勇者の朝とおっさん
一区切りつきました。ので色々振り返って見てましたが。
累計60,000PVありがとうございます!
ほんと嬉しいです。ひゃっほい。
暖かい。
ずっと包まれていたい様な、優しい暖かさだ。
それに柔らかい。
……柔らかい?
「ん?」
ぼんやりする視界が晴れていく。
それにつれて、自分の置かれている状況を理解する。
「な、ななな」
右腕に縋るサクヤさん。
そして左腕――はないので首に手を掛けて抱きついているルミさんの図。
「なんですかこれは」
っていうか近い!顔!顔近いよルミさん!?
寝息が当たってます!いやそれ以外の所も当たっているけれども。
パンチが強い。寝息と言うパンチが脳をシェイクする。
あーいい匂いがするんじゃあ、やばい鼻血出てきた。
いかん、ベッドを汚してしまう。拭わなければ。
申し訳ないが2人には起きてもらおう。
このままでは意識が飛びそうだし。
「ルミさん、ルミさん。起きて下さい」
「ん」
まつ毛長いなーと思っていると、ルミさんの目蓋が開く。
虚ろな目にだんだんと光が宿る。
「おっさん?」
そうです。私がおっさんです。
ん?ルミさん?顔が赤いですよ?
「ワアアアアアアアアアアアアアア!」
「とんぐ!?」
ベッドから吹き飛ばされる。
釣られて右腕に捕まっていたサクヤさんも付いてきた。
なんて力だ。首がもげるかと思いました。
「ななななんでおっさんが一緒に寝てるの!?」
「あーなんででしょう」
「ふわあ、どうしましたぁ?」
「サ、サクヤ!おっさんが私達のベッドに!?」
「ふえ?それがどうかしましたか?」
「どうかするよ!」
「だってヨシオ様が寝てしまったから3人で寝ましょうって」
「あ」
なるほど。
サクヤさんの無事を確認してからの記憶がないが、どうやらここで眠ってしまっていたらしい。
しかし私など床にでも転がしておけばいいのに、ベッドに寝かせてくれるとか天使。
おっと、思わずホロリときてしまった。
「おっさん!?ごめん痛かった!?」
「あ、いえこれはそういうあれでは」
「ごめん!ごめんね!」
頬を撫でるルミさんの手。
先程のビンタよりよっぽど攻撃力が高い。
「おっふ!それ以上いけない」
「あ、ごめん」
「ふふっ」
「なに笑ってるのサクヤ」
「いえ、やっぱり3人はいいですよね」
「なっ」
私を少し見やって、そっぽを向いてしまうルミさん。
耳が赤くなっている。
こっぱずかしいと言う奴だろうか。かわいい。
「やーやー!お目覚めかい諸君!!」
「ひゃう!?」
「あ、シェリルさん」
「ノンノン!シェリちゃんって呼んでって言ってるでしょ?でしょ?」
「シェ、シェリちゃん……さん」
「んー合格!ギリ!」
「ほっ。それでどうされたんですか?」
「どうもこうも、起きたみたいだから様子を見にきたんだよ?だよ?」
「それはどうも。ご心配お掛けしました」
「うんうん。後でマリちゃんにも言ってあげてね。すごーく心配してたから」
「そうなんですか?」
「そうだよ?昨日シェリちゃんのラボに来て大変だったんだから」
《回想》
「うう……勇者様……このままお目覚めにならなかったら私はどうすれば……。おい聞いているのかシェリル!?」
「だからぁー大丈夫だってー。今は寝てるだけでしょ?でしょ?」
「そんなことわからんだろうが!!片腕ないし!!」
「声大きいよ」
「大体お前は心配じゃないのか!?このマッドサイエンティストが!!」
「かっちーん。これだから酔っ払いはタチが悪い」
「わらしは酔っ払ってなどいにゃい!」
「酔っ払いはみんなそう言うんだよ?だよ?」
「ゆうしゃさまぁ!?おいたわしやああああ!!」
「もう出てってほしいなーって」
「なにおう!?わらしはまだやれるぞ!!」
「やらなくていいから。シラフではここにこないのになんで飲んだ時だけくるのかな?かな?」
「お前までわらしを遠ざけるのか!?泣くぞ!?」
「うわーめんどくさい」
「あああ!!ゆうしゃさまあああああああああああああ!!」
《回想終わり》
「そういう訳で、今は二日酔いで寝込んでるよ」
「そ、そうですか」
「そうそう。んじゃこれ飲んで」
差し出される……まりも?ちょっと大き目の。
「なんですかこれ?」
「魔力を回復する薬だよ?作るの大変だったんだから」
「ほんとですか!?」
まだ魔力が回復しきっていないし、ありがたい。
遠慮なく頂こう。
「ありがとうございます。えっと、これはどう使えば?」
「飲んで?」
「え」
「いや、食べて?かな」
「こ、これをですか」
「うん!ちょおっとまずいかもしれないけど、効果はバッチリだからね?ね?」
「りょ、良薬口になんとやらってやつですか」
「なんならシェリちゃんが食べさせてあげようか」
悪戯に、艶かしく舌を舐めずるシェリルさん。
若いのになんてエロチックな人だ。
「ちょ、ちょっと待った!」
そこに声を上げたのはルミさんだった。
何か怒ってるぞ。
「あのさ、謁見の時にいた人だよね。王宮鑑定士だっけ?なんか馴れ馴れしくない?」
「にゃはは、そういうキミはどちらさまかな?かな?」
「謁見の時にいたでしょ。おっさんのす・ぐ・そ・ば・に」
「覚えてないにゃー。おじさま以外興味なくって」
「なにおじさまって、ウケるんですけど。とりあえずそれ頂戴?あたしが食べさせるから」
「これはシェリちゃんがおじさまの為に作ったんだよ?ならシェリちゃんが食べさせて何が悪いのかな?キミはおじさまの何なのかな?かな?」
「そ、それは」
「ルミさんはヨシオ様のことが大好きな、旅の仲間です」
「おろ?」
「サクヤ!?」
突然何かと言われれば考えてしまうが、仲間か。
仲間。いい響きだ。
「ね?ルミさん?」
「え、な、仲間だけど、大好きっていうか、その」
「ふーん……」
ニヤニヤとルミさんを眺めるシェリルさん。
なんか意地悪な感じ。
「それじゃ、これはキミに預けるね?」
「え、あっと」
ルミさんの手にまりも(薬)を置く。
「ほいじゃ、後で呼び出しがあると思うから、それまではゆっくりしててー。ごはんも持ってこさせるよ」
「色々すみませんシェリルさ……ちゃん」
「いいのいいの。またあとでねー」
部屋を後にするシェリルさん。
「おもしろい人ですねー。ねルミさん?」
「え、あ、うん、そうだね」
「ちょっとルミさんに似てますね」
「ええ!?あたしあんな感じかな!?」
「なんかわかります。雰囲気でしょうか?小悪魔的な感じが」
スタイルもルミさんに負けず劣らず――ってバカ。
「そ、そうなんだ。それよりおっさん!はいこれ!」
これって。
まりも(薬)
いやー、見るからにまずそう。
「どう食べればいいんでしょうかね」
「なにか変な匂いもしますね」
「しょ、しょーがないなー。あたしが食べさせてあげるよ。ほいあーん」
「え」
こ、これは!?
あの伝説のアベック(死語)とかがするあの!!
まさかルミさんにしてもらえる日がくるとは。
「な、なに?早く食べてよ」
「い、いただきます」
一口大のまりもを口に入れる。
同時に、まるで道端の草を食べる様な感覚が広がるが。
そんなことは彼方にふっとんでいくくらい感動していた。
「ひゃ!おおおおっさん!?」
「ふご?」
おっと。
どうやら勢い余ってルミさんの指先まで含んでいたらしい。
指先まで、……指先。
ぶしゃあ。
赤いおっさん汁が放物線を描いて噴射され、そのまま意識もどこかに行った。
目覚めた時には無事魔力は回復していた。
が、しばらくルミさんは顔を真っ赤にして恨めしそうな視線を送ってきた。
ちょろ……いや、そうでもない……のか?
ちょろいってなんだ(哲学)




