん、泣かないで下さい」
「ねえねえ、中見てもいい?」
「どうぞどうぞ」
さっそく中を見てもらうことにする。
玄関に入り、天井にある照明――として使われる魔道具――のスイッチを入れる。
「「わあ」」
ルミさんとサクヤさんから声が漏れる。
平屋だが天井を高くとり、いつだったかテレビで見た気がする、ゆとりのある空間作りを心掛けた。
間取りは4LDK、リビングの他に1人づつ私室を用意した形だ。
リビングにはテーブル1卓にイスが4脚。
私達の食卓。
「この部屋は!?」
「ルミさんの部屋です」
「ここは何ですか!?」
「サクヤさんの部屋です」
「じゃあここは私の部屋ですね!」
「いえ、そこは私の部屋で、隣は空き部屋です」
「え、じゃあ私はどこに」
リビングの天井を指す。
そこには鳥の巣箱の入口を扉にした様な物を設置した。
「完全に巣箱じゃないですか!?」
「サイズ的にあんなものじゃないですか」
「ふざけないで下さい!私のスケールはワールドクラスですよ!こんな物!こんな……」
ぶつぶつ言いながら巣箱に入って行くエーリンさん。
「……Zzz」
やがて寝息が聞こえてきた。
「エーリンさん。ごはんですよ」
「ごはん!?」
巣箱から出てくるエーリンさん。
「はっ!私はいったい」
「どうでしたか?」
「ま、まあまあですね!せっかくヨシオさんが作った訳ですし、使ってあげますよ!」
「よかったねエーリン☆」
「エーリンちゃん愛されてます~」
「愛?いえ、情けです」
「そこは素直に愛でいいじゃないですか!」
「そこは譲れません」
ルミさんとサクヤさんも部屋の中を見て喜んでくれた。
それだけで作ってよかったと思える。
「そろそろ私は夕食の準備をしますね」
「今日はおっさんが作ってくれるの?」
「はい、いいですか?」
「もっちろん!おっさんの料理おいしいもん☆」
「ヨシオ様の手料理久しぶりに感じますね」
「頑張ります。じゃあその間に汗を流されては?」
「あ、そうだね、この町の湯屋ってどこだろ」
「いえ、湯屋ではなく――」
「まさかお風呂まであるなんてね☆家にお風呂があるなんて貴族ぐらいだよ。しかも広いし」
「ヨシオ様はやっぱりすごいです~」
「あ゛あ゛ー生゛き゛返゛る゛ー」
「エーリンすごい声だよ」
「背中流しますね~」
「ありがとサクヤ☆今度はあたしが洗うね」
「ありがとうございます~」
「んーあいかわらず肌が白いねー。ピチピチだしモチモチだし☆」
「ひゃ!も、もうルミ、変なとこ揉まないでくださいよ~」
「よいではないかよいではないか☆」
「あ、あう。くすぐったいです~」
「ふふっ……ペロペロ」
「ひゃあ!?ル、ルミさーん!?」
「あはは!ウケるー!」
脱衣所の扉を閉める。
うん。ちゃんと閉めておかないとな。
声だけで殺されるところだった。
家賃。プライスレス。ローンも可。




