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告白とおっさん


「アシェリー!いったいどうしたんだ!?僕はどうすればいいんだ!?」


アシェリーさんの嘔吐物を浴びながら叫ぶ皇帝陛下。

なかなかできることではない。


「このままじゃアシェリー様が死んじゃいます!」

「おいたわしや!不肖このゲルト!己が無力を嘆くばかり!」


キューエルさんとゲルトさんが慌てふためいている。

アシェリーさんが吐きだした原因はわからないが、まあ魔術で治せるだろう。

低級水魔術 【アクアタング】を使い、水の球が出現する。

少し操作して、受け皿の様に形作った。

それで皇帝陛下の頭上に止めどなく噴出していた嘔吐物を受け止めた。


「アシェリーさんの容態を見ますので、離れて頂けませんか」

「アシェリー!しっかりしろ!僕はお前を愛しているんだ!アシェリイイイイイ!!」


うん。ダメだ。耳に入っていないようだ。

告白してテンションが上がっているのだろうか。

しかしこのままではアシェリーさんが大変なことに。いやもうなってるけど。

ここは失礼して。


「ごめんなさい」

「アシェッ!?リ……ィ……」


皇帝陛下に雷魔術を使う、と、後ろに倒れこんだ。

いかん、ちょっと強かったか?

少し焦る私を横目に侍女と思わしき人達がすかさずを介抱する。

できる。慣れてる動きだ。

というか皇帝に電流を浴びせたのに、誰も心配する素振りを見せないのだが、大丈夫か。

まあ下手に騒がれても困るのだけれど。

と、アシェリーさんの嘔吐が止まった。

脇に付いて【ヴェノムヒール】と【リライフ】を掛ける。

何が原因かわからないので、とりあえず両方試してみた。

若干顔色がよくなった気がする。


「あ……う……勇……者様?」

「大丈夫ですか?」

「……私は何を」

「急に嘔吐されたんですよ。無理しないで下さい、まだ気分が悪いでしょう?」

「……すみません。堪えきれない不快感が込み上げてきて……」

「大丈夫。大丈夫ですよ。皇帝陛下も気にされていませんでしたし」

「! 陛下っ」


体が痙攣するアシェリーさん。

まだ嘔吐の影響が残っているのだろうか。


「キューエルさん、どこか休めるところはありますか?」

「あ、はい!医務室がありますのでそちらへ!」


アシェリーさんを抱きかかえ様とする。


「ゆ、勇者様!?」

「じっとしていて下さいね」

「で、でも汚いですよ」

「構いません」

「あ!……あう」


所謂お姫様抱っこの形で立ち上がる。


「案内をお願いします」

「いいなぁ……」

「キューエルさん?」

「はわっ!ご、ごめんなさい!こちらです!」

「ま、待てえ……」


背中に突き刺さる弱々しい声。

しかしそこには凄まじい敵意が込められている様に感じた。

驚いたな。結構強めにやってしまったのに、もう意識を取り戻したのか。


「お……い……アシェリーをっ、どうするつもりだっ、」

「医務室へ連れて行きます」

「離れ……ろ……この……くそ野郎っ」


よろよろとこちらに向かってくる。

まだ朦朧としているのか、話が通じていない。……元からか?


「陛下!」

「不肖このゲルト!失礼仕る!」


フェルマーさんとゲルトさんが抑えに回る。


「止めるなっ!」


魔力の高まり。

皇帝陛下の周りに電気が見え隠れする。

驚いたフェルマーさんとゲルトさんが離れた。

なるほど、雷魔術が使えるのか。だから耐性があったのね。


「陛下!お止め下さい!」

「へいかあああ!」

「はわわっ」

「アシェリーは……僕の物だ!」


両手から放たれる雷。

おいおい。アシェリーさんを抱いているのに打ってくるのか。

仕方ないな。


【閃空術】


「! 消えた!?」

「こっちです」


陛下の後ろに回り込む。


「ふざけっ!」


一旦魔術を治め、振り返った皇帝陛下の動きが止まる。

なぜなら陛下の目の前に抱えられたアシェリーさんがいるから。

この人の気持ちは本物だ。

空回り気味ではあるが、私は嫌いじゃない。


「ア、アシェリー」

「……陛下」


見つめ合う2人。

なかなかにロマンチックじゃないか。ゲロにまみれてさえいなければ。


「アシェリー……ゲロにまみれても君は綺麗だ」


言うなよ。やっぱだめだこの人。


「陛下……」


静寂。2人だけの世界+ゲロ。
















「無理ですごめんなさい」













その言葉には。

例えこの世の終わりが来ても。無理。

と言う強い意志が篭っている。様に聞こえた。

どうやらそれは皇帝陛下にもちゃんと伝わったらしい。

白めをむいて気絶している。


「医務室……どこですか」

「……こちらです」






















あれからアシェリーさんを医務室で休ませた。

顔色は優れなかったが、ちゃんと返事をしたからか、少しだけマシになった様に見えた。

皇帝陛下は夜になっても意識を取り戻さなかった。

よほどショックだったのだろう。

まあ、そういう時もある。

皇帝でも、人の心は変えられるとは限らないと言うことだ。

その点私は大丈夫、端からそのつもりがないからね。


「礼を尽くさねばならなかったのに、こんなことになってしまい申し訳ありません」

「私が話をややこしくしてしまったみたいで、すみません」

「……いずれはこうなっていたと思われます。遅かれ早かれ」

「不肖このゲルトもそう思います!」


フェルマーさんに夕食をご馳走になっていたところにゲルトさんがやってきた。


「ゲルトさん。アシェリーさんは」

「いましがた眠られました。念の為キューエル殿が傍にいます」

「そうですか、よかった」

「アシェリーめ、無様な姿を。三鎧天の恥さらしだ」


ゲルトさんがおもしろくない顔をして、フェルマーさんを睨む。

フェルマーさんはなかなか厳しい人だ。

でも彼のことは少しだけわかる。

彼は他人に厳しいが自分にも厳しい。そして優しい。

私が彼やキューエルさんの一団に遭遇した時、私は魔族の手の者だと勘違いされていた。

その時彼は、重傷を負いながらも私と対峙したのだ。

一団を逃がす為に。


「フェルマーさん」

「……ふん」

「ところで、勇者殿はこれからどうなさるおつもりで?」


ゲルトさんが空気を換えるように声を掛けてきた。


「王国軍がこちらに向かって来ている筈です。とりあえずはその到着を待たせてもらう予定です」

「それはよかった。ではまたアシェリー様に会いに行って頂けますか?きっと元気になります」

「もちろん。明日また様子を見に行かせて頂きます」


皇帝陛下の様子を気になるしね。

ルミさん達が来るまでまだ数日は掛かるだろう。

それまでは何かお手伝いでもさせてもらおう。

ルミさん達が来た時に褒められるようなことをしなくては。


……早く来ないかな。



逢いたくてふるえ!る!

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