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4代目勇者の子孫とおっさん


縦に伸びた机に乗る燭台の光のみが照らす薄ぐらい部屋。

机には席が9つ。

1人、また1人と着席する。

やがてしばらくの時が経ち、7席が埋まった所で会は始まった。


「……これでお揃いで~すね」


そう告げたのはピエロ――魔弾(まだん)のヘルムート。

これから行われるのは魔王軍幹部、八雷神による定例会議だ。


「……まだ1人きてないぞ、いつものことだけどさ」

「さよう。勇者が現れた以上、かの御仁にも幹部としての自覚を持って貰わねば」

「そうさのう。いくら強大な力を持つと言えど今は魔王様に組する身、ある程度の規律は守ってもらわぬと困るのう」

「そうだそうだ!アルマゼルの野郎もちゃんと来させろよな!」

「アルマゼルさんならお亡くなりになりになりました~よ」















「「「はあああああああああああ!!??」」」


燭台に燈った火が激しく揺れ、石の壁の隙間から詰まっていた埃が落ちてくる。


「うるっさ~いですね~、お静かにお願いしま~すよ」

「お静かにじゃねえよ!どどどっどどどどういうことなんだよ!」


声を荒げたのは2本の大きな角を生やし、その下半身は蛇の様な体躯をした女性――紅拳(こうけん)のアミサンドラ。


※ここからはわかりやすく字幕でお送りします。


アミサンドラ「おいこのオカマ野郎!適当なこと言ってんじゃねーぞ!」

ヘルムート「わた~しは嘘は吐かないタイプで~して」

アミサンドラ「じゃあアルマゼルがどうしたって言うんだよ!?」

ヘルムート「ですからお亡くなりになられたと申し上げま~したよ」

アミサンドラ「だからそれが嘘だって言ってんだよ!」

?????「まあまあ落ち着きなされアミサンドラ。確かにこやつは冗談は言うが嘘は言わん……と思うぞ……多分」

アミサンドラ「否定すんならちゃんとしろよ!」

ヘルムート「オホホホ」

アミサンドラ「てめえは笑ってんじゃねえ!」

?????「話が進まぬ。少し黙れ」

アミサンドラ「……チッ」


音を立てて席に着くアミサンドラ。


ヘルムート「さ~すがですね~ディアノックさん」


鮮血のディアノック。

黒い甲冑に覆われた騎士風の男。

人族の騎士と明らかに違う点はその首より先が虚空と化している点だ。


ディアノック「御託はいい、さっさと訳を話せ」

ヘルムート「あらあら、せっかちな男はモテま~せんことよ」

ディアノック「余計なお世話だ。……それに拙者はモテる」

アミサンドラ「なんの話だよ」

ディアノック「妬くなアミサンドラ」

アミサンドラ「妬いてねえし!?」

ヘルムート「はいはい、それぐらいにして始めま~すよ」

アミサンドラ「てめえが余計なこと言うからだろ!」

ヘルムート「おほん、アルマゼルさんの話ですが、本当で~すよ」

アミサンドラ「……まじかよ」

ディアノック「何故」

ヘルムート「勇者さんの所にちょっかい出しに行かれま~してね。返り討ちと言うわ~けです」


一同「「「…………」」」


?????「そんなに強いのか勇者って」

?????「まあ魔王様とやろうと言うのだから強いとは思っていたが」

?????「アルマゼルは八雷神にて最強」


一同「「「どうしよう」」」


アミサンドラ「ちょ、まじどうすんの、八雷神最強がさっそく倒されちゃって」

?????「ふむう。これは困ったの、勇者がいたのでは王国には下手に手出しできん」

?????「気になるのは勇者の動きだ。勇者の動き次第でこちらも考えなきゃいかん」

?????「後手に回るのは危険ではないか?」

ディアノック「強いといっても勇者は1人。勇者がおらぬ間に拙者は帝国を堕とす」

アミサンドラ「なんだびびってんのディアノックさんよ」

ディアノック「びびっておらぬし拙者はモテる」

アミサンドラ「聞いてねえよ!」

?????「そこのところ、なにか情報はないかのヘルムート」

ヘルムート「勇者一行は『ウィンポート』に向かうとの情報があ~りますよ。その後は知りませんね~」

?????「王国の港町じゃな。海路でどこかに向かうということか」

アミサンドラ「帝国に来たらディアノックさんよろしくな」

ディアノック「……」

アミサンドラ「返事しろよ」

ヘルムート「まあ……そこまで辿り着けるかどうか」

?????「ん?どういうことじゃ?」

ヘルムート「勇者さんには敵が多いということですよ、オホ~ホ」


























「あ、が、ぐぅ」


胸に生えた刀。

見覚えがある、ルミさんが勇者の子孫の証として見せた『鬼丸国綱おにまるくにつな』だ。

それがなぜ私を貫いているのかがわからない。


理解が及ぶ前に刀がもう1本、ルミさんに掛かっていた布団から飛んでくる。


「!」


なんとか避けるが狙われた首は無事では済まず、血飛沫が上がった。

このままじゃまずい。距離を取らないと。

不恰好に転がりなんとか刀を引き抜き、そのままテラス目掛けて突っ込んだ。

悠長に扉を開けている訳にも行かずガラス張りをぶち破ってしまった。

女王様には後で謝ろう。


「ふわあ、寝ちゃってた……てふええ!?」


サクヤさんの目覚める声が聞こえた。

とにかくここから離れないと。

すごい殺気を放っている――恐らくルミさんを遠ざけるべきだ。

殺気は私に向けられているし、サクヤさんに危害は加えないと思うけど念の為。

テラスから見えた屋根伝いに移動する。

その間に『ヴェノムヒール』で回復しておく。

まだ魔力は回復しきっていないが仕方ない。


(これぐらいでいいかな)


城を離れ、町にまで下り振り返る。


月明かりに照らされて、物憂げな表情を捧げるルミさん。

これは――殺されてもいいぐらい綺麗だ。

なんだか見下されているというか、ゴミを見る眼とはこんな感じだろうという眼で見られているのが非常にグッド。

グッドなのだが、なぜそんな眼を私に向けるのか、非常に気になるところだ。

んーなにかしただろうか。

ルミさんの逆鱗に触れるなにか。

髪を触ったのがいけなかったのかな。

というか完全にセクハラだったか?

うん、セクハラだな。

これは私が悪い、素直に謝ろう。


「ルミさん。さっきは――」


謝罪の言葉を言いかけたところで、息が詰まる。

なぜなら、ルミさんの体から続々と刀が突き出てきたからだ。

ルミさんは1本の刀を携え、辺りには8本の刀が屋根から生えた形になる。

生み出された刀、そのどれもがディティクトしなくても大層な物だと見て取れる。


思わず息を呑んだ。


刀から伸びた影が揺れ、徐々に人の形を成していく。

やがて現れる8人の者。


それは剣鬼(けんき)と呼ばれる、文字通り剣の鬼だった。


魔王軍は今日も元気です。

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